並行する国道のトンネル工事で2026年1月まで長期運休していた赤字ローカル線を“ミニ新幹線”に転換しようと、地元の自治体や経済界が声を上げています。なんと現状は「陸の孤島」だと自虐するチラシまで作り、熱量いっぱいにPR活動を繰り広げています。
【あれ?食い違う?】これが山形の「3つの新幹線延伸」構想です(地図/写真)
松尾芭蕉の俳句「五月雨を 集めて早し 最上川」で有名な最上川に沿って山形県内を走り、「奥の細道最上川ライン」の愛称が付けられているのがJR東日本の陸羽西線です。山形新幹線の終点となっている新庄(新庄市)と、日本海側の余目(庄内町)の43.0kmを結びます。
1日9往復のみの非電化路線で、約3年8か月間の運休を終えて2026年1月16日に列車運行を再開したばかりです。並行する国道47号「高屋道路」のトンネル工事のためで、代替バスを運行していた2024年度の営業収支が11億4600万円の赤字だったのにとどまらず、鉄道運休前から赤字が恒常化しています。
そんな赤字ローカル線の陸羽西線を巡り、線路幅を現在の1067mm(狭軌)から1435mm(標準軌)へ広げて電化することで“ミニ新幹線化”し、現在は新庄止まりのミニ新幹線・山形新幹線を庄内地方に呼び込もうと地元の自治体と経済界が動いています。
その一環で酒田商工会議所が作成したチラシは、庄内地方が山形県から離れた島になっているような地図に「まだ、庄内島?」と書き込み、現状は「陸の孤島」だと自虐しています。そして「もっと『県都』と繋がりたい!!」と、「新幹線未開(続けて「通」を補う記述)の地・庄内へ 山形新幹線の庄内延伸を!!」と呼びかけています。チラシは1500枚作成され、山形県の吉村美栄子知事を含めた県庁関係者、県内の経済界関係者らに配布してきました。
酒田商工会議所の加藤 聡会頭(加藤総業社長)は筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)に対し、チラシを作ったのは「山形新幹線の庄内延伸に向けた機運醸成のために口火を切る材料にしたかった」と明かしました。そして、庄内延伸へ前進させるための「大きな目標」を明らかにしました。
しかし、庄内地方へ新幹線を延ばす構想には、「羽越新幹線」構想もあります。なぜ山形新幹線延伸が再び取りざたされているのでしょうか。
羽越新幹線は富山市―青森市間の日本海沿いを新幹線で結ぶ構想で、1973年に全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画路線となりました。途中で新潟市付近と秋田市付近を経由すると明記されています。
うち富山―上越妙高(新潟県上越市)間は北陸新幹線、長岡(新潟県長岡市)―新潟間は上越新幹線が既に開通しているため、事業化する場合には庄内地方などを通る486.1kmを新設します。
2008年10月に当時の齋藤 弘山形県知事(前知事)は費用対効果(B/C)を調査した結果、羽越本線をミニ新幹線にするなどの方法で高速化した場合の方が、山形新幹線の庄内延伸より優位だと表明しました。山形県は羽越新幹線建設促進同盟会などを通じ、早期実現を要望してきました。
ところが、基本計画の決定から半世紀余り過ぎても一歩も動いていないのが実情です。基本計画から整備計画への昇格はおろか、基本計画決定の次のステップとなる国土交通相による路線の調査指示にも進んでいないのです。
山形新幹線延伸に“福音”一方で羽越新幹線と比べて劣勢に立たされた山形新幹線の庄内延伸は「吉村知事が以前より聞く耳を持ってくれるようになった」(庄内地方の自治体関係者)ことが“福音”となっています。
陸羽西線用のキハ110系(大塚圭一郎撮影)
吉村知事は庄内地方のフリーペーパー「コミュニティしんぶん」の2025年5月14日のインタビューで「本県としては山形新幹線を新庄から庄内に延伸し、秋田県に行くという経路は、大いにあると思っている」と発言。2025年6月23日の県議会6月定例会予算特別委員会では「庄内から首都圏につながる鉄道ネットワークのさらなる機能強化が必要と考えている」とし、「地域でも議論を盛んにしていただきたい」と呼びかけました。
知事が山形新幹線の庄内延伸の可能性に言及するようになった背景には、実現すれば米沢トンネル(仮称、約23km)構想の費用対効果が高まり、庄内からの後押しも受けられる一石二鳥の思惑があるとの見方が出ています。これは山形新幹線の板谷峠がある難所をトンネルで置き換える構想で、実現すれば福島―米沢(山形県米沢市)間の所要時間が10分短縮され、悪天候時の運休リスクも軽減すると見込まれています。
JR東日本の深澤祐二会長も2026年1月、筆者に対して「山形県と今話しているのは、山越えの山形新幹線は自然災害もある中で米沢トンネルを掘り、時間も短縮して、かつ安全レベルも上げるためにどういうことをするのが良いのかという話です。われわれとしてはそこが一番、まずやるべきことだと思います」と必要性を強調していました。
新庄延伸時よりもはるかにお金がかかる!?ただし、現時点で約2300億円と試算されている事業費の捻出が課題となり、工期も約25年と見込まれています。吉村知事は県議会で、山形新幹線を庄内へ延伸すれば米沢トンネルの整備効果を「より一層、庄内にも及ぼすことが可能になる」と言及しています。
これに庄内地方の企業幹部は「山形新幹線を延伸する可能性をちらつかせることで、庄内地方からの応援も受けたいとの思惑があるのではないか」との見解を示しました。
1992年に福島―山形間が開業した山形新幹線が99年に新庄(新庄市)へ延伸した際には、総事業費343億円のうち山形県は139億円を支出しました。庄内延伸でも県の資金拠出が不可欠で、前段階として現時点での事業費概算や費用対効果などを調べることが求められます。
このため庄内、最上両地域の市町村長と酒田、鶴岡、新庄の各商工会議所会頭は2025年12月8日、吉村知事へ庄内延伸に向けた調査の早期実施を求める要望書を提出しました。山形県の有力紙、山形新聞の12月9日付記事によると吉村知事は「新たな調査を行うとは即答できない」としつつ、「地域が盛り上がり、活発に議論することが将来につながる」と訴えました。
それに呼応して庄内地方の行政と経済界は、山形新幹線の庄内延伸に向けた広報媒体を作成するなどして誘致活動を加速させる方針です。
酒田商工会議所の加藤会頭は筆者に対して「山形新幹線の庄内延伸は、米沢トンネル(仮称)の整備効果を高めるとともに、山形県の4地域を山形新幹線で結ぶことによって本県の一体性をより高め、県民の福祉向上、産業、観光振興をはじめとして県土の一体的な発展に結びつくものと確信しています」と強調しました。
その上で、山形新幹線の庄内延伸に向けて「吉村知事の現在の任期中(5期目の2025年2月14日からの4年間)に調査を実現させたい」との大きな目標を掲げました。
加藤会頭はさらに、庄内延伸を目指すもう一つの狙いを「赤字路線の陸羽西線を廃線としない最善の策にもなるからだ」と打ち明けました。
陸羽西線の運転再開を記念し、酒田駅に設けられたコーナーのメッセージボード(大塚圭一郎撮影)
陸羽西線はバス代行期間中の2024年度の平均通過人員が117人と、JR東日本発足初年度(1987年度)の2185人の5%まで落ち込んでいます。国道のトンネル工事によるバス代行期間中は、国が運行費用を出しました。しかし列車運行が再開したことで、利用者数が大きく上向かなければ存亡の危機に立たされかねません。
もしもミニ新幹線化が実現すれば、新庄と余目の間にある駅の存廃が議論になる可能性はあるものの、路線存続は確定します。
陸羽西線の沿線にある庄内町の富樫 透町長は「陸羽西線は運行を再開したものの、現状の乗降客数と採算性のみを考えれば廃線議論が高まりかねない」と危機感を示した上で、「庄内への山形新幹線延伸は、陸羽西線存続に向けた起爆剤になる」と力説します。山形新幹線の庄内延伸を目指した誘致活動は、陸羽西線の存続を賭けた“ウルトラC”の任務も帯びています。

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
