東京メトロがフィリピン運輸省職員を対象に体験研修を実施。シミュレーター運転や非常停止合図器操作などを通じ、運輸省職員は鉄道運行にかかわる業務を体験しました。
東京メトロがフィリピン政府運輸省職員13人を対象に、2019年7月8日(月)から駅業務などの実務体験を実施しています。初日は総合研修訓練センター(東京都江東区)で体験研修を行いました。研修は12日(金)まで続きます。
実車のような揺れまで再現された運転シミュレーター(2019年7月8日、大藤碩哉撮影)。
フィリピン政府は、鉄道事業の効率的な運営や維持管理を目指し、人材育成・監督機関として「フィリピン鉄道訓練センター(PRI ; Philippine Railway Institute)」の設立を決定。東京メトロはJICA(国際協力機構)を通じて、おもに人材育成の分野で支援することになりました。
8日(月)、総合研修訓練センターで報道陣に公開された研修は、車いす利用者への対応、駅ホーム設備紹介、非常停止合図器などの操作、シミュレーターを用いた運転士業務などです。総合研修訓練センターは、線路やトンネル、駅、指令所などが再現され、東京メトロ社員らの研修や訓練に使われています。
車いす利用者の対応については、利用者の視線の高さまで腰を落として案内することなどがレクチャーされました。
非常停止合図器の操作については、「鉄道の運行では、安全は何よりも優先される」ことが説明されました。危険を察知したらためらわず列車を止めるという考え方に、フィリピン運輸省の職員は真剣にうなずいていました。
運転士業務は、加減速などに合わせて車体の揺れも再現されるシミュレーターを使用。通常の運転操作やトラブル対応について、指差喚呼も含め説明されました。
改札で車いす利用者への対応方法について説明。利用者役はフィリピン運輸省職員。
駅ホームの非常停止合図器について説明を受ける運輸省職員。
シミュレーターを用いて運転士の業務を体験。
初日の研修について、フィリピン運輸省のグループリーダー、タシャナ・ドミニク・ヴィヤランテさんは「PRI設立に向けて(東京メトロの総合研修訓練センターは)インスピレーションが湧きました。鉄道分野でフィリピンは、技術などハード面のサポートを日本から受けていますが、教育といったソフト面でのサポートも受けながら、PRIに生かしていきたいです」と抱負を話しました。
また、東京メトロの国際業務部課長、谷坂隆博さんは「特に鉄道利用者へのサービス面の教育をしていきたいです。文化の違いは尊重しつつも、日本式の規律や考え方などを理解してもらい、フィリピンの良い教育システムは残したまま新たな価値観を加える形で行えれば」と話しています。