都営バス「市01」系統は、築地市場のなかに乗り入れる特殊な路線。市場関係者に配慮したこの路線も、市場の豊洲移転問題に揺れていました。

全長わずか2.5km 「休場日」はもっと短くなる

 都営バスのなかには、大学や病院など、特定の施設内に乗り入れてその輸送を担う系統が存在しますが、そのひとつに「市01」系統があります。築地市場に従事する人や、市場に行く観光客などに向けて設定されている路線です。

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築地市場内で10分ほど停車する「市01」系統。朝7時から8時台は活気がある(風来堂撮影)

「市01」系統は、JR新橋駅の銀座改札を出てすぐにある「新橋駅前」の1番乗り場に発着します。浜離宮、築地五丁目などのバス停を経て、築地市場内にある築地中央市場バス停を経由し、来たのとは違う道で国立がん研究センター前バス停を経て、新橋駅前に戻る循環系統です。

 ほかの都営バスと比べ、この路線ならではの特徴な点もあります。ひとつが時刻表です。通常は「平日」「土曜」「休日」にわかれていますが、この路線は「休日」の代わりに休場日専用の時刻表が別途設けられており、そこにはすべての時刻の上に「コ」という文字が書かれています。これは「国立がん研究センター行き」の頭文字をとったもの。市場が休みの日は場内に入れないので、市場を経由せず、国立がんセンター前を経て新橋駅前に戻ります。なお、日曜・祝日は運休です。

 始発は早朝5時台。

本数が最も多いのは8時台から9時台で、平日だとこの時間帯は1時間あたり10本運行されています。平日の7時52分に新橋駅前を発車する便に乗ってみると、車内にはほのかに魚の匂いが。早朝から何度も循環して市場関係者を運んだ車両なので、その匂いが残っているのでしょう。もっとも、乗客がわずか3人だったところからすると、市場に行く人の多くは都営大江戸線の築地市場駅などを使っているのかもしれません。

 この「市01」は、都営バスの通常運賃を設定している路線のなかでは最も営業距離が短い系統でもあります。新橋駅前から築地市場中央までの距離はせいぜい1.2kmほど、わずか9分ほどで到着です。市場の正門から場内へと進入するバスの周りを、市場関係者のターレットトラックがひっきりなしに走り回ります。10分ほど場内で停車したのち、折り返して新橋駅前へと向かいますが、この帰りのルートを含めて、路線距離は全長2.5kmという短さです。

 なお、この路線では近年までシートがすべてビニール張りの専用車両が使われていました。水濡れや魚の匂い移りがあっても、容易に洗えるようになっていたのですが、現在は通常の布製シートを備えたバスで運行されています。

市場移転の影響を受け再編?

 築地市場は2018年10月6日に市場としての機能を終了し、その5日後の10月11日に豊洲新市場が開場する予定になっています。豊洲移転に際し、この系統は多かれ少なかれなんらかの影響を受けると考えられますが、そのあたりの事情はどうなっているのでしょうか。

 もちろん、都では移転に際してバス路線の再編を視野に入れ、準備を進めています。

「(2018年7月末現在で)具体的なルートはまだ公表できませんが、市場の移転に対応した路線の再編を国に申請中です。これもまだ未確定ですが、『市01』を豊洲市場まで伸ばすような形になるかもしれません。都交通局としての正式な発表は移転のおよそ1か月前になる予定です」(東京都交通局自動車部)。

 観光客などはまだしも、築地あるいは移転後の豊洲新市場で働く人にとっては、交通手段の変化も大きな問題ではないでしょうか。1か月前では遅いのでは、という懸念に対しては、「東京都中央卸売市場という、市場を管理するセクションがあります。市場で働く方々に対しては、そちらから徐々に説明や調整を始めているはずです」(同)ということでした。

魚の香り漂う都バス!? 築地市場への足「市01」系統、豊洲移転でどうなる?

「市01」のバス停には平日、土曜ダイヤのほか休場日のダイヤも記載されている(風来堂撮影)

 いまだ業界からの反発も強く、一筋縄ではいかない市場移転問題。都では東京オリンピック・パラリンピックも見据え、都心部と豊洲を含む臨海副都心を結ぶBRT(Bus Rapid Transit)も計画していますが、こちらも市場移転問題が波及し、現在のところ暗礁に乗り上げています。「新市場の足問題」に留まらない臨海副都心における交通再編の動向に、目が離せません。

記事制作協力:風来堂

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