旅客機が巡航する高度約1万mの上空は、気温マイナス50℃、気圧は地上の概ね5分の1程度という過酷な環境です。そのため機内は「与圧システム」により人工的な環境が作られていますが、地上と同じ1気圧に設定されているわけではありません。
機体構造への負荷を減らすため、機内の気圧は意図的に、標高約2400m(富士山の五合目から六合目あたりに相当)と同程度に調整されています。この気圧の低下が、お腹の張りを引き起こす直接の原因です。
物理学で「ボイルの法則」というのがありますが、これは気体の体積が圧力に反比例することを示すものです。周囲の気圧が下がると、気体の体積は膨張します。これにより、山の上でポテトチップスの袋がパンパンになるのと同じ現象が、体内でも起きるのです。
飛行機が上昇し機内の気圧が低下するにつれて、胃や腸にあるガスの体積は理論上約35%膨張するとされます。これが、お腹の張りや不快感、いわゆる「飛行機腹」と呼ばれるものを引き起こします。
ちなみに、ボーイング787型機など炭素繊維複合材を多用した最新旅客機では、機体強度の向上により、客室の気圧をより地上に近い約1800m相当に保てるようになりました。この“2000フィート(約600m)の差”が、お腹の張りや体の負担軽減にもつながっています。
プロの知恵を拝借! 乗客のための「機内快適化チェックリスト」「おなら」という生理現象は、安全運航を担うプロにとっても重要課題です。
ボーイング787の客室内では、胴体に炭素繊維複合材を使用しているため、従来の金属製機体よりも高い湿度を保つことが可能になった。(画像:写真AC)
安全上の観点から食事にも細心の配慮が求められます。
具体的な”おなら対策”には、次のようなものがあります。
【フライト前の準備】
食事:フライト前は消化の良い鶏肉や魚、シンプルな白米などがおすすめです。豆類やブロッコリーなどガスを発生させやすい食材、揚げ物、香辛料の強い食事は避けた方が無難です。
【フライト中の対策】
水分補給:機内湿度は通常10~20%前後で、砂漠並みに乾燥しています。脱水は消化機能の低下を招くため、こまめに水を飲みましょう。利尿作用のあるアルコールやコーヒーは控えるのが望ましいです。
運動・服装:可能であれば1~2時間に一度は通路を歩きましょう。軽い運動は腸の動きを助け、「エコノミークラス症候群」の予防にもなります。お腹を締め付けない、ゆったりとした服装を選ぶことも大切です。
【困ったときは】
それでもお腹が張ってしまった場合は、我慢せずにトイレでガスを出すのが最も効果的です。
要約すると、空の旅を快適にするコツは「①消化に良い食事」「②こまめな水分補給」「③軽い運動」の3原則です。このシンプルな準備が、物理法則とうまく付き合うための最も確実な方法と言えるでしょう。

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