「ほぼ死にかけている」次世代戦闘機計画

 2026年2月20日、ベルギーのテオ・フランケン国防相が、フランス・ドイツ・スペインの3か国による新戦闘航空システム「FCAS」(フランス語ではSCAF)の共同開発プロジェクトについて「ほぼ死にかけている」と述べました。

【ここまで作ってるのにね…】これが「FCAS」の新戦闘機です(写真)

 ベルギーはFCASプロジェクトの正式なメンバー国ではありませんが、将来の正式参加も視野に入れて、議決権を持たないオブザーバとして共同開発プロジェクトに関与しています。

新有人戦闘機「NGF」や、各種無人航空機システムを「コンバットクラウド」と呼ばれる通信ネットワークで接続するFCASに1000億ユーロ以上の経済的価値があると見ているためです。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2026年2月11日、同国の新聞「ル・モンド」に「FCASは良いプロジェクトだ」と述べ、計画続行への意欲を示しているものの、FCASの前途には悲観的な見方が広がっています。

 ベルギーに拠点を置くシンクタンク「欧州政策センター(European Policy Centre)」の防衛・安全保障担当上級客員フェロー、ポール・テイラー氏も、「私の感覚ではこのプロジェクトは1、2年前から死んでいる」と述べているほか、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相や、スペインの大手防衛企業インドラのデ・ロス・モソスCEO(最高経営責任者)らも、現在の形での共同開発プロジェクトの継続に悲観的です。

 FCASの共同開発プロジェクトが空中分解寸前になっている理由は主にふたつ挙げられます。

 ひとつは、フランスとドイツのNGFに対する要求の大きなギャップです。メルツ首相は出演した政治ポッドキャスト「Machtwechsel」で、「フランスはNGFに核兵器の搭載能力と空母での運用能力を求めているが、両方とも現在のドイツ軍が必要としているものではない」と述べています。

 この問題に対し、FCASの共同開発で主導的な役割を担うエアバスのギヨム・フォーリCEOは2026年2月19日に行われた決算説明会で、顧客からの要望があれば2種類の有人戦闘機を並行開発することを支持すると述べました。

 しかし、この考え方に対してはメルツ首相や、2019年までエアバスのCEOを務め、現在はドイツ外交問題評議会の会長を務めるトム・エンダース氏などから、特に財政的な理由で「現実的でない」と批判されています。

最大のガン=主導権争い

 もうひとつの理由は、開発の主導権争いです。NGFの開発をフランス側で主導するダッソー・アビエーションと、ドイツ、スペインの両国で主導するエアバスの間で対立があります。

 仮に2種類の戦闘機を並行開発するというフォーリCEOの考えがエアバス主導で行われた場合、ダッソー・アビエーションのワークシェアは少なくなることが必至です。ベルギーの参加すら「彼らに与える仕事は無い」と否定的な見解を示したダッソー・アビエーションにとって、到底受け入れられるものではないと考えられます。

 FCASの共同開発プロジェクトが本当に空中分解するのか、その場合ドイツ、フランス、スペインの3か国がどうするのかを予測するのは困難です。しかし妥協点として、前述のコンバットクラウドの共同開発は継続し、それに接続する有人戦闘機やUASは、それぞれ別のものを開発するという形は考えられます。

 フランスはアメリカ、ロシア、中国とともに、機体からエンジン、システムまで戦闘機の構成要素をすべて自力で開発する能力を持つ数少ない国のひとつです。このため時間とお金をかければ、第6世代戦闘機を自主開発できると考えられますが、巨額の開発費をフランス一国で賄うのは難しいのではないかとも考えられます。

ドイツが抜けたら…別の国が!?

 前に述べたように、イギリスはGCAPを通じてイタリア、日本と新戦闘機の共同開発を進めていますが、ポリティコはその計画にドイツが参加する可能性があるとしています。もちろんイギリスの独自開発ではないので、アメリカからF-47を購入するか、GCAPへの参加、またはGCAPを購入するかのいずれかを選択しない限り、ドイツは次世代戦闘機を手にすることはできません。

「ダメだこりゃ」の雰囲気が覆う欧州「新戦闘機」の共同開発、“...の画像はこちら >>

インド空軍の「ラファール」。フランスとの関係は深い(画像:インド空軍)

 アメリカのドナルド・トランプ大統領はF-47を輸出すると述べていますが、ドイツにはエアバスをはじめとする多くの航空防衛産業があります。F-47のドイツでの生産が認められない限り、ドイツは産業保護の観点からF-47の導入には踏み切れないのではないかと思います。

 ヨーロッパの一部には、FCASとGCAPを統合すべきとの声もありますが、エアバスの防衛部門であるエアバス・ディフェンス・アンド・スペースのマイケル・ショホローンCEOは、2025年5月に東京で行った会見の席上、それは現実的でないとしています。既に開発計画が進行しているGCAPに、ドイツが今から参加することは難しいと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 また、一部の海外メディアはドイツがGCAPで開発される新戦闘機を購入し、ドイツ空軍向けの機体をドイツ国内で生産するのではないかと報じています。

この方法ならばGCAP計画に混乱を招くことなく、ドイツ国内の雇用を確保できますし、エアバスがFCAS向けに研究開発を進めていたUASの技術を取り込める可能性も生じますので、この方法ならば実現の可能性はあると筆者は思います。

編集部おすすめ