日本のバイクの歴史上、イタリアのスクーター・ベスパは1990年代が最も売れたと言われています。その影響を受けてホンダ、ヤマハ、スズキとも、どことなく「ベスパ的」なスクーターを発売します。
ただし、コアなバイクユーザーからは「ベスパ模倣車」と揶揄される傾向があり、軟弱なイメージもあったことから、ベスパとジョルノが信号待ちで並べば、ジョルノがなんだか後ろめたい……といった静かな空気が流れることも。そんな経緯からか、発売から7年後の世紀末・1999(平成11)年にホンダはジョルノに大革命を起こしました。
「ジョルノに、カブエンジンを積めばいいじゃん!」
果たして登場したジョルノの派生モデルの名は「ジョルカブ」です。軟弱なイメージもあったジョルノに、ホンダの矜持でもあるカブエンジンを搭載。ノークラッチで左足により4段階のギアチェンジができる仕組みです。駆動はチェーンで行われ、当時の原付スクーターの中では超簡単低燃費のリッター110km(定地走行テスト値)を実現しました。さらに、当時の新排出ガス規制にももちろん適合させての登場でした。
エンジンの冷却風を前方からフロアパネルの空洞を通過させ、シリンダーヘッドへと導けるよう、専用のレッグシールドを搭載。さらにフレームへカブエンジンのケースを通すため、オリジナルのジョルノとは異なる幅広のものが開発されました。
さらに、カブエンジンを搭載してチェーンで駆動させることから、スクーターでは定石のユニットスイング式ではなくスイングアーム+リアサスペンションを採用し、安定した乗り味も実現させました。
このように、なかなか手が込んでいるジョルカブなのですが、しばしベースモデルのジョルノと併売しながらも、2000年代以降はジョルノが生産終了となり、ジョルカブのみが数年間ラインナップされました。
結果的に、前述のようなジョルノを揶揄する向きを一気に黙らせることにも成功し、「カブエンジンを積んだジョルノ、なかなかいいじゃん」……こんな風にジョルカブを見るヘビーなバイクユーザーは今日も多くいることでしょう。
言わば、世紀末の年にジョルノは大革命を起こしたわけですが、もちろん、カブエンジンなので社外パーツなども流用できるとあり、後にジョルカブのカスタムなども盛んに行われました。本家・ベスパにさらに近づけたもの、ホットロッド、レーサー、はたまた族車まで、さまざまなジョルカブカスタムが登場しました。
ジョルノ再評価高まる今こそジョルカブ復活を!ただし、従来のジョルノを愛用していたのはライトユーザーばかりでした。そのため、ジョルノにわざわざカブエンジンを積み、ギアチェンジしてまで乗りたいと思うユーザーはごく限られていたようで、2001(平成13)年に新色を追加後、2003(平成15)年に人知れず生産終了となりました。
タイ・ホンダによる新設計エンジン・eSP+を積んだハイスペックのジョルノ+(プラス)。スポーティーな外観だ(画像:シルバー・バック)。
一方、ベースモデルだったジョルノは2011(平成23)年に復活し、再び「ライトユーザーの足」として重宝されるようになりました。
また、2023(令和5)年にはタイ・ホンダによる新設計エンジン「eSP+」を積んだハイスペックのジョルノ+(プラス)も発売されました。ジョルノ+(プラス)は125ccの走りにこだわったモデルで、外見もかなりスポーティー。かつてのジョルノの軟弱なイメージを払拭する、いかにも硬派なモデルに仕上がっています。
ただし、このジョルノ+(プラス)を見ると、つい思ってしまうこともあります。

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