トヨタ自動車の創業家は豊田家ですが、苗字の読みは「トヨダ」です。なぜ社名は「トヨタ自動車」なのでしょうか。

かつては「トヨダ」を使っていたこともありました。

個人名「トヨダ」からあえて離れた

 日本を代表する企業、トヨタ自動車の創業者は豊田喜一郎氏。現社長である章男氏の祖父にあたりますが、どちらも苗字の読みは「トヨダ」です。なぜ社名は「トヨタ」なのでしょうか。

創業家の名字は「トヨダ」 なぜ「トヨタ自動車」なのか 「トヨ...の画像はこちら >>

1936年に発表された「トヨダAA型乗用車」。トヨタ博物館所蔵(画像:トヨタ)。

 じつは、当初は「トヨダ」でした。

 たとえば1936(昭和11)年に発表されたトヨタ史上初の量産型乗用車であるAA型には、アルファベットの「TOYODA」エンブレムが取り付けられていました。当時の販売店の名称も「東京トヨダ自動車販売」、広報誌も「トヨダニュース」であるなど、「トヨダ」がブランド名として使われていたのです。

 2013年に発行された『トヨタ自動車75年史』によると、1936(昭和11)年にカタカナの「トヨタ」を円で囲んだロゴマーク「トヨタ・マーク」が制定されたことで、同年10月から「トヨタ」の表記となったそうです。その理由は、次のように書かれています。

・商業美術的に見て、濁点を付けないほうが、さわやかであり、言葉の調子(音の響き)も良い
・画数が8で縁起が良い
・トヨダ(豊田)という人名から離れることにより、個人的企業から社会的存在への発展の意味を含める

創業家の名字は「トヨダ」 なぜ「トヨタ自動車」なのか 「トヨダ」だったことも

「トヨダAA型乗用車」に刻まれた「TOYODA」のエンブレム(画像:トヨタ)。

 この「トヨタ・マーク」は、トヨタ側が懸賞付きで一般から公募し、全国から集まった2万7000点から選ばれたもの。「トヨタ」にすると総画数が8画となり、「八」は末広がりで縁起がよいことも考慮されたようです。

「トヨタ」市も誕生 一方で「トヨダ」の企業も

 トヨタグループの源流は、豊田佐吉(1867~1930)が発明した自動織機を製造するために設立された豊田自動織機製作所(現・豊田自動織機)です。その自動車部門が1937(昭和12)年に独立して設立されたのがトヨタ自動車工業で、同社がトヨタ自動車の前身にあたります。

 豊田自動織機(愛知県刈谷市)は現在、自動車の組み立てやエンジン、エアコン用コンプレッサーなどの製造を行っています。同社の読みは創業以来、「トヨダ」でしたが、1987(昭和62)年に読みを「トヨタ」に改めたといいます。2001(平成13)年には豊田自動織機製作所から現社名の豊田自動織機に、アルファベットの社名も「TOYOTA」に変更したそうです。そうした動きがある一方、トヨタグループのなかには「トヨダ」を名乗り続けている企業もあります。

創業家の名字は「トヨダ」 なぜ「トヨタ自動車」なのか 「トヨダ」だったことも

1936年から50年以上にわたり使用された「トヨタ・マーク」(画像:トヨタ)。

 ちなみに、戦前にトヨタ自動車工業の拠点が設けられた挙母(ころも)市は1959(昭和34)年、トヨタに由来する豊田(とよた)市に改称。トヨタ自動車工業は1982(昭和57)年にトヨタ自動車販売と合併し、現在のトヨタ自動車が発足しています。戦前から使用された「トヨタ」を円で囲んだ「トヨタ・マーク」は1989(平成元)年に、現在の「T」の字を図案化したマークと「TOYOTA」のロゴタイプへと改められています。

※一部誤字を修正しました(4月12日17時30分)。

【写真】現在の「T」マーク、最初に使われたクルマは

創業家の名字は「トヨダ」 なぜ「トヨタ自動車」なのか 「トヨダ」だったことも

1989年発売の初代「セルシオ」に、現在の「T」を図案化したマークが初めて採用された(画像:トヨタ)。

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