「日本海の最長航路」に21年ぶりの新造船

 SHKライングループの新日本海フェリーが舞鶴(京都府舞鶴市)―小樽(北海道小樽市)向けに新造したフェリー「けやき」(1万4300総トン)が2025年11月14日、いよいよデビューします。就航に先立ち、舞鶴港で船内のお披露目が12日に開かれました。

【ご、豪華すぎる…】これが新造船「けやき」の全貌です!(写真38枚)

 現在、三菱重工業下関造船所では2番船の「はまなす」の建造が進められており、来年6月には新鋭船2隻体制での運航となります。歓迎セレモニーであいさつに立った新日本海フェリーの入谷泰生社長は「舞鶴―小樽航路は関西と北海道の物流と人流を目的に航路を開設したという経緯があり、新しく『けやき』を投入することは感無量。昨今の旅行需要に支えられて、乗船客は毎年増加している。新造船を導入することで、さらにお客様の満足度にこたえていきたい」とコメントしました。

「けやき」は新日本海フェリーと鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)の共有建造船で、三菱重工グループの三菱造船が建造を手掛けました。日本海の旅客航路では最長となる1061kmを運航する舞鶴―小樽航路では21年ぶり、新日本海フェリーとしては「らべんだあ/あざれあ」以来、8年ぶりの新造船となります。

 船内は「京都・歴史」をコンセプトに、上品で優雅そして温かみのあるデザインとなっています。

 オーセントホテル小樽が監修した寄港地の食材を使用したコース料理を提供するグリルレストラン「大江山」や、タブレットオーダーシステムで定番から四季折々のフェアメニューまで取り揃えたレストラン「しゅてん」、2層吹き抜けのフォワードサロン「白竜」など、随所に京都や丹後ゆかりの名称、意匠を取り入れました。

 開放的な3層吹き抜けのエントランスでは、コンサートやパフォーマンスショーなどの船内イベントも期間限定で開催予定です。これに加えてスクリーンルーム「龍宮」では、プロジェクションマッピングを駆使したイマーシブ(没入型)コンテンツを提供していきます。

 展望大浴場には露天風呂に加えて、サウナやシャワー室を設置。ショップでは寄港地の名産品やオリジナルグッズなど多彩な商品が取り揃えられています。

また、レストランとショップはキャッシュレスに対応しており、各種クレジットカードの利用ができるようになっています。

ダウンサイジングしながらも「豪華」!?

 客室はオーシャンビューの浴室を設けたスイートルーム2室のほか、専用テラス付きデラックス16室、シャワー・トイレが完備されたステート洋室30室、家族旅行に最適なステート和洋室8室、ペットと同伴できるステートウィズペットルーム5室を用意。

新日本海フェリー新造船「けやき」ついに公開! レストラン2つ...の画像はこちら >>

船名の「けやき」は舞鶴の市木に由来(深水千翔撮影)

 安価なツーリストクラスでも、ツーリストSではプライベート空間が確保できる1人部屋の個室寝台を設けます。一番リーズナブルなツーリストAでは寝台を上下段で互い違いに配置し、プライベート空間を確保しました。

●スピードは若干「遅く」それが今っぽい

 これまで舞鶴―小樽航路に就航していた「はまなす/あかしあ」は1万6897総トン、全長224.8m、航海速力30.5ノット(約56.5km/h)と、長距離フェリーでは国内最大級の大きさと速度を誇っていました。

 一方で「けやき/はまなす」は1万4300総トンで、全長199m、幅25.5m、航海速力は28.3ノット(約52.4km/h)。旅客定員も「はまなす/あかしあ」は746人でしたが、「けやき/はまなす」では286人と大体4割ほどです。

 背景として近年、新造船価の上昇に加えて、燃料価格も大幅に上がっており、効率性の高い船が求められているという事情があります。このため「けやき/はまなす」では船体規模をダウンサイジングし、速度を抑えることで、より経済的な運航を可能とする設計が取り入れられました。

 また、マイカーや個人旅行など少人数で利用することが増えており、これまでのフェリー旅行のイメージにあるような大広間や2段ベッドが並ぶ部屋がなくなり、個室が中心となっています。

 期待の新鋭船「けやき」は11月14日、小樽港23時30分発の便でデビューします。

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