インド進出40年の歴史が培った?

 自動車メーカーのスズキが、カレーのレトルト食品分野で思わぬ支持を集めています。カレー担当の広報マンも、「2025年6月の発売から4か月で9万5000食を販売しました」と、ちょっと自慢げです。

【え…!】スズキのインドカレー各種と「揃えると出てくる隠し絵」(写真)

「スズキ食堂 インドカレー」のカレーは、発売当初4種類のラインナップでスタートしました。各食918円(税込)というハイブランド志向ながらも、その好調ぶりが評価されて現在では5種類に増えています。レトルトパッケージの背表紙を合わせると一つの絵になるというデザインから考えると、バリエーションはまだまだ増えそうな勢いです。

 スーパーなどで並ぶレトルトカレーの平均単価は、おおむね300円前後。スズキのインドカレーが挑む1000円前後の価格帯は、ブランド肉を使って競争するような高価格帯です。年間20万食売れたらヒットという専門レトルトカレー分野において、発売から4か月で9万5000食というのは、まさに大健闘といえます。

 そもそも、なぜレトルトカレーをこの価格設定で販売することになったのでしょうか。「これには布石がありまして……」と恐縮する広報マンに聞いてみました。

「ご存知通り、スズキはインドに進出して40年の歴史があります。『マルチ・スズキ・インディア』(※スズキの現地法人。マルチは風を意味し、風の神様の名前でもある)からも本社のある静岡県浜松市に来る人向けに、単純なベジタリアン向けではなく、本格的なインド料理がほしいと24年1月から社員食堂で13種類のカレーを提供することになりました。レトルトの5種類は、この中でそれぞれの地方を代表する味になっています」

 レシピ開発は、スズキと同じく静岡県浜松市に本社を置き、ブライダルやレストラン事業を展開する株式会社「鳥善」が手がけました。

このような地元企業との連携も、スズキらしいこだわりのひとつでした。

 さらに、先述した広報マンによると、スズキはインドカレーの奥深さを味わうことができるよう、このレトルトカレーにさまざまな工夫を施しているといいます。

「乳製品も動物性食材も使わないインドベジタリアン料理で、材料の一部もインドから輸入しています。保存料や合成着色料などの添加物も使っていません。そのせいで価格が高めになっていますが、インドのそれぞれの地方で違う味の奥深さを知っていただけたらと思っています」

「湯呑」の地位おびやかす新トレンドに

 本格的な味を追及した結果、名前もインドカレーの王道を感じさせますが、そのパッケージからは味の想像すらつきません。外箱に入った書籍のようなセットになっているのは、次の4種類です。

「スズキの食堂インドカレー」まさかの大ヒット!? 車は安く...の画像はこちら >>

当初は1色だった湯呑は、人気が上がるとともに色も文字もバリエーションが増えた(中島みなみ撮影)。

・大根サンバル (辛さ3)
・トマトレンズダール(辛さ2)
・茶ひよこ豆マサラ(辛さ4)
・青菜ムングダール(辛さ1)

 ここへさらに「南瓜サンバル(辛さ2)」が加わり、パッケージをバイクファン向けにアレンジした「二輪オリジナル トマトレンズダール(辛さ2)」も追加されました。

 例えば、「南瓜サンバル」はインドからの輸入車「eビターラ」が、「大根サンバル」にはバイク「隼」が丸みのあるイラストとなってあしらわれています。サンバルとは、インド料理の豆や野菜を煮込んだスープカレーのことです。

 スイフトをあしらったトマトレンズダールと二輪オリジナルのトマトレンズダールは同じ味ですが、二輪は「KATANA」に加えて「V-STROM」「GSX-R」などフラッグシップ4モデルが採用されています。ダールとは、豆の煮込み料理のことで、インド家庭料理の定番です。

 本業の自動車生産では、「ジムニー・ノマド」や「フロンクス」などインド生産車が絶好調です。国産メーカーなのに“輸入車”の新規登録台数でトップを記録しましたが、この勢いにあやかったかのようなレトルトカレーのブームの波が押し寄せてきています。

 スズキは過去にも、「小・少・軽・短・美」の経営理念をあしらった湯呑を発売。モーターサイクルショーやジャパンモビリティショーなどのイベント会場で、あっという間に売り切ってしまうほどの人気を作りましたが、湯呑に変わるスズキの看板商品になるのでしょうか。その確かな味は、スズキ関連イベントやオンラインショップ「Sモール」で手に入れることができます。

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