JALが2019年8月1日より、東京(成田)~グアム線の機材をボーイング777型機に大型化。北朝鮮ミサイル問題で落ち込んでいた日本人のグアム訪問者が回復しつつあるなか、昨年度は「増便」でしたが、今回はなぜ「大型化」なのでしょうか。
2017年、北朝鮮によるアメリカ・グアム島周辺へのミサイル発射計画が懸念されたことから、日本人のグアム訪問者が減少しました。2016年度は約75万人だったものが、2017年度は約62万人、2018年度は約56万人です。
グアム国際空港へ着陸するJALのボーイング777-200ER型機(2019年8月2日、恵 知仁撮影)。
そうしたなか2019年8月1日(木)、JAL(日本航空)の東京(成田)~グアム線が、199席のボーイング767-300ER型機から、312席のボーイング777-200ER型機(312席)に大型化されました(現時点では2020年3月28日までボーイング777-200ER型機で運航予定)。
この大型化初便の成田発グアム行きJL941便は、空席が3席のみと、ほぼ満席。2019年8月の同路線における予約率は、90%を越えているそうです。

居住性が売りというボーイング777-200ER型機のエコノミークラス座席「JAL SKY WIDER」。グアム行きの席には免税店(DFS)の抽選券も用意(2019年8月1日、恵 知仁撮影)。
JALによると、日本人のグアム線需要は元々安定しており、先述のミサイル問題で落ち込んだものの回復傾向にあることから、より多くの座席を供給し、その需要を取り込んでいくねらいが、大型化の背景のひとつとして存在するとのこと。
なお日本とグアムのあいだは、フルサービスキャリアではJALのほかにユナイテッド航空が、LCCではティーウェイ航空とチェジュ航空が結んでいますが、JALグアム支店長の玉崎 徹さんは、同社のグアム便は、エコノミークラスが左側から3列席+4列席+2列席と、家族連れや2人連れなど様々な人数のグループが便利に利用でき、前後間隔も広いゆとりのある座席配置であったり、充実した機内エンターテイメントを持っていたりなど、高い居住性とサービスが強みだと話します。
「需要がある、じゃあ増便だ!」が、必ずしも正解でない理由JALの東京(成田)~グアム線における輸送力強化は昨年度も行われ、臨時便の設定による1日2往復体制になっていました。
このときの輸送力は、199席のボーイング767-300ER型機が1日2往復。

フルフラットになるボーイング777-200ER型機のビジネスクラス「JAL SKY SUITE Ⅲ」。中央の席はペア利用もしやすい(2019年8月1日、恵 知仁撮影)。
しかし、JAL全体が「規模」より「質」を重視する事業戦略であるなか、座席の供給が過剰になり、運賃のディスカウントを考えねばならなくなることは望ましくないでしょう。
成田空港の限られた発着枠を、比較的近距離であるグアム線にふたつ使うこと、それが戦略的に適切なのかという視点もあります。
そうした背景から今回は、ボーイング767-300ER型機からボーイング777-200ER型機へ大型化した、というわけです。JALグアム支店長の玉崎さんによると、臨時便を設定した場合より、利益率は高まっているそうです。

JALグアム支店長の玉崎 徹さん(2019年8月2日、恵 知仁撮影)。
また1日1便ながら、成田を9時40分に出発しグアムへ14時25分到着という、到着日からグアムの夕景、夜を、ゆとりを持って楽しめるダイヤにしているのがポイントとのこと。
なお、ミサイル問題による日本人訪問者の減少について、修学旅行生にはまだ影響が見られるものの、全体としては回復傾向だといいます。