テーマパークのようになんでもある場所へ!

 海の男たちにとって、寄港地はまさに「オアシス」。長い洋上生活では、揺れる艦内に不安定な電波。

上甲板に出れば照りつける太陽、けれど嵐ともなれば、まるでミキサーの中に入れられた気分……。こんな状況のため、そういった悩みのタネから解放される寄港の瞬間は心も体もリセットできる貴重なひとときです。

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 そこで、海上自衛隊の夫やこさんに、国内の寄港地での過ごし方について聞いてみることにしました。

 寄港地といっても東西南北、春夏秋冬で違ってくるため、定番はあるものの過ごし方は微妙に異なります。そうしたなか、一番人気はやはり温泉だそう。艦内では真水シャワーしか浴びられないうえに、海水風呂が基本。そのため、海の強者たちも、温泉に浸かりたくなるようです。普段は気難しそうな別分隊の隊員と寄港地の温泉でバッタリ会ったら、ポロッとお子さんの話をしてくれた……なんてエピソードもあるようです。

 最近では施設が充実した大型スパ施設やスーパー銭湯があることも多く、内風呂だけでなく、露天風呂にサウナ、岩盤浴…、マッサージに美味しい食事と、まるでテーマパークのごとく楽しめます。

 なので、そういった施設で一日中のんびり過ごし、航海の疲れをじっくり癒す隊員も多いのだとか。艦内の硬いベッドからリラックスエリアで「人をダメにするクッション」にうもれてしまうと、「もう帰艦したくない!」と思っちゃうほど身も心もほぐされる模様です。

 ほかに人気なのが、ご当地グルメの食べ歩きや飲み歩き。

「せっかく寄港したんだから、その土地ならではの味を楽しみたい!」という熱い気持ちをそれはもうシンプルに、ダイレクトに、胃袋にぶつけちゃおうというわけです。

 例えば、広島の呉に寄港したらお好み焼き、青森の大湊なら大粒ホタテ、神奈川の横須賀ならネイビーバーガー(ちなみに海自カレーは艦内で本家を食べ飽きているので、意外と外では食べないそう)と、寄港地によって名物もさまざまです。

自衛艦には積んでないものを求めて

 さらに自衛艦ではアルコール類が飲めないので、飲み会もおのずと多くなるのだそう。それぞれの港町でしか味わえない名物を仲間とシェアしながら盛り上がり、帰艦時間ギリギリまで食べ歩きを満喫し、当直員にちょっとしたお土産を持ち帰るのも寄港地あるあるです。ちなみに、寄港地関係なく停泊時の当直員へのお土産は某ドーナツが定番だと、前出のやこさんが教えてくれました。

入港前からテンション爆上がり!? 自衛艦乗員の“寄港地ルーテ...の画像はこちら >>

鹿児島港に寄港した練習艦隊の「かしま」(手前)と「はたかぜ」(画像:海上自衛隊練習艦隊)。

 ショッピングも忘れちゃいけない寄港時の「娯楽」です。普段は艦内に最低限の物しか持ち込めないので、ここぞとばかりに日用品の補充から最新ガジェットのチェックまで、心ゆくまで買い物を楽しむようです。家族へのお土産もここで調達します。呉ならもみじ饅頭、長崎ならカステラを、帰宅した隊員からもらったご家族も多いのではないでしょうか。

 ちなみに、寄港地では申請をすれば外泊もできます。寄港地が実家に近い人などは、寄港地休暇をとって一時的に帰省する人もいます。

久しぶりに家族や懐かしい友人の顔を見るのは何にも変え難い時間ですね。

 こうして見てみると、寄港地での過ごし方は人それぞれ。温泉で湯けむりに包まれるもよし、ご当地グルメで舌鼓を打つもよし、買い物でリフレッシュするもよし、はたまた艦内でひたすら寝るも……、よし!

 どの過ごし方にも共通しているのは、みんなが「次の航海もがんばるぞ!」と英気を養っているということ。もし港町で上陸中の隊員を見かけたら、普段の任務からいっとき解放されてのんびりしているんだなあと、そっと見守ってあげてください。

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