誕生してわずか8年で休止したモノレールの車両と駅の跡が、今も保存されています。来年で開業60年を迎えるのを前に訪問すると、運行開始当時には遠大な延伸構想があったことが分かりました。
【マジでカッコいい…】これが現役時代の「姫路モノレール」です(地図/写真)
世界文化遺産で、国宝にも指定されている姫路城で有名な兵庫県姫路市では、半世紀余り前までの8年間にわたってモノレールが駆けていました。国鉄(現・JR西日本)姫路駅と手柄山駅の1.6kmを結んでいた跨座(こざ)式モノレール、姫路市交通局モノレール線(通称・姫路モノレール)です。1966年5月に開業し、途中にはアパートの内部を貫くように走行路とプラットホームが設置された珍しい構造の駅、大将軍駅も設けました。
建設のきっかけになったのは、姫路城の「昭和の大修理」の完成を記念した大規模イベント「姫路大博覧会」のメーン会場だった手柄山への来場者輸送でした。さらにマイカーの普及を背景に道路渋滞が深刻化する中で、姫路市中心部と郊外の住宅街などを迅速に結ぶ輸送手段としても期待していました。当時の資料によると、姫路モノレールを遠く離れた他県の県庁所在地と結ぶ「幻の構想」もありました。
あの「ロッキード」のモノレール手柄山平和公園の一角にある施設「手柄山交流ステーション」の2階には姫路モノレールの手柄山駅跡が残り、実物の車両や関連資料などを見学できます。名称は「モノレール展示室」で、入場は無料です。山陽電気鉄道手柄駅から徒歩約10分で、近くにはJR山陽本線の新駅「手柄山平和公園」が2026年春に開業予定です。
姫路モノレールの車両は軽量化のためにアルミニウム合金で造られ、1両当たり全長15m、全幅2.9m、全高約3m。アメリカのロッキード(現・ロッキード・マーティン)が開発した、コンクリート製の軌道上に敷いた鉄製の主レールの上を鉄の車輪で走る「ロッキード式モノレール」を採用しました。
在籍車両は、川崎航空機工業(現・川崎重工業)の岐阜工場(岐阜県各務原市)で製造された両運転台の200系2両編成が1本、片運転台の100系2両編成1本の計4両でした。
ロッキード式モノレールの日本での採用例は他に、小田急電鉄が1966年に川崎市で開業した小田原線向ケ丘遊園駅と遊園地「向ケ丘遊園」(2002年閉鎖)の正門をつなぐ路線がありました。2000年2月に休止し、01年2月に廃止されました。
姫路モノレール手柄山駅の発車時刻表(大塚圭一郎撮影)
向ヶ丘遊園の車両はすでに存在せず、ロッキード式モノレールの車両で現存するのは、手柄山に展示された姫路モノレールの両運転台車両200系2両が世界唯一です。
うち1両は、手柄山交流ステーションの開館中ならば車内へ自由に入れます。天井には円形の扇風機が連なり、赤いモケットが覆った転換クロスシートが並んでおり、昭和時代にタイムスリップしたような気分になります。
筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は兵庫県立ものづくり大学校(姫路市)の元校長で史跡探訪家の緒方孝昭さんに案内いただいて訪れました。
緒方さんは座席に腰掛けると「いやあ、懐かしいなあ」とつぶやき、「59年前の小学校1年生の時、姫路大博覧会見学に合わせて開業間近の姫路モノレールに乗ったのが楽しい思い出です」と振り返りました。幼少期の緒方さんは「姫路モノレールのスマートなかっこよさに技術の未来を感じていました」と言います。
「営業時間が短い!」そのワケはモノレール展示室には、運行中の手柄山駅の発車時刻表が掲げられています。驚かされるのは、当時で約38万人(2025年10月1日現在では51万6529人)の人口を抱えていた姫路市の公共交通機関とは思えないような営業時間の短さです。
平日と土曜日は1時間当たり3本出発し、4月1日―9月末が9時台から17時台、10月1日―翌年3月末に至っては9時台から16時台にとどまります。手柄山を訪れる行楽客が増える3月―11月の日曜・祝日には1時間当たり4本あるものの、4月―9月末が9時台から17時台、10月と11月は9時台から16時台だけです。
これは姫路大博覧会の閉幕後に利用者が激減し、終盤には運行本数が少なくなったためです。当初は100万人と想定していた年間利用者数は20万人台から40万人台と低迷。乗車時間がわずか約5分と運行距離が短いのに加え、姫路―手柄山間で大人100円、子ども50円と当時としては運賃が高かったことが響きました。
市長の交代で頓挫した壮大な構想なかでも姫路から約500mしか離れていなかった大将軍のプラットホームは閑古鳥が鳴き、開業2年後の1968年には営業を休止。姫路モノレールの建設を主導した当時の姫路市長、故・石見元秀氏の壮大な延伸構想を崖っぷちに追いやりました。
 
                    手柄山平和公園から眺めた姫路城(奥)。城の奥までモノレールを延伸する構想もあった(大塚圭一郎撮影)
石見氏は姫路モノレールの開業時に「快適な性能を遺憾なく発揮して、皆さまのご期待に沿い、ご愛顧を得るものと確信します」と自信満々にコメントしました。輸送実績を築いて延伸し、南側は瀬戸内海沿いの工業地帯にある思案橋、北側は姫路城の近くを通って姫路競馬場がある白国、西部は紅葉の名所である書写山(標高371m)付近をつなぐなどの路線網拡大を検討していました。
さらに、車両の最高速度160km/h、最大で12両連結可能な持ち味を生かし、兵庫県北部の豊岡や京都府北部の舞鶴、ひいては鳥取県の県庁所在地、鳥取まで延ばして「陰陽連絡線」の一つにすることを視野に入れていました。
しかし、姫路モノレールの失敗でみそを付けた石見氏は、1967年の市長選でモノレール延伸反対派の故・吉田豊信氏に大差で敗北。多額の赤字続きで姫路市の財政を圧迫していた姫路モノレールは74年4月で営業を終え、79年1月に廃止されました。
元兵庫県立ものづくり大学校長の緒方さんは「もしも姫路駅北部の姫路城や商業施設方面まで延伸できていれば、中心地を縦断する市民や観光客の足となって存続していたかもしれません」との見方を示します。
2020年9月に土木学会の「選奨土木遺産」に認定された旧手柄山駅や車両などの姫路モノレール遺構群を見学しながら、幻の延伸構想に思いをはせるのも一興かもしれません。
なお、2025年11月3日には手柄山で無料の「旧姫路モノレールバックヤード特別公開」が開催されます。普段は非公開のモノレール車両の下を係員が案内し、20分間見学できます。10時と10時半、11時、14時、14時半、15時の6回で、各回先着30人が参加できます。
 
                         
                             
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                 
                     
                     
                    
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