東京の地下を貫く首都高の山手トンネルは、一部区間で上り坂と下り坂が連続します。こうした起伏は渋滞の要因にもなりますが、なぜこのような構造なのでしょうか。

起伏の多い区間は、さらに下にあるものが…

 首都高C2中央環状線の西側、5号池袋線から湾岸線にかけての区間は、そのほとんどが山手トンネルで構成されています。

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山手トンネル内回り、中野長者橋付近。左側の青い光は「エスコートライト」と呼ばれる(画像:首都高速道路)。

 全長約18.2kmと日本一長い道路トンネルである山手トンネルは、地上につながる両端部だけでなく、内部も起伏が連続する構造になっています。一般的なトンネルも、排水や換気のため勾配(坂)がついていますが、これとは事情が異なるものです。山手トンネルではこの起伏の上り坂で速度が低下し、中野長者橋付近などでは渋滞が発生することも。なぜこのような構造なのか、首都高速道路に聞きました。

――なぜトンネル内で起伏が連続するのでしょうか?

 山手トンネルの区間は、周辺環境への影響を極力抑えるべくトンネル構造を採用しましたが、地下空間の利用が高度に進んでいる都心部では、地下鉄や地下埋設物と支障することなく路線を計画する必要があります。そのため、現在のような勾配のある路線となりました。

首都高山手トンネル、なぜうねうね? 起伏は渋滞の一因に まっすぐ掘らなかったワケ

山手トンネル縦断図の一部。下を通る都営大江戸線と同じように起伏が連続している(画像:首都高速道路)。

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 山手トンネルの縦断図を見ると、南北方向に貫く山手トンネルが、東西方向に通る多くの地下鉄や川よりも深いところを貫いていますが、西池袋出入口から西新宿JCTにかけては、山手トンネルのさらに下を都営大江戸線が並行していることがわかります(大江戸線の駅間では落合南長崎~西新宿五丁目間)。

この区間では、山手トンネルよりも先に開通した大江戸線のトンネルに合わせるかのように、山手トンネルにも起伏が連続しています。

トンネル内部で40mの高低差も

 山手トンネルについて、さらに首都高速道路に聞きました。

――トンネル本線が最も深くなるところ、浅くなるところはそれぞれどこでしょうか?

 山手トンネルで最も深いところは、大橋JCT~富ヶ谷出入口間の渋目陸橋(地上の山手通りにおいて渋谷区と目黒区の境目にある陸橋)付近で、周辺の地表面からトンネル内の路面位置までの深さは約60mです。対して浅いところは、トンネル両側の出入口を除くと、中野長者橋出入口や五反田出入口付近で約20mになります。

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山手トンネルは大橋JCT付近(地上の山手通りでは渋目陸橋付近)で最も深くなる。図は大橋JCT~大井JCT間開通前のもの(画像:首都高速道路)。

――こうした起伏に起因する渋滞に対し、何か対策はされているのでしょうか?

 現在、内回り中野長者橋付近の上り勾配で、「エスコートライト」を運用しています。これは、路肩側に連続して設置した灯具の光を、進行方向へ流れるように点灯させ、速度低下を防ぐものです。

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 この「エスコートライト」は、ドライバーの無意識の速度低下を、流れる光で誘導して抑制するという視覚効果を利用した渋滞対策です。首都高で最初に導入された3号渋谷線下りの池尻付近では、最大通過台数(1週間のうち最も交通量が多かった5分間の通過台数)が3%向上し、その効果が継続しているといいます。

 ちなみに、2017年3月に開通したK7横浜北線の横浜北トンネル(全長5.9km)にも、途中に起伏が存在します。首都高速道路によると、こちらも山手トンネルと同様、「地下鉄や地下埋設物などと支障することなく路線計画したため」とのこと。

横浜北トンネルは横浜市営地下鉄ブルーラインのほか、高架構造である東海道新幹線や東急東横線などと交わっていますが、ここでいう「地下埋設物」には、高架線の地中に埋まった基礎なども該当します。

【縦断図】首都高最新のトンネルにも起伏

首都高山手トンネル、なぜうねうね? 起伏は渋滞の一因に まっすぐ掘らなかったワケ

K7横浜北線の横浜北トンネル。東海道新幹線や東急東横線などと交わる区間が最も深くなる(2017年2月、中島洋平撮影)。

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