「ポニー」の愛称を持つJR西日本のC56形160号機が、本線運転を終了。“誕生”から79年、地球35周相当を走ってきた蒸気機関車の“人生”に、ひとつの終わりがやって来ました。

「海の上を走った」ことが自慢だといいます。

北海道から九州まで、日本各地を走行

 JR西日本のC56形蒸気機関車160号機が2018年5月27日(日)、本線での運転を――かんたんにいえば、一般的な列車として走ることを終了しました。滋賀県内(北陸本線 米原~木ノ本間)を行く「SL北びわこ号」などで使われたSLで、最後の本線営業運転も、この「SL北びわこ号」でした。

 C56形(シゴロク)は「ポニー」という愛称で親しまれた、小型の旅客・貨物用SL。前後どちらへも実用的に走れる(機関車の向きを変える転車台が不要)、ある程度の長距離を走れる、軽量といった使い勝手の良さがあり、昭和初期には多くの車両がタイやビルマ(現在のミャンマー)へ送られています。

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本線運転から引退し、京都鉄道博物館で花がかけられたC56形160号機(2018年5月27日、恵 知仁撮影)。

 このたび本線から引退したC56形の160号機は1939(昭和14)年、C56形機として最後に製造された車両で、まず北海道、そして九州や関東など日本国内の各地を走行。その後、京都・梅小路を拠点に動態保存(動く状態で保存)されていました。

 そして1995(平成7)年に運転が開始された「SL北びわこ号」を、長年にわたってけん引。“誕生”から今日までの79年で、C56形160号機はおよそ141万km、地球約35周分を走行したそうです。

C56、自慢は「海の上を走ったこと」

 2018年5月27日(日)、C56 160は「SL北びわこ号」として米原~木ノ本間で最後の本線運転を行ったのち、EF65形機関車にけん引され、京都鉄道博物館(梅小路運転区)へ到着。そこで「ありがとうC56 本線運転引退セレモニー」が開催されました。

さよなら79歳のSL「ポニー」 地球を35周走ったC56形160号機、本線から引退

C56形160号機へ掛けられた花。
さよなら79歳のSL「ポニー」 地球を35周走ったC56形160号機、本線から引退

本線引退セレモニーで、汽笛を響かせながら何度も転車台で回転したC56形160号機。
さよなら79歳のSL「ポニー」 地球を35周走ったC56形160号機、本線から引退

セレモニーを終え、京都鉄道博物館の扇形庫へ入ったC56形160号機。

「この30年で一番印象に残っているのは平成10(1998)年、煙をはき海の上を、瀬戸大橋を走ったことで、一番の自慢だとC56 160は言っていました」(JR西日本 近畿統括本部 梅小路運転区 総括助役 長澤浩一さん)

 使い勝手の良さから、「SL北びわこ号」のほか、各地でイベント列車として使われたC56 160。JR西日本 梅小路運転区の長澤浩一さんはセレモニーで、このように擬人化し、その思い出を感慨深そうに語りました。

 C56形160号機は今回、「本線」から引退しましたが、これからは京都鉄道博物館において、SL体験列車「SLスチーム号」のけん引に使われる予定です。また「SL北びわこ号」は今後、大規模修繕ののち2017年に営業運転へ復帰したD51形蒸気機関車200号機(デゴイチ)によるけん引になります。

C56、引退の理由 「楽をさせてあげたい」

 C56形は小型で出力が大きくないため、客車を多く連結し、勾配の多い路線を走ることは苦手です。滋賀県内を走る「SL北びわこ号」はほぼ平坦な場所を走るので大きな問題になりませんが、そうでない山口線で「SLやまぐち号」(新山口~津和野)として走るときは、ディーゼル機関車の助けを借りる、客車の数を少なくするなどの必要がありました。そして、2017年に登場した「SLやまぐち号」用の新型客車35系は5両編成固定で、3両だけで走らせるといったことが難しい車両です。

 そうしたことからJR西日本はC56 160を、パワーのあるデゴイチにバトンタッチさせるとともに、合わせてC56 160をまだ余力のあるうちに本線から引退させ、京都鉄道博物館で動態保存していくとのこと。

 JR西日本 梅小路運転区の長澤浩一さんは、C56 160の本線引退について、さみしい思いがあるものの、C56形の性能を考えると、無理をさせず、「ポニー」という愛称のように、京都鉄道博物館で「SLスチーム号」として楽をさせてあげたい、と話します。

ちなみに長澤さんは中学生時代から全国のSLを追いかけ、写真撮影に没頭していたそうです。

 なお今回の160号機本線引退により、本線で営業運転を行う日本のC56形は大井川鐵道(静岡県)の44号機のみに。静態保存(動かない状態で保存)されているC56形は各地にあり、靖国神社(東京都千代田区)の遊就館にはタイより戻ったC56形31号機が保存されています。

日本各地を走ったC56形160号機

●C56形蒸気機関車160号機
1939(昭和14)年製造(C56形自体は1935〈昭和10〉年から製造)。以下は走行場所と時期の概略。

~1942年:北海道地方
~1943年:中国地方
~1945年:北陸地方
~1953年:中国地方
~1954年:九州地方
~1965年:関東地方
~1972年:甲信越地方
~1972年:能登地方
~現在:梅小路機関区(梅小路運転区)

1995(平成7)年から「SL北びわこ号」などとして走行。そして2018(平成30)年5月27日(日)に本線運転を終了し、今後は京都鉄道博物館で「SLスチーム号」として走る予定。

●京都鉄道博物館
2016年4月にグランドオープン。蒸気機関車から新幹線まで、国内最多の53両を収蔵・展示。本物の蒸気機関車がけん引する「SLスチーム号」を運行。日本の大都市圏で、本物のSLを毎日運行している施設はここだけ。累計入館者数は約250万人(2016年4月29日~2018年4月28日)。

●「SLスチーム号」
京都鉄道博物館内を走るSL列車の名称。2両のトロッコ風客車をSLがけん引し、往復1kmを走る。現在、使用されているSLはC61形2号機(昭和23年製)、C62形2号機(昭和23年製)、8620形8630号機(大正3年製)。

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