海=青じゃない!? 水中を進む潜水艦が黒い理由

 2026年3月10日、海上自衛隊向けとなる最新の国産潜水艦「ちょうげい」が就役しました。潜水艦というと真っ黒な船体を思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、その一方で「しんかい6500」をはじめとした学術研究用の潜水艇は、船体を黒色で塗っていません。

【あれ、黒くない!?】ツートンカラーの自衛隊潜水艦をイッキ見!(写真で見る)

 なぜ自衛隊の潜水艦は、すべて黒なのでしょうか。

 そもそも、潜水艦が真っ黒な外装をしている大きな理由は、深海という特殊な環境で姿を隠すためです。

 太陽の光は海深くへ進むほど水に吸収されていきます。なかでも赤い光は特に早く失われ、数m程度で見えにくくなります。水中では波長の長い光から順に吸収されるため、赤、黄、緑の順で色が消えていき、最後まで残るのが青色の光です。

 ただし、深くなるほど光は急激に弱まり、水深200m付近を境に十分な明るさは失われていきます。さらに深い層では、ほとんど光が届かない暗い世界になります。

 潜水艦が活動するような深い海では、青い船体よりも黒のほうが周囲の闇に溶け込みやすく、上空からの視認を避けるうえでも効果的であるため、この色が採用されたと考えられます。

 興味深いことに、歴史をさかのぼると潜水艦は最初から黒かったわけではありません。かつての潜水艦は海面に浮かんで移動する時間が長かったため、空や波の色に馴染む灰色などで塗装される例もありました。実際、第一次世界大戦や第二次世界大戦で多数用いられたドイツのUボートなどはグレーでした。

 しかし、その後性能が向上し、長期間潜ったまま活動できるようになったことで、現代の潜水艦は、いわば”深海の住人”として、闇に合わせた黒色が標準となったのです。

黒い皮膚は機密の塊 その理由とは?

 潜水艦の黒さには、もうひとつ技術的な背景があります。

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入港する海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦。船体に格子状に無反響タイルが貼られているのがわかる(画像:海上自衛隊潜水艦隊)

 近年の潜水艦では、船体表面に音を吸収する「無反響タイル(吸音タイル)」を用いる例が知られています。

 海中では目視よりも、音波で物体を探す「ソーナー」が大きな脅威となります。無反響タイルは、ソーナー反射を弱めたり、艦内の音が外へ伝わりにくくしたりする目的で用いられます。こうした工夫により、相手のソーナーに探知されにくくする”ステルス性能”を高めているのです。

 このタイルなどのゴム製品には、強度や耐久性を高めるために「カーボンブラック(炭素の微粒子)」が使われることが多いです。たとえば、タイヤ用ゴムでは、補強材としてカーボンブラックが広く使われることが知られています。

 一般的に、カーボンブラックを混ぜることでゴムの強度は高まり、過酷な環境に耐える性質が得られます。潜水艦の無反響タイルに関する性能は各国とも秘密にしているため、その材質も不明ではあるものの、おそらく強度や耐久性などを考慮してカーボンブラックなどを配合しているのではないでしょうか。そのうえで、前述したような理由から黒く塗装していると思われます。

 潜水艦とは、最先端技術と人の工夫が”見つからない”というひとつの目的のために極限まで統合された、究極のシステムといえるでしょう。

 ちなみに、海上自衛隊の潜水艦も当初から黒一色だったわけではありません。2017年2月に退役した「あさしお」(はるしお型7番艦)までは、下半分が赤く塗られていました。この2色塗装の姿は、広島県呉市にある「海上自衛隊呉史料館(愛称:てつのくじら館)」で展示されている「あきしお」(ゆうしお型7番艦)の巨大な実物展示などで見ることができます。

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