日本の大手航空会社グループでは初の導入となるフランスATR社製の飛行機が、長旅を経て鹿児島に到着。小型機ですが、従来とは異なる設備を誇るほか、多くの場合と違い、前方ではなく後方の座席が人気になるかもしれません。

フランスから6日間の「長旅」を経て

 2017年1月26日(木)12時40分ごろ、日本の大手航空会社グループでは初めての導入となるATR社製の飛行機が、鹿児島空港へ到着しました。

 それを導入したのは、鹿児島県霧島市に本社を置くJAL日本航空)グループのJAC(日本エアコミューター)。JALが60%、鹿児島県の奄美群島12市町村が40%を出資する航空会社で、鹿児島空港を中心に鹿児島の離島や福岡、大阪などを結んでいます。

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鹿児島空港に到着し、歓迎を受けるJACのATR42-600初号機(2017年1月、恵 知仁撮影)。

 またATR社はフランスに本社を置き、90席以下のリージョナル航空機市場をけん引しているエアバスグループの航空機メーカー。日本の航空会社が同社の機材を導入するのは、2016年2月に運航を開始した天草エアライン(熊本県)に続き2機目で、大手航空会社グループでは今回が初になります。

 JACはATR社の最新鋭ターボプロップ機であるATR42-600型機を、2019年までに9機購入する予定。その初号機となる「JA01JC」がこのたび、日本へやって来ました。大型機と異なり航続距離が短いことなどから、以下の「長旅」をして鹿児島へ着陸しています。

1月21日(土):トゥールーズ(フランス)~イラクリオン(ギリシャ)
1月22日(日):イラクリオン~シャルム・エル・シェイク(エジプト)~アール・マクトゥーム(ドバイ)
1月23日(月):アール・マクトゥーム~ハイデラバード(インド)~チェンナイ(インド)
1月24日(火):チェンナイ~ドンムアン(タイ)
1月25日(水):ドンムアン~台北(台湾)
1月26日(木):台北~鹿児島

 ATR42-600型機はターボプロップエンジンを用いるプロペラ機で、巡航速度は556km/h。ATR社に所属する運航乗務員2名(フランス人)の操縦で、鹿児島へ届けられました。

ATR最新鋭機、その実力とは 多くの飛行機と違い後方席が人気に?

 ATR42-600型機は、標準座席数48の小型機。

JACが現在使用している標準座席数36のSAAB(サーブ)340B型機を更新し、現代的なサービスを提供して利用者のニーズに応えることなどを目的に、導入したとのこと。同社の担当者は「小型機は機内の手荷物収納スペースが狭いとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、新型機はそれが大きくなっています」とその特徴を話します。

 JAL国内線で運航されている「JAL SKY NEXT」仕様に準じた全席革張りシート、LED照明と「ARMONIAデザイン」による明るい機内も、新型機の特徴です。「ARMONIAデザイン」はイタリア語で「ハーモニー(調和)」を意味するもので、イタリアのデザイナー「ジウジアーロ」が設計した客室デザインとのこと。

JALグループ、ATR製旅客機を初導入 人気席は前でなく後ろに? その特徴とは

鹿児島空港に着陸後、消防車の放水で歓迎されるJACのATR42-600初号機(2017年1月、恵 知仁撮影)。

 新型のATR42-600型機は、そうした向上した快適性のほか、座席数が増えることによる輸送力の向上、プロペラ機としては静かであること、燃費などのコストパフォーマンスが良い、といった特徴があるといいます。またコックピットは、エアバス社の大型機A380に使われている技術を取り入れたグラスコックピットで、最新の航法機器を装備しているそうです。

 ちなみにATR42-600型機は、乗降口が機体の後方にあります。一般的にそれは前方にあることが多いため、早く降機できる前方の座席が人気になる傾向がありますが、同機の場合は「後方が人気になるかも」(JAC担当者)しれません。

「鹿児島らしい意味」を持つ機体のハイビスカス 今後は屋久島などへ

 鹿児島に到着したJACのATR42-600型機は今後、操縦や整備などの訓練を経て、2017年4月26日(水)以降に鹿児島~屋久島間、鹿児島~沖永良部間で1往復ずつ就航する予定。そして5月8日(月)以降は鹿児島~屋久島間が1日2往復になり、5月25日(木)以降は鹿児島~奄美間にも1往復就航する見込みです。

JALグループ、ATR製旅客機を初導入 人気席は前でなく後ろに? その特徴とは

機体にハイビスカスが描かれたJACのATR42-600初号機。
右側の大きな花が「鹿児島」で、そこから左下へ広がる小さな花で鹿児島県の7離島を表現(2017年1月、恵 知仁撮影)。

 またJACのATR42-600型機は、初号機と2号機が、地元・鹿児島のタラデザイン専門学校とコラボレーションした特別デザインになります。鹿児島県の離島では多くの自治体がハイビスカスを「市町村の花」として採用しており、それを機体にデザイン。「水引」のような5本のラインで地域と地域、人と人を結び、さらに子どもたちの夢、人々の思い、過去から現在、未来をも永遠につないでいきたいという思いを込めたといいます。

 現在、JACは標準座席数74のボンバルディアDHC8-Q400型機を9機、標準座席数36のSAAB340B型機を9機、合計18機を運用していますが、新型のATR42-600型機は基本的に、SAAB340B型機と入れ替える形で導入する予定とのこと。JACはしばらく3機種体制での運航になります。

 なおATR42-600型機はJACにとって、2003(平成15)年に就航したDHC8-Q400型機以来10年ぶりの新型機。また、ATR42-600型機と入れ替えになるSAAB340B型機がJACで就航したのは1992(平成4)年です。

【写真】2017年のいまなおJAS機?が飛来する鹿児島空港

JALグループ、ATR製旅客機を初導入 人気席は前でなく後ろに? その特徴とは

JALグループに現在も1機だけ存在するJAS(日本エアシステム)デザインの機材。JACのDHC8-Q400型機(2017年1月、恵 知仁撮影)。

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