2025年12月6日、オーストラリアのマールズ副首相兼国防大臣は、日本の造船技術などを直接視察するため三菱重工長崎造船所を訪問、建造中のもがみ型護衛艦などを見学して回りました。
【写真】豪州のシンボルが付与された「改もがみ型フリゲート」です
これは、4か月前の今年8月、オーストラリア海軍が進めていた次期主力艦の選定において、ドイツやスペイン、韓国の艦艇との競争を勝ち抜き、日本が提案していた「新型FFM(もがみ型改良型)」が選定されたことを受けての訪問です。
日本の護衛艦が海外の主力艦として正式に採用されたのは初めてのことであり、歴史的な出来事になります。なぜいま、日本製の戦闘艦が選ばれたのでしょうか。
理由は、高性能な装備と、それを「常識外れの少人数」で運用できる点にあると言えるでしょう。
今回選ばれた「新型FFM」は、海上自衛隊で運用中のもがみ型をベースに船体を大型化し、さまざまな改良を盛り込んだモデルです。
もがみ型が基準排水量3900トン、全長は133mだったのに対し、新型FFMは基準排水量が4880トン、全長142mまで拡大され、ミサイルの垂直発射システム(VLS)も16セルから32セルへ倍増するなど、能力が大幅に強化されています。
しかし、最大の決め手となったのは「省人化」能力です。
オーストラリア海軍の現主力「アンザック級」フリゲートは運用に約170人が必要ですが、日本の「新型FFM」は、はるかに高性能でありながら、約半分の90人で動かすことができます。
同海軍も日本同様に深刻な人手不足に悩まされており、「人はいないが、船は出さなければならない」という課題の解決策として、日本の省人化技術が評価されました。
こうした少人数運用を可能にしたのが、艦内の「スマホ化」ともいえるハイテク化です。
なんでもこなすマルチタスクの裏側艦の頭脳であるCIC(戦闘指揮所)に入ると、そこはまるでゲームセンターのようです。指揮官を取り囲むように、部屋一周ぐるりと360度の大型円形モニターが並び、従来は別室だった「航行管制」「機関監視」「武器管制」の機能をCICに集約しました。
もがみ型護衛艦の5番艦「やはぎ」(画像:海上自衛隊)
外観も特徴的です。
塔の代わりに立つ「ユニコーンアンテナ」には、通信アンテナや戦術データリンクなどを1本に集約しています。なお、レーダーについては、コストや納期の観点から現地、オーストラリア製ではなく、実績のある日本製が搭載される公算が高いとみられています。
もっとも、ハイテク化で便利になったからといって、乗員の仕事が軽くなったわけではありません。少人数化により、一人ひとりの役割はむしろ重くなっています。
人が減っても仕事は減りません。乗員は「戦闘」に加え、「掃海」と呼ばれる機雷の除去まで担います。
FFMの「M」はMine(機雷)の意味を含み、従来は専門の艦艇(掃海艦/掃海艇)が行ってきた危険な機雷処理を、無人ロボットで遠隔実施できる能力を備えています。
戦闘もでき、機雷の無力化までこなす。ひとりで多役を担う姿は、レジ対応から品出し、公共料金の支払いまで担う「コンビニ店員」のようなマルチタスクぶりといえるでしょう。
もちろん、最小限の人数で動かしているため、火災発生時に消火の手が足りなくなるのではないかといった課題も指摘されています。
人手不足が進む日本において、いかに少ない人数で高度に守るかという極限の挑戦から生まれた「新型FFM」のデータと技術。

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