2025年12月5日、トランプ大統領は自身のSNSに「TINY CARS(小さな車)を米国内で作ることを承認した」と投稿しました。
これに先立つ12月上旬の記者対応などでは、10月下旬にアジアを訪問した際に見た小型車を「とても小さくて、本当にかわいい」と表現しており、その流れを汲んだものと見られています。
SNSなどでは日本の軽自動車や軽トラックへの関心と関連付けて伝えられることもありますが、現時点で対象車種が日本の軽自動車そのものであると特定された公式な資料は確認されていません。
なお一部では、この発言を燃料効率基準など自動車政策の見直しと関連付けて解釈する見方もあります。
しかし、なぜ巨大なピックアップトラックやSUVが愛されるアメリカで、わざわざ小さな車が必要とされているのでしょうか。最大の理由は、深刻な新車価格の高騰にあります。
最新の公表データ(コックス・オートモーティブ/ケリー・ブルー・ブック調べ)によると、2025年11月のアメリカの新車平均取引価格(ATP)は4万9814ドル(1ドル150円換算で約750万円)に達しています。
これほど高価になると、一般家庭が気軽に新車を買うことは困難です。そのため、農場での移動用や近所への買い物用、配達用といった「生活の足」として、安価で実用的な小型車への期待が高まっているのです。
安全基準の壁と「25年ルール」アメリカで新車を売る難しさこれまでアメリカで日本の軽自動車のような小型車が普及しなかった背景には、厳しいルールの壁がありました。
日本を代表する軽と言えばホンダ「N-BOX」(画像:ホンダ)
原則として、アメリカで車を販売するには連邦安全基準という独自の厳しいルールをクリアしなければなりません。ただし、1988年に法律化された通称「25年ルール」という制度があり、製造から25年以上が経過した車両であれば、この基準の適用が除外されます。
逆に言えば、25年未満の車両は原則として連邦安全基準への適合が求められるため、これに適合していない車を新車同然の扱いで流通させるには、衝突試験などの膨大な手続きが必要となり、現実的な負担が非常に大きい状況が続いてきました。
トランプ大統領の方針を受け、SNSなどでは肯定的な反応がある一方で、巨大な車が走るアメリカのハイウェイでの安全性について懸念する声も見受けられます。
今後の焦点は、大統領の指示によって安全基準に“例外規定”が設けられるのか、あるいは別のカテゴリで扱われることになるのかといった、具体的なルール整備の行方です。
これまでのアメリカは「大きいことは良いこと」「大は小を兼ねる」という価値観が主流でしたが、記録的な物価高騰がその常識を変えようとしています。
手頃な車を求める動きが、今後のアメリカの車社会にどのような変化をもたらすのか、動向が注目されます。

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