洞窟のようにも、岩場の裂け目のようにも見えるトンネルが岡山県に存在します。見た目に反してクルマの通行可能なこのトンネル、なぜこのような姿なのでしょうか。

石灰岩でできた渓谷沿いの道に

 のみを使って手堀りされた道路トンネルは全国にありますが、岡山県のある県道には、一見して岩の裂け目のような入口の手掘りトンネルが存在します。

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岡山県高梁市にある県道300号線の羽山第2トンネル(画像:高梁市役所成羽地域局)。

 それは、岡山県道300号線の羽山第2トンネル(高梁市成羽町羽山)です。周辺は羽山渓(はやまけい)という石灰岩質の渓谷で、切り立った岩場の下に、長さ30mほどのトンネルが貫いています。

 県道を管理する岡山県道路整備課によると、トンネルが開通したのは1919(大正8)年といいます。高梁市の教育委員会にその詳細と歴史を聞きました。

――羽山第2トンネルはどのようなトンネルなのでしょうか?

 トンネル付近にある、「穴小屋」と呼ばれる鍾乳洞の一部を利用したトンネルです。

大正時代の難工事で開通した道路、現在は

――トンネルの前後の県道も、崖を削りとったような区間が続きます。もともとどのような道路だったのでしょうか。

 岡山県教育委員会発行の『岡山県の近代化遺産』という本には、銅山がある成羽町の吹屋地区と旧・成羽町の市街地とを結ぶ明治時代の道路を、大正時代に車両が通れるように整備してつくられたと書かれています。また、山の岩盤を「人を上から吊るし、のみでくって(編集部注:掘って)いった」とあり、難工事であったことがうかがえます。

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 同書には、この道路を通じて「木材・薪炭・煙草・コンニャク・雑穀がトンネルを通って積出され、玉島・岡山・高梁などの魚介・食塩、衣類その他日用品などが荷車・荷馬車・自転車で搬入されて、大いに地域住民の生活道路として貢献した」と書かれています。

 高梁市役所成羽地域局によると、現在では「県道300号線に並行して2車線の広域農道が整備されたこともあり、地元の生活道路としてはあまり使われない」そうです。「いまでは、紅葉スポットとして知られる羽山渓を観光する人が使う道路です。トンネルの前でクルマを停めて、穴小屋の鍾乳洞を見学したり、崖でロッククライミングしたりする人もいます」といいます。

【地図】羽山第2トンネルの位置

洞窟か、岩の裂け目か? 岡山県のトンネル、実は一部が鍾乳洞

岡山県高梁市(旧・成羽町)、島木川に沿う県道300号線にある(国土地理院の地図を加工)。

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