現代のバイクは、ほとんどがクリーンで効率的な4ストローク(以下、4スト)エンジンを搭載しています。
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しかし、20年ほど前までは、甲高い排気音とオイルの焼ける匂いを放つ、荒々しい魅力を備えた2ストローク(以下、2スト)バイクが街中にあふれていました。
最大の理由は、排出ガス規制への対応が構造的に困難だったことです。
4ストがクランク2回転で4工程(吸入・圧縮・爆発・排気)を行うのに対し、2ストは1回転で2工程(吸入・圧縮と爆発・排気)をこなします。
このシンプルさが2ストエンジンの軽量・高出力を生む一方、燃える前のガソリンが排気と一緒に出てしまう「吹き抜け」や、潤滑オイルを燃焼させることによる「燃えカス」の排出が避けられず、燃費や環境性能で4ストに劣っていました。
2ストエンジンは、構造が簡単なため戦後長らく国産バイクの主流でしたが、1998年に国内初のバイクに対する排ガス規制が導入されたことでパワーダウンを強いられ、触媒が機能しにくい冷間時も測定対象となった2006年規制で、2ストは大打撃を受けました。
さらに、世界基準(Euro4)と調和した2016年以降の規制強化が決定打となり、公道用2ストバイクは国内の新車市場から完全に姿を消したのです。
国産メーカーの公道用2ストローク250ccレプリカは、1999年頃に生産終了したホンダ「NSR250R」やスズキ「RGV250Γ」などが最後となりました(公道走行不可のモデルでは、ヤマハ YZシリーズがあり)。
なぜ惹きつける? 五感を直撃する「官能」と未来環境性能で劣る2ストですが、なぜ今も人を惹きつけるのでしょうか。それは、現代の4ストにはない、五感を直接刺激する官能的な魅力を兼ね備えているからです。
NSRの最大のライバル、ヤマハ TZR250(画像:ヤマハ)
まず独特の甲高い排気音。4ストの倍の頻度で爆発が起こるため、金属的なサウンドになります。
外観では徳利(とっくり)状のマフラー「チャンバー」も特徴的で、これが排気効率だけでなく音づくりにも寄与します。
また、オイルが燃える匂いと白煙も、潤滑オイルを燃やす2ストならではのものです。ライダーにとってはエンジンが正常である証でもありました。
そして何より強烈なのが、「暴力的」とも言える加速感です。特定の回転域で急激に出力が立ち上がる「パワーバンド」があり、その瞬間の加速Gは麻薬的な魅力がありました。
ヤマハ「RZ250」は「ナナハンキラー」と呼ばれ、後のレプリカブームの礎となり、1983年のスズキ「RG250ガンマ」がブームに火をつけました。
ライバル関係にあったホンダ「NSR250R」は、1988年式で世界初のPGMコンピューター制御を導入し、1990年には「ガルアーム」を装備するなど、先進技術で時代をリード。まさに公道を走るレーサーでした。
さらに、2ストバイクはシンプルな構造ゆえに「いじる喜び」があった点も魅力です。
新車で買えなくなった今、NSR250Rなどの中古車は高騰しています。これは単なるノスタルジーではなく、現代バイクにはない「機械との対話」を二輪オーナーたちが求めているからでしょう。
とはいえ、2ストの物語は公道からの退場で終わったわけではありません。軽量・ハイパワーが活きるオフロードレースの世界では今も現役です。
KTMなどの海外メーカーは電子制御燃料噴射(TPI)といった技術で2ストを進化させ、環境性能も改善しています。
公道では環境規制に阻まれましたが、その魂は形を変え、最も価値が活きる場所で、今も甲高い叫び声を上げ続けているのです。

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