大阪~志布志(鹿児島)間のフェリー「さんふらわあ きりしま」が、ジャパン マリンユナイテッド因島工場へドック入り。普段は水面下の二重反転プロペラ、フィンスタビライザー、バルバス・バウといった特徴的構造が眼前に現れました。
2019年10月、フェリー「さんふらわあ きりしま」の巨体が“上陸”しました。
場所は、瀬戸内海に面した広島県尾道市のジャパン マリンユナイテッド(JMU)因島(いんのしま)工場。2018年9月に同名船の2代目として大阪~志布志(鹿児島)航路へ就航して以来、初となる「ドック入り(入渠)」しての大掛かりな検査・補修を実施するため、因島へやって来たものです。
陸に上がった「さんふらわあ きりしま」(2019年10月、恵 知仁撮影)。
「さんふらわあ きりしま」が入渠(にゅうきょ)したのは、JMU因島工場にある3つのドックのうち、長さ260m、幅56.76m、深さ8.54mと最も大きな「3号ドック」。水のないそのドックに、全長192m、幅27m、1万3500総トンで旅客定員709名、大型トラック121台&乗用車140台を積載可能という「さんふらわあ きりしま」が、すっぽりと収まっています。
ドックの上から見るその姿も、普段見かけるフェリーとは大きく違う姿で、インパクトがありましたが、10mほど下になるドックの底へ降りると、その衝撃はさらにアップ。普段は見えない船の喫水線から下の部分が丸裸で、眼前に“そびえる”巨体を前に、しばし口を半開きにして見上げてしまいました。
ちなみにその船内は、1階から8階まであります。
ドックの底にいた魚ドックの底へ降りたとき、ちらほら小魚がいることに気づきました。
入渠は、海水で満たされたドックへ海から船を入れたのち、ドックと海を“壁”で仕切って、ドック内からポンプで海水を排出して行います。小魚はこのとき入り込んでしまったもの。

JMUの因島工場に入渠した「さんふらわあ きりしま」(2019年10月、恵 知仁撮影)。
なおJMUの因島工場は、おもに船舶の修理をしている場所で、波が穏やか、四季を通して温和な気候、降水量が少ないと、船舶の修理工場としては理想的な立地とのこと。こうしたフェリーのほか貨物船、海上自衛隊の護衛艦なども、メンテナンスなどのため入渠するそうです。
ちなみに、この「さんふらわあ きりしま」は、横浜市にあるJMUの磯子工場で建造されました。
二重反転プロペラ、フィンスタビライザー、バルバス・バウ! 水面下の力持ちドックの底に降りると、普段は見られないものが色々ありました。
まず、プロペラがふたつ重なっているスクリュー。「二重反転プロペラ」といい、船首側のプロペラだけをエンジンの力で駆動。それによる水流を受けて、船尾側のプロペラが船首側とは逆の方向に回転し、高い推進力を効率的に得られる燃費の良い仕組みだそうです。

船体下部手前側が「フィンスタビライザー」。奥にあるヒレ状のものも横揺れを抑える「ビルジキール」(2019年10月、恵 知仁撮影)。
そして、魚のヒレのような「フィンスタビライザー」。
船首側へ回ると、船体から前に突き出た巨大な“顎”に目が奪われます。「バルバス・バウ」という構造で、かんたんにいえば船が水をかき分けて進むときの抵抗(造波抵抗)を小さくし、速度アップや燃費改善の効果があるそうです。
手作業で塗られていく巨大な「さんふらわあ」船体の塗装作業も行われていました。作業員が上下左右に動くアームの先端に立ち、スピーディーに塗料を巨体へ吹き付けていきます。塗装は全て手作業で行っているそうです。なおフェリーさんふらわあでは毎年、船体を塗り直しているとのこと。
ちなみに、このようにドック入りした場合、まず船体を洗い流すそうですが、フェリーは洗う前の船体が比較的きれいだそうです。普段の停泊時間が短く、藻や貝が付着しにくいからで、逆に作業船などは洗浄に手間を要することがあるといいます。

手作業で塗られていく「さんふらわあ きりしま」(2019年10月、恵 知仁撮影)。
船内でも並行してメンテナンスが進められており、メインエンジンでは、ピストンを抜いて付着したカーボンを除去する作業などが行われていました。シリンダーに人が入れそうなほど巨大なV型12気筒のディーゼルエンジンで、出力は8830kw。
「さんふらわあ きりしま」はメンテナンスを終え、2019年10月27日(日)から再び大阪~志布志(鹿児島)航路へ就航しました。
ちなみに、大阪~志布志(鹿児島)間の所要時間は約15時間。その客室は多くが個室タイプで、展望大浴場やシャワー、レストランなども備えられています。