「チョイノリ」の7年前に生まれた“兄貴分”

 2000年代に「5万9800円」という破格の値段で登場し、大ヒットとなったスズキ・チョイノリ。日本のバイク史にその名を刻む小さな名車ですが、実はその7年前に、「チョイノリの兄貴分」とも言うべきコスパ最強のスクーターが発売しています。

それが1996(平成8)年に初代が発売されたスズキ・レッツです。

【違いナニ!?】これが「14.4万円版」の3か月後に出した「9.8万円スクーター」です!(写真)

 初代レッツの価格は14万4000円でしたが、約3か月後の同年にラインナップされたレッツIIはなんと9万9800円。低迷しつつあったスクーター市場の中で、このコスパの良さから初代レッツを凌駕する大ヒットとなり、以降レッツシリーズは、スズキのスクーターを代表するブランドの一つになりました。

 14.4万円の初代レッツは、当時としてはかなりの高機能を持たせたスクーターでした。フロントのハンドル下部分を開閉させる仕組みのバスケットイン機能は、13Lもの大容量収納を実現。また、シート下にはフルフェイスヘルメットも格納できる、これまた大容量の20Lの照明付きパーソナルスペースを装備していました。

 この他、便利なインナーラック、コンビニフック、盗難防止機構のスタンドロックなど、ライトユーザーにとって欲しい装備をいくつも実現。それでいて、最高出力6.8psというパワーも備えた2サイクルモデルで、当時のスズキが相当な力を込めて開発した自信作でした。

 ただし、これだけの機能を装備したことで、14万4000円という値付けになったわけですが、「やり過ぎ」といったスズキ社内の意見があったのか、レッツIIでは機能を限定。バスケットイン、スタンドロックなどを省き、見事10万円を切る9万9800円の価格を実現させました。

 果たしてレッツIIは大ヒットに至り、後にはディスクブレーキ仕様のS、ローシート仕様のL、スポーツタイプのZZ、上級仕様車のGなどもラインナップ。初代が販売終了となった以降も、レッツIIは2007(平成19)年までの11年間の販売され続けるメガヒットとなりました。

 なお、このレッツIIの販売期間中、2003(平成15)年に登場したのが、前出のチョイノリです。おそらくはレッツIIの販売モデルを参考に5万9800円という破格値で登場したと思われます。これが正しければレッツIIという兄貴分がいなければ、チョイノリの誕生はなかったように感じます。

2代目が「4」、3代目が「G」ややこしいモデル名!

 さらに、レッツシリーズでは2004(平成16)年にレッツ4という2代目のモデルをラインナップさせます。レッツIIの次に出たのが「3」ではなく、「4」なのには理由があり、これは4ストロークモデルだったため。

バイクが「9万9800円」の衝撃…! 「激安のスズキ」の”兄...の画像はこちら >>

2014年発売のシリーズ3代目のレッツG。このモデルが最終形となり、レッツシリーズは2025年に29年の歴史に幕(画像:スズキ)。

 独自の燃料噴射システムを採用した新開発エンジンを搭載し、リッター80kmを実現。また、全長1655mm、全幅605mmというコンパクトな車体で乾燥重量59kgと取り回しも良いモデルでした。もちろんレッツIIを踏襲した9万9800円というコスパの良さも魅力で、相応のヒットに至り、2015(平成27)年の生産終了まで11年間のロングセラーとなりました。

 この間の2007年にフロントカウルを開放式フロントバスケットにするという、初代のコンセプトを踏襲したレッツ4バスケットが発売となったほか、マイナーチェンジモデルのレッツ5が2008(平成20)年に発売。レッツ5もまた従来よりも積載性を高め、さらなる高評価を得ました。

 また、2012(平成24)年にはレッツ4のコンセプトを踏襲した、電動スクーターのe-Let’sが登場。家庭で充電できる着脱式バッテリーを採用し、一度の充電で30kmの走行を可能としましたが、時代が早過ぎたのか発売同年に生産終了となりました。

 レッツ4と併売のカタチで、2014(平成26)年に発売となった3代目モデルのレッツGはより親しみやすい外観になったほか、ミラー、グリップエンド、リヤグリップのメッキ処理やシルバーホイールを採用し、高級感も併せ持つモデルでした。

 レッツシリーズは、このレッツGを最終モデルに2025年で生産終了。ガソリン車のレッツシリーズ全体としては29年の歴史に幕を閉じました。

 ここまでの通り、レッツシリーズは圧倒的なコスパの良さと、使い勝手の良さで、ライトユーザーにとっては申し分のないスクーターだったと言って良いでしょう。ひいてはレッツからバイクユーザーになった人たちも相当数いると思われ、スズキのスクーターブランドの代表の一つになったというわけです。

「チョイノリの兄貴分」としての側面もありますが、その進化は、スズキの多大なる良心があったからこそ。レッツシリーズもチョイノリと並ぶ特別なスクーターのように感じます。

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