高速バスでは、利用者が任意に座席を指定できるものとできないものがあります。バス会社の方針や、システム上の都合にもよるようですが、位置によって料金に差が付く場合も。

どのような違いなのでしょうか。

システム上の都合で可否が分かれる「任意の座席指定」

 高速バスを家族や友人、カップルなどで利用する場合、隣どうしの席になれるかは気になるかもしれません。あるいは、窓側がいい、通路側がいいといった希望もあるでしょう。

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4列シートのバス車内。写真はイメージ(画像:写真AC)。

 ひとえに高速バスといっても、一般の路線バスのように運賃箱を備え比較的短い距離を走るものから、夜行バスのように長距離を走るものまでさまざま。

予約不要で乗車できる自由席のもの、便のみ予約が必要で自由席のものもありますが、多くの場合は、便も座席も指定の「座席指定制」が採られています。この方式ではバス会社で座席を指定される場合と、利用者が任意の座席を指定できる場合があります。以下、本記事でいう「座席指定」は、利用者が任意に座席を指定することを指します。

 座席指定の扱いは、バス会社や路線、予約サイトによっても異なります。指定が一切できないというサイトもあれば、便によって対応の可否が異なったり、料金の決済後でなければ指定できなかったり、確約しないもののあくまで「希望」という形で受け付けていたりするサイトも。バス会社のほうで、一切受け付けていないというケースもあります。

 なぜ対応が異なるのでしょうか。日本バス協会によると、「サービスに対する考え方が各社異なるほか、単に座席指定のシステムが整っていないから受け付けていない、ということもあるでしょう。座席指定に関しては、少なくとも国のほうで規制するようなことはありません」といいます。

 2017年3月に自由席の便を除く高速バス全路線で、インターネット予約時の座席指定が可能になったというしずてつジャストライン(静岡市葵区)は、「当社は自社で予約可能なウェブサイトを持っておらず、路線によって主要な予約サイトが異なります。それらサイトのシステム上、以前から座席指定が可能だった路線もありますが、これまで不可だったサイトでしか販売していなかった路線についても、一部サイトでシステムが整ったことから、全路線が指定可能になりました」といいます。つまり現状、すべてのサイトで全便が座席指定可能というわけではありませんが、路線によってサイトを選べば、全ての便において指定可能になったということです。

なお、同社便では電話予約時の座席指定も全便で可能です。

 座席指定の可否はシステム上の都合も大きいようです。では、同じウェブサイトのなかでも便によって指定可・不可かがわかれるケースには、どのようなちがいがあるのでしょうか。

「4列シートは指定不可」のワケ

 座席指定が可能な予約サイトを自社で持つウィラーは、「座席指定は他社と差別化できる要素のひとつ」といいますが、4列シート(中央の通路を挟んで2列×2列配置)については指定不可にしているそうです。その理由を次のように話します。

「たとえば当社は、4列シートを女性がおひとりで利用される場合、その隣は必ず女性になるようにしているのですが、お客様による座席指定を受け付けてしまうと、それが難しくなるのです。

4列シートの場合は、お客様のご希望や降車地、同伴者の有無に配慮しつつ、運行する側で座席を決めたほうがよいと考えています」(ウィラー)

高速バス、座席指定できる? できない? 会社ごと異なる考え方、ハード面も影響?

ウィラーの3列シート「ラクシア」(2016年9月、中島洋平撮影)。

 では、座席指定が可能な3列、2列シートで特に人気、不人気の場所があるのでしょうか。ウィラーは、「クルマ酔いを心配して前方を好む方もいれば、万が一の安全を考えて後方を好む方もいます。窓側のほうが人気があるかといえば、『寒い』といって通路側を好まれる方もいますので、一概には言えません」といいます。このことから、位置による料金の差異も設定してないそうです。

 一方、「VIPライナー」を運行する平成エンタープライズ(埼玉県富士見市)では、座席の位置によって料金に差異を付けています。

「料金の差は設備のちがいによるものです。電動のゆったりした特別な座席を高く設定するのはもちろんですが、たとえば3列シートで窓側座席に仕切りカーテンがついている場合は、そのぶん窓側を高く、カーテンのない中央列を安くするなどしています。また、バスの設計上、足元が広くとれる、あるいは狭くなる一部の座席についても価格差を付けることで、お客様にご納得いただいています」(平成エンタープライズ)

 なお平成エンタープライズでも、座席指定は自社サイトあるいは自社の電話窓口による予約のみ可能。座席指定ができないサイトでも予約を受け付けていますが、それらサイトでは最低価格の座席しか販売していないといいます。4列シートの座席指定は、一部の便のみ対応しているそうです。

 任意の座席指定はできないとするバス会社でも、「希望は受け付ける」あるいは「お客様の状況に配慮する」といった旨をウェブサイトなどで明記しているケースもあります。

【画像】座席指定OK、位置により料金が異なるバス

高速バス、座席指定できる? できない? 会社ごと異なる考え方、ハード面も影響?

平成エンタープライズが運行する「VIPライナー」予約サイトにおける座席指定画面の例。位置により料金が異なっている(画像:平成エンタープライズ)。