中国が自主開発し初めて実用化したジェット旅客機「C909」は、業界関係者などのあいだでは、アメリカの旅客機「MD-80」を“パクった”モデルとして知られています。そのようななか、C909のバリエーションに、「MSJ」と名付けられた機体が現れたのを筆者は発見しました。
【写真】えっ瓜二つ…これが「MSJ」と「ナイチンゲール」の比較です
日本人にとっては、旅客機分野で「MSJ」と聞くと、国産ジェット旅客機として開発が進められたものの、実用化に至らず頓挫した「三菱スペースジェット(旧名称MRJ)」が思い出されます。こちらも名称が“パクられた”のでしょうか。
C909は2016年から中国国内で実運航に入り、最近は消防用機のバリエーションも発表されています。
今回、筆者が発見した「MSJ」と名付けた機体もそのようなバリエーションの1つで、製造元のCOMAC(中国商用飛機有限公司)によると機内に医療の設備を搭載した「病院機」とのことです。「医療用サービスを行うジェット機」の略で「MSJ(メディカル・サービス・ジェット)」とのこと。つまり、日本のMSJとはまったく名称の意味が異なり、先述の疑惑は当てはまらないことになります。
そのような「中国版MSJ」の機内はどのようになっているのでしょうか。COMACの公式パンフレットによると、客室後部にICUエリアと呼ぶ医療区画を設けて緊急治療用のストレッチャーを2台置き、除細動器なども設けているとしています。客室前部は医療関係者などの客席が24席設けられています。
機体性能としては、航続距離は5500kmで離陸滑走距離は1900m、着陸距離は1650m。気温の高い地域や寒冷地での運航も想定としていることから、地方空港を含めた中国のほぼ全域をカバーできると思われます。
旅客機を様々な用途に合うようバリエーション展開するのは、どのメーカーでも一般的ですが、病院機としての役目と“コピー元”になったMD-80を重ね合わせると、C909MSJの“本家本元”はアメリカにあると思えます。
C-9A「ナイチンゲール」は1960年代に、MD-80シリーズの元になったDC-9旅客機を改造してつくられました。当時はベトナム戦争が激しかったことから、C-9Aは前線で負傷した将兵をより高度の治療を受けることができる後方地域へ運ぶのを目的としていました。
C-9Aは胴体前部左側に大きな扉を設けて傾斜の緩やかなスロープを装備し、車椅子やストレッチャーによる搭乗も可能にしていたところがC909MSJと異なります。医療用設備もC909MSJとは逆に胴体前部に設け、客席は胴体後部にありました。更にC-9Aの客席は、機体の後部を向くように設けられていたのも特徴として挙げられます。なお、C909MSJの座席は、一般的な旅客機のそれと同じように前向きになっています。
C909MSJはあたかもDC-9(MD-80)から病院機というコンセプトも拝借し、二重のコピーになったのですが、中国にしてみれば、「容易に浮かぶアイデア」と一蹴できるかもしれません。確かにC909のような小さな旅客機は、地方の小さな空港でも発着できて便利で、それゆえ300席級の大型のものと比べて、様々なバリエーション展開へと拡張しやすい設計といえるでしょう。筆者にはこれは、中国の世界の民間旅客機市場へ参入する野心とも感じることができるのです。

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