神戸市の中心街にあるJR三ノ宮駅。神戸市はある理由から、その「ノ」を取りたいそうです。
神戸市の中心街である三宮(さんのみや)地区。多くの鉄道駅がありますが、JRは「三ノ宮」なのに対し、阪神と阪急は「神戸三宮」、神戸市営地下鉄の西神・山手線は「三宮」、海岸線は「三宮・花時計前」、神戸新交通ポートライナーは「三宮」と、JRにだけ「三宮」に「ノ」が入っています。
JR三ノ宮駅。地名は「三宮」だが、JRの駅名には「ノ」の字が入る(2010年2月、恵 知仁撮影)。神戸市はこの「ノ」を駅名から除くよう、JRに要望しているといいます。その理由を神戸市住宅都市局に聞きました。
――なぜ「ノ」を除きたいのでしょうか。
2015年秋に策定された三宮周辺地区の再整備における基本構想のひとつに、各線の乗り換えについて利便性を向上させる、という点があります。そのなかで、JRの駅だけについている「ノ」を削除し、「三宮」の表記を統一させるねらいがあります。
――そもそもなぜJRの駅名は、地名と異なり「ノ」が入っているのでしょうか?
明確にはわかりませんが、JRになる以前、国鉄のころから「ノ」が入っています(編注:1874(明治7)年の開業時から「ノ」が入っている)。
――「ノ」を除いたうえ、阪神や阪急の駅と同様、頭に「神戸」をつけ「神戸三宮」駅にしたいということも聞きましたが、本当でしょうか?
JRの場合、三ノ宮駅から2駅西に「神戸」駅があり、それとの混同も考えられるので調整を要するところです。
――駅名の変更に向けて、越えねばならないハードルはありますか?
まずは費用面です。駅の路線図を変えていくだけでも膨大な費用がかかるので、駅名変更の費用対効果も、これから検討していかねばなりません。
実際に「ノ」が取れた例もJRに要望して駅名の「ノ」が削除された市があります。神戸市と一部隣接している兵庫県西宮(にしのみや)市です。その理由を西宮市都市局に聞きました。
――JRの駅名からなぜ「ノ」が除かれたのでしょうか?
市名は「西宮」なのに、JRの駅名は「西ノ宮」なので統一したほうがよいと、平成に入ったくらいから市民のあいだや市議会でいわれてきました。2007(平成19)年3月、JRが市内にさくら夙川(しゅくがわ)駅を開業するのに合わせて、そのひと駅となりの「西ノ宮」も「西宮」に変更してもらいました。
――駅名変更にあたっての費用は、大半を自治体が負担することが多いと聞きます。どれくらいの費用を要したのでしょうか?
西宮駅のケースは少し異なるかもしれません。というのは、さくら夙川駅は市で設置を請願したのではなく、JRが単独で整備を希望した駅です。しかし駅ができるのであれば、周辺の道路整備なども必要になってきます。
――駅名変更にあたって苦労した点はありますか?
長年にわたり議論を重ねてきた点です。当初は駅名変更に数億もの費用がかかると予想されましたが、さくら夙川駅の開業によって路線図などが書き換えられるタイミングに合わせて変更したことから、市としてもJRとしても少ない負担で駅名変更が実現したといえます。
※ ※ ※
なお神戸市内では2016年3月、三ノ宮駅と同じJR神戸線(東海道本線)に摩耶駅が開業していますが、神戸市住宅都市局によると、その時点ではまだ検討、調整すべきことが多く、新駅開業に合わせて駅名を「三宮」に変更できる状況ではなかったそうです。
地図で見る三宮地区の駅名
