冬の北海道や東北の空港は、毎日が雪との戦い。円滑な運航を実現するため、空港や飛行機の雪対策も進化しています。
北海道千歳市にある新千歳空港は、1994(平成6)年に国内で初めて24時間運用となった空港。2017年度の乗降客数は、国内線に限れば羽田空港に次いで第2位という規模です。
しかし2016年12月には、大雪の影響で1302便もの欠航が出たこともありました。そうした事態を回避すべく、冬の新千歳空港では日々、除雪部隊が雪と戦っています。
除雪車で斜めに隊列を組んで作業。雪をかきわけるスノープラウは幅6.5mもある(画像:新千歳空港事務所)。
新千歳空港にはAとB、2本の滑走路があります。1日あたり約300便を運航するため、除雪で滑走路を閉鎖する場合でも、必ずどちらか1本は利用できるようにして、空港の機能を止めないようにしているのです。
積雪期には、約90台の除雪車両と約180名のスタッフが除雪体制を整えています。その代表的な車両は、2005(平成17)年度に導入された高性能スノープラウ除雪車。従来のものより2mも大きい幅6.5mのプラウ(雪を押し出す板)で、雪を一気に押し出します。
スノープラウ除雪車にはさらに、高性能スイーパ除雪車が連結され、プラウで除去しきれなかった雪をスイーパ除雪車の回転ブラシでかき出し、送風機で吹き飛ばします。
これら除雪作業車の12列編成で作業を行うことで、全幅60m、長さ3000mの滑走路は、片道走行で除雪が完了します。所要時間はおよそ20分。その後、積雪の深さや路面状況を確認し、滑走路閉鎖から約30分で除雪作業が終了します。
この12列編成による「全幅一方向除雪」は2007(平成19)年から導入されましたが、それ以前は除雪開始から滑走路閉鎖解除まで約50分かかっていたというので、約20分もの時間短縮になっています。
滑走路の除雪だけじゃない! 冬の新千歳を支えるもうひとつのヒミツ冬季の安全な運航を可能にするには、路面の雪を取り除くだけでは不十分。飛行機自体に付着した雪や氷も取り除く必要があります。その作業が「デアイシング」。薬剤を機体に散布し、雪や氷を融かしたり、再び雪が付着するのを防いだりします。
積雪地にある多くの空港において、飛行機はターミナルビル前のエプロン(駐機場)でデアイシングを行ったあと、離陸に向けて滑走路の端へ移動します。
こうした遅延を解消するため、新千歳空港には2010(平成22)年、滑走路近くに国内初のデアイシング専用エプロンが整備されました。デアイシング作業から離陸までの時間を短縮することはもちろん、再デアイシングの際もターミナル前まで戻ることなく作業でき、ターミナル前のエプロンを予定外に使用するという混乱を防ぐこともできます。こうして、遅延を大幅に減らすことが可能になりました。

新千歳空港全景。中央やや上に飛行機の雪や氷を取り除くデアイシングエプロンがある(新千歳空港事務所の画像を加工)。
ちなみに青森空港の除雪隊は、「青森空港除雪隊ホワイトインパルス」と名付けられ、作業見学ツアーなども開催されています。円滑な離発着のための作業が、冬の観光資源のひとつにもなっているのです。
※記事制作協力:風来堂、加藤桐子