バス停への設置を想定した新しいタイプの「縁石」が開発されました。バス乗降口と歩道部の隙間を小さくして、バスのバリアフリー化に貢献するもので、そもそもタイヤの一部を縁石に接触させることを前提としているそうです。
新しいタイプの縁石「バス停バリアレス縁石」が、岡山市の後楽園前バス停に初めて導入され、2019年6月10日(月)から使用が開始されました。ブリヂストンが、横浜国立大学「交通と都市研究室」(中村文彦教授)、公益社団法人 日本交通計画協会、アドヴァンス(新潟市)と共同開発したものです。
縁石にバスのタイヤを一部接触させて停車させるイメージ(画像:ブリヂストン)。
この縁石は、側面を特殊な形状にすることで、バスの乗降口と停留所の隙間を小さくする「正着性」を向上させ、乗降のバリアフリー化に貢献するものだといいます。ブリヂストンに話を聞きました。
――どのような縁石なのでしょうか?
縁石と地面に接する部分が直角ではなく、少し丸みを帯びた形になっており、バスのタイヤが縁石に接触してもタイヤへの影響が緩和されるようになっています。素材はコンクリートとセメントの混合物で、セメント量を多くして耐久性を向上させています。
また、タイヤの接地面には、進行方向に沿って振動用突起と呼ばれる四角い溝が連続的に彫り込まれています。これは、バスをギリギリまで寄せられていることを、ドライバーへ振動で伝えるものです。縁石に車体をどれだけ寄せられているかという感覚が、ドライバーにとってはつかみづらく、それが恐怖心のもとにもなっていました。
――何センチくらいまで寄せられるのでしょうか?
車両の種類や、現地の特性にもよりますが、テストコースではバス乗降口と縁石の隙間を数ミリ単位まで縮めていました。そもそもこの縁石は、タイヤの一部を接触させて停車することを前提としています。
――タイヤメーカーである御社がなぜ縁石を開発したのでしょうか?
当社は、横浜国立大学の「交通と都市研究室」とともに2015年から、縁石にタイヤを一部接触させながらバスを停車させることを目的としたタイヤの共同開発を行ってきたのですが、通常の縁石ではタイヤ側面の摩耗が激しく、縁石自体の改良も必要ということになりました。そこで、このような「正着縁石」の研究を行っていた公益財団法人 日本交通計画協会に2016年から参加いただき、共同研究を進めて完成したのが今回の縁石です。
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「バリアレス縁石」はすでに、日本交通計画協会が開発した小型ノンステップバス(乗降口付近に段差のないバス)の停車を想定したものが新潟市で2017年に実用化されています。今回、岡山で採用されたものは、大型バスにも対応しているのが特徴とのこと。共同研究に関わる各者の知見を集大成したものだといいます。
縁石にタイヤを一部接触させながらバスを停車させることは、すでに海外の一部地域で行われており、車両の仕様を変更することなく乗降口の隙間を縮められることから、日本だけでなく世界中で導入が検討されているそうです。横浜国立大学の中村文彦教授によると、バリアフリー化はもちろん、スムーズな乗降の実現によってバスの停車時間を短縮させることにもつながり、結果として表定速度(停車時間を含めた平均速度)の向上に寄与するそうです。

岡山市内で採用された「バス停バリアレス縁石」。進行方向に溝が連続的に彫り込まれている(画像:ブリヂストン)。
ブリヂストンによると、今回の縁石であれば、通常のタイヤでも側面を接触させることができるといいますが、同社ではさらに耐久性と安全性と高めたタイヤも開発中です。今後、縁石とタイヤを組み合わせた「バリアレス化システム」として様々な場所に展開するとしています。
【動画】「縁石にタイヤを当てて停車」の一部始終