トランプ関税や米中摩擦、円高、中国メーカーの台頭もあり、トヨタ以外の国内自動車メーカーの業績が伸び悩んでいます。一方、堅実な成長を続けているのがスズキです。
【なんか違う!】これが「インド仕様のワゴンR」です(写真で見る)
三井住友DSアセットマネジメントのレポートによると、2025年度の4~12月期決算において、販売台数が「増加」と表現されているのはトヨタとスズキだけです。このうちトヨタが台数を伸ばしているのは、EVなど電動車の販売拡大によるものとされていて、同社が掲げた「マルチパスウェイ戦略」の強さが表れた結果といえます。
一方スズキの成長を支えているのは、長年主戦場として投資してきたインド市場の堅実な伸びです。同データによると、スズキの販売台数は前年同期比で5.3%増の241万8000台となっていますが、その半数以上の135万台はインド市場での実績。国内での軽自動車はもちろんですが、独自開拓ともいえるインドのマーケットは、スズキにとって収益の最大の柱なのです。
好調なスズキと対照的に、業績を落としたのはアメリカや中国をはじめ、市場規模の大きいほかの海外地域に販売の軸を移したメーカーです。特にマツダやスバル、日産といったアメリカ市場への依存度が高いメーカーは、今回のトランプ関税の問題で大きな打撃を受けました。
しかし、スズキは2012年にアメリカ市場から、2018年には中国からも撤退しています。また、アメリカを中心とした先進国で人気の日本車はトヨタ「RAV4」やマツダ「CX-5」、スバル「フォレスター」などの中・大型SUVですが、スズキはグローバルでも、こうしたモデルと競合する中・大型SUVを販売していません。加えて、中国メーカーの台頭も著しいEVについても慎重な戦略を取っています。
つまり、スズキの好調はインド市場の堅実な成長に加え、トランプ関税や米中摩擦、EV市場での熾烈な競争など、ほかのメーカーが大きな影響を受けた問題の直撃を回避できたことによって生まれているのです。
実際、スズキはインド市場で約半数のシェアを誇り、筆者(西川昇吾:モータージャーナリスト)も現地に行った人から「道路を見ると2台に1台がスズキ」と聞いたことがあります。
インドの高速インターチェンジ。多くのスズキ車が走る(画像:PIXTA)
スズキがインド市場に進出したのは、1982年のこと。当時インドの国営企業であった「マルチ・ウドヨグ」社と4輪車の合弁生産について合意し、翌1983年からクルマの生産を開始しました。
このタッグの背景にあったのは、当時のインド政府が掲げた「国民車構想」です。これは日本の軽自動車のように、税制優遇の対象となる小型車の規格を設ける政策で、このパートナーとして手を上げたのがスズキだったというわけです。スズキはこのインド独自規格に合致したモデルを開発し、現在も規格に合わせたモデルの販売を続けています。もちろん、インドに工場も有しています。
今日の成功を思えば、人口の多いインドが将来的に有益な市場になるという、スズキの見立てには先見の明があったといえます。が、当時インドでは自家用車を所有できる国民は限られていたことを考えると、大きな賭けだと見る向きもあったでしょう。
ただ、インド政府の国民車構想に正面から応え、安価で耐久性の高いクルマを提供することは、小さなクルマを得意としている、スズキだからこそできたことだと筆者は考えます。1982年に下した決断は、21世紀になって正解であったと証明されているのです。

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