ANAホールディングスが、「ドローン」を使った離島間の物流実験を行っています。舞台は長崎県の五島市福江島。
ANAホールディングス(ANA HD)が2019年9月26日(木)、長崎県五島市とのドローン(小型無人飛行機)を使った離島間物流の実証実験を行い、その様子を報道陣に公開しました。
ドローンを用い、離島間で食料品を輸送する(2019年9月26日、乗りものニュース編集部撮影)。
実験は、11の有人島と52の無人島から構成される五島市の中心部にあたる福江島と、赤島、黄島(おうしま)間での実施です。
赤島は福江島の7km沖に位置し、10世帯(13人)が生活しています。島内に商店はなく、買い物は福江島まで出向くか、1日あたり2便(午前と午後)の定期船で取り寄せるしかないといいます。また水道設備もなく、雨水を貯めて生活しているとのこと。
黄島は福江島の8km沖に位置し、25世帯(35人)が生活。水道があり、商店は1軒のみ置かれているものの、定期船は赤島と同様、1日に2便のみです。
実験は、対象となる住人が、あらかじめ配布された冊子をもとに、お弁当やお寿司などを電話で注文、ドローンで持ってきてもらうという形。電話方式なのは、住人の高齢化も理由のひとつといいます。
使われたドローンは、ACSL(自律制御システム研究所)製「PF-2」を、ANA仕様にカスタマイズしたもの。8月にANA HDが玄海島(福岡市西区)で使った従来の実験機より、安定性が増しているといいます。高度は最大150mまで上昇でき、最大積載重量は1.7kg。従来の機体は0.9kgでした。
なぜANAはドローン事業を進めるのか?ANA HDのドローン事業化プロジェクトリーダーである保理江裕己さんは、ANAグループがドローン事業を積極的に進める理由をこう話します。
「もともとANAは2機のヘリコプターから始まり、そこからプロペラ機、ジェット機、国内線、国際線とモビリティを変えて、空の移動を提供してきました。そうしたなか、いまの時代に即した次のチャレンジは『ドローン』や『空飛ぶクルマ』と考え、2016年にドローンプロジェクトを立ち上げました」

左側がANA HDの保理江裕己プロジェクトリーダー(2019年9月26日、乗りものニュース編集部撮影)。
航空法が、2018年に「承認を取得すれば、見えないところまで監視者なしでドローンを飛ばしてもよい」と変わったことをきっかけに、不便な地域へモノを届けられないかと考え、実験を進めてきたというANAグループ。玄海島に続き福江島で実験した理由についてANA HDの保理江さんは、「福江島はANAグループが路線を就航させていることもあり、将来的に空港との連接も視野に入れながら『まずできること』として、プロジェクトに参加しようと考えたのです」と話します。
ちなみにこのたび注文された商品について、保理江さんによると、「意外とお寿司のニーズが高いのです」とのこと。赤島には、ちらし寿司とマーガリン。黄島には、まぐろのたたき巻きが届けられました。
この実験には、NTTドコモとプロダクションナップ(長崎市)も協力。五島市は、将来的に市内離島部でドローン物流の実用化を目指しているといい、発注から受け取りまでの仕組みの検討、市内でドローン物流オペレーションを担う人材の育成を計画しているといいます。