飛行機へ搭乗する際、預ける手荷物。それが行方不明になってしまわないよう、預かった状態で返却できるよう、現場ではさまざまな工夫が行われていました。

また、預けた手荷物を早く受け取る方法はあるのでしょうか。

ロストバゲージに遭遇した経験

 飛行機に搭乗するとき、空港のカウンターで預ける手荷物(受託手荷物)。それ行方不明になることなどを意味する「ロストバゲージ」という言葉もありますが、無事に手荷物が目的地へ届き、搭乗客の手元へ戻るよう、裏側ではさまざまな工夫が行われています。その様子を、羽田空港の国内線ターミナルでJAL日本航空)に取材しました。

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受託手荷物をコンテナへ積み込む作業(2017年2月、恵 知仁撮影)。

積み間違い防止のために

 JALの羽田空港国内線ターミナルでは、普段はおよそ1万個、繁忙期には2万個といった数の受託手荷物を扱っているそうですが、JALグランドサービスの安田秀明さんによると、ロストバゲージはほとんど発生していないといいます。

 それを実現する工夫は、まず「目視」、そして「コンテナに手荷物リストを貼って積み込む際に照合する」「バーコードで管理する」といった仕組みです。

ロストバゲージどう防ぐ? ターンテーブルでも工夫 JALに聞く飛行機の手荷物管理(写真30枚)

コンテナには便名が大きく掲示されている。
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ハンディースキャナで手荷物のバーコードをチェック。
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ベビーカーや車椅子はコンテナ内の上部に載せる。

 JALグランドサービスの安田さんは、かつて海外でロストバゲージに遭遇したことがあり、「そうしたことは起こらないと思っていましたが、嫌な気持ちになりました」と話します。

 実際に起こりうる、しかし搭乗客にとっては起きなくて当たり前のロストバゲージ。

その任務に携わる安田さんは、ロストバゲージはゼロが当たり前なのではなく、毎日の努力で達成するものという意識で日々、仕事をしているそうです。そこにやりがいも感じるといいます。

 また、搭乗客が飛行機を乗り継ぐ場合は受託手荷物に目印をつけるほか、到着と出発の担当者によるダブルチェック体制を敷いているとのこと。搭乗しなかった人の受託手荷物も、どこにあるかすぐ分かるようになっているそうです。安全を考えると、時間までに搭乗口へ現れなかった人の荷物を載せて飛ぶわけにはいきません。

預けた手荷物、早く受け取る方法はある? ない?

 到着地で、預けた手荷物が早くターンテーブルへ流れてくるようにするには、どうしたらよいのでしょうか。手荷物をどのくらい前に預けたかによって変わるともいわれますが、JALグランドサービスの安田さんによると、同じクラスに搭乗する場合、大きな違いはないそうです。

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コンテナをけん引するトレーラーは小型だが、仕事内容から重量が3tもある。
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コンテナの積載作業。機内で向きが変えられる。
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コンテナの積載作業。機材は『ドラえもん』仕様。

 手荷物をコンテナに積む際、重いものを下にするなど、大小さまざまな手荷物を壊れないよう、バランスを取りながら“パズル”のように入れていきます。預けられた順番に積んでいるわけではありません。

 確実に早くターンテーブルへ流れてくる手荷物は、優先度が高い上級クラスの搭乗客などが預けたものです。そうした手荷物はコンテナへ積むときひとまず横へよけておき、早く出せる場所に入れるほか、乗り継ぎに時間がない人の手荷物は、一般の受託手荷物のコンテナ貨物室ではなく、バルク貨物室へ「バラ積み」し、出しやすいようにするそうです。

 安田さんによると、飛行機が到着してエンジンが停止次第、すぐに作業を開始。10分もかからず、手荷物をターンテーブルへ持っていけるとのこと。またその際、待たせないよう、分割して逐次輸送し、荷物の流れを止めないようにしているといいます。

ターンテーブルへ荷物を流すときの工夫

 到着した受託手荷物をターンテーブルに流す際、取り間違え防止のため、付けられたタグの便名がよく見えるように流す、取りやすいよう取っ手を前にする、適度に間隔を空けるといった工夫をしているそうです。

「海外では『かばん』は『かばん』、汚れるものという意識かもしれませんが、日本は違います。お客様目線で『自分の荷物だったら』ということを考えて行っています」(JALグランドサービス、安田さん)

 雨の日はどうしてもぬれることがあるため、そのときは拭いてからターンテーブルに流されるほか、汚れやすいもの、ヒモがあるリュックサックなど巻き込みやすそうなものは、ビニールがかけられます。

ロストバゲージどう防ぐ? ターンテーブルでも工夫 JALに聞く飛行機の手荷物管理(写真30枚)

到着した受託手荷物をターンテーブルに流す。
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「のれん」の向こうはすぐ手荷物の受取場になっている。

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楽器などを収納するケースも用意されている。

 JALの羽田空港国内線ターミナルでこうした仕事に携わる人はおよそ1500名おり、大まかに、コンテナへ荷物を積むチーム、コンテナを飛行機へ持っていくチーム、ターンテーブルへ持っていく3チームの構成といいます。

 この現場を取材して意外だったのは、力を使う仕事ながら女性が少なくないこと。JALグランドサービスの安田さんによると、チームを組むことで女性でも活躍できる体制がつくられており、およそ10分の1にあたる150人が女性。近年は空港や飛行機が好きな女性の応募が増えているそうです。

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