ひとたび出港すれば、数日から数か月は海の上で過ごさなければならない自衛艦乗り。その洋上生活は、快適に過ごすための工夫が鍵になってきます。
【あわせてマンガも読む】護衛艦のカプセル型居住区のイメージです
出港中の海上自衛官は、配置先にもよりますが基本的には3交代制で、「ワッチ」という哨戒業務を組んでいます。例外はあるものの、3時間ワッチして6時間は非番、これを3交代で行うので、徐々に当番する時間がずれていき、昼間にワッチすることもあれば深夜にワッチすることもあるという不規則な生活スタイルになります。
海上自衛官で夫のやこさんに話を聞くと、出港中は訓練がたくさんあるので、6時間非番になることは、そうそうないとのこと。訓練がなければ、その間に運動するなど余暇時間として使えますが、実情としては出港中の睡眠時間は3~4時間とかなりハードモード。となると、睡眠環境を整えるのはかなり大切で、短時間で効率よく休めるように各々工夫をするそうです。
船のベッドというと客船みたいな個室を想像するかもしれませんが、隊員が眠るのは2段ベッドです。ちなみに、だいぶ少なくなったものの、古い艦になると3段ベッドもまだ残っています。下段は上の人が使うことが多いそう。理由はシンプルで、出入りがしやすく便利だから。仕事から休息に入るまでの最短を詰めていきます。
常にギリギリを攻めている……。さすが自衛官です。
ところで、上段の人は落ちたりしないのでしょうか、悪天候の時は立っているのも難しい角度まで傾くこともある護衛艦。そんな状態のなか、上段で寝ている人は目が覚めてしまわないのか心配になりますが、そこは落下防止の手すりがついているので安心です。
護衛艦「とね」の寝台(画像:海上自衛隊)。
そもそも、そんなにも揺れる艦内で眠り続けられるのかという根本の問題がありそうですが、やこさん曰くどんなに揺れていても余裕で寝られるそう。自衛隊というと「どんな状況もだいたい5日で慣れる」のが“お約束”なので、艦艇に配属されたばかりの新人隊員も、すぐに爆睡できる人が多いのだとか。人間ってスゴい。
ベッドにはカーテンも付いているので一応プライベート空間は保たれますが、最近では乗員の処遇改善からカプセルホテルのようなキャビンを備えた艦も計画されており、ますます居住性はよくなっていきそうです。
日本を守るために、遠く離れた洋上で短い睡眠と過酷な任務を続ける海上自衛官。今夜もどこかの海で、小さなベッドのカーテンをそっと閉めて眠りにつく隊員がいます。その眠りがどうか、少しでも深く温かいものになるよう、願わずにはいられません。

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