県営の渡船は「道路と鉄道の代わり」として58年

 富山県射水市の観光の名物「県営の渡船」、その運航を停止し、代替車両を運行してみるという異例の社会実験が行われます。

【え…】これが「県営の渡船」とその代替ルートです(地図/写真)

 運航を停止するのは、富山新港の港口を結ぶ富山県営渡船です。

万葉線(加越能鉄道)の越ノ潟駅に隣接する越ノ潟発着場と、対岸の堀岡発着場のあいだ770mを約5分で結びます。運賃は無料です。

 11月16日(日)と23日(日)の2日間、この渡船の運航を停止し、代替車両「ジャンボタクシー」を30分間隔で運行します。以前から深夜と早朝はタクシー会社による代行運送(無料)が行われていましたが、今回はまる1日ずつ船の運航を停止します。

 この渡船の運航停止と代替車両の運行は、渡船の運航を見直すための「社会実験」に位置づけられています。

 渡船は1967年に運航を開始。もともと富山新港は、海とつながっていなかった放生津潟と呼ばれる湖をもとに港口部分を切り開いて作られました。それにより、湖と海岸線の間を通っていた県道と富山地方鉄道射水線が分断されることから、県が渡船を代替としたのです。

 しかし、2012年に港口をまたぐ新湊大橋が開通し、陸路がつながると、渡船の利用者は激減。2014年には減便も行っているものの、船員不足や老朽化などを理由に県は運航を見直したい考えです。

 分断された富山地方鉄道射水線は、越ノ潟側は加越能鉄道に譲渡されて同社の新湊線となり、愛称「万葉線」(高岡駅-越ノ潟)の一部として存続していますが、富山側は1980年に廃止されました。

 それでも、万葉線から富山新港を経てバスで富山方面へ抜ける、あるいは新湊大橋と渡船を行き帰りで使い分けるなど、周遊ルートの選択肢になっているほか、珍しい県営の渡船そのものが観光資源にもなっています。

 今回の実験の代行車両の運賃は無料。定員は10名で、自転車も2台まで載せられますが、そのぶん減員となることから、自転車はなるべく新湊大橋の歩道部を使ってほしいとしています。

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