飛行機はときに、外気温がマイナス40度にもなる高度1万m以上を飛びます。機内の温度はどのような仕組みで快適に保たれているのでしょうか。
飛行機はときに1万m以上の高度を飛ぶこともあります。そのような環境では、外気温がマイナス40度にもなりますが、機内をどう温めているのでしょうか。また夏場、地上ではどのように冷やしているのでしょうか。
雲を見下ろす高度約1万mを飛ぶこともある飛行機。機内の空調はどのように提供されているのか。写真はイメージ(石津祐介撮影)。
一般的なエアコンは、室内機と室外機がセットですが、飛行機に室外機のようなものは見当たりません。JAL(日本航空)によると、「飛行中は両翼のエンジンから外気を取り入れ、エアコンに使っています」とのこと。詳しく話を聞きました。
――飛行中の空調はどのような仕組みで提供されているのでしょうか?
一般的なジェットエンジンは、外気を取り込みコンプレッサー(圧縮機)により圧縮空気を作り、燃焼室で燃料と混合し断続的に燃焼させる構造となっていますが、このコンプレッサーで作られた一部の圧縮空気を取り入れ、これを航空機のエアコンシステムに送っています。さらに、エアコンシステム内でこの空気が冷却され、機内に送風される仕組みとなっています。
エンジン停止中の地上ではどうする?――空港でエンジンが停止している場合はどうしているのでしょうか?
いくつかの方法がありますが、一部の航空機では、地上停留用の電力や油圧などの動力源を確保するため、補助動力装置(小さなジェットエンジンのようなもの)が装備されています。
また、空港には「エアコンカー」と呼ばれる空調した空気を航空機に送るための特殊車両が配備されており、この車両からダクトを航空機につなげて、直接空調を行うことも可能です。さらに一部の空港では、地上設備として各スポットに航空機用の空調ダクトが準備されており、それらを航空機につなぐケースもあります。
――たとえばプロペラ機など、機材によって違いはあるのでしょうか?
プロベラ機においても基本的にジェットエンジンと同じ仕組みですが、ボーイング787型機では少し異なっています。エンジンのコンプレッサーで作った圧縮空気を使わず、エアコン専用の電動式コンプレッサーを別に装備し、ここで作り出した圧縮空気をエアコンシステムに送っています。それ以降の仕組みは一般的な航空機と同じです。エンジンからの圧縮空気を使用しない理由は、エンジンの効率を上げるためと言われています。
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ちなみにJALによると、機内の設定温度は基本的に、夏は何度、冬は何度と季節により決まっているわけではなく、機内の状況に応じて変えているとのこと。「たとえば、国際線ではクラスによって座席数が大きく変わることがあるほか、路線によっては、薄着のお客様が多かったり、厚着のお客さまが多かったりします。様々な状況に配慮しながら温度を調整し、お客さまの機内環境の快適性向上に努めています」と話します。
【画像】ジェットエンジンの仕組み

吸気口(左手前)から外気を取り入れ、圧縮、燃焼させ噴流(ジェット)を生成。機内の空気もエンジンから取り入れる(画像:cheskyw/123RF、一部加工)。