紛争地帯をゆくPKOの車両は全て白色に塗装されていますが、そうした場所で目立つのは危険なのではないでしょうか。なぜ白なのか国連広報センターなどに聞いたところ、むしろ目立たせているのかも、とか。

どういうことでしょうか。

戦場で白といえば意味のある色だけれど…?

 ニュース番組などで耳にする「PKO」という言葉。「国連平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations)」の略称で、紛争地帯などの平和の維持を図る手段として、国際連合の加盟国のなかから小規模の軍隊を編成し、派遣するという活動です。さて、ここで気になることがひとつあります。なぜか同活動で使用する車両は、決まって白色で塗装されているのです。いったいどういう狙いで白色なのでしょう。

PKOのクルマはなぜ白い? 国連平和維持活動の部隊車両 紛争...の画像はこちら >>

2013年、南スーダンでPKO活動に従事する陸上自衛隊の車両(画像:陸上自衛隊)。

 なまじ、「多国籍軍」と混同されることが多いので、PKOに関する説明をすると、紛争が発生していた地域において、その当事者間にある程度の停戦合意が成立した後、再びいざこざが発生し、紛争が再開されることを防ぐのがおもな役割です。全ての任務は安保理決議などに基づいて行われます。国連の統括下に入らず、特定の陣営に加担して戦闘に介入することができる多国籍軍とは、その点で違うのです。

 白色の塗装をほどこし、現地に派遣される車両は、装甲兵員輸送車や物資輸送用のトラック、復興支援活動用の重機などです。なお、火器は現地の人々を刺激しないように最低限です。

創作物に登場する架空の国連軍では、戦車も白く塗装されているイメージがありますが、実際のところ基本的には戦車を派遣しません。戦闘に参加するのが目的ではないからです。

 この「戦闘に参加するのが目的ではない」というところが重要です。最近は紛争に臨機応変に対応できるようにと、PKOも変質しつつありますが、それでも戦闘を積極的にすることはないです。

 ちなみに「ハーグ陸戦条約」において、敵対勢力との交渉にあたる「軍使」は、白旗を掲げて行動します。こうすると武器を携行していても、攻撃の対象にはならないからです。PKOの車両の白色にも、似たような意味があるのでしょうか。

国連広報センターに話を聞いてみたけれど…

 ちゃんとした理由を聞くために、国連広報センターに確認してみると、担当者からは「実は広報センターには、車両の白色塗装がいつから始まったのか、その理由を明記した資料がありません」という回答でした。

 ただ、「敵意はないということの表明のために、あえて目立つ白色塗装で、UN(国際連合の略称)と大書表記する形が、昔から通例になっています」とも。紛争地帯では目立つ色の方が安全なのだそうです。逆に迷彩などをほどこした車両だと、紛争地帯の勢力にターゲットと誤認されるケースもあるとのこと。

 担当者には「アメリカの国際連合本部には資料が存在しているかも」という話も聞きました。

しかし、第1回の派遣(当時は国際連合休戦監視機構)が1948(昭和23)年5月の第一次中東戦争停戦後ということで、70年以上経過しており、仮に資料があったとしても明確に説明できる人がいる可能性は低そうです。

ならば内閣府の国際平和事務局へ

 国内ではPKOの活動に最も関わっている組織のひとつである、内閣府の国際平和事務局にも問い合わせみましたが、その担当者からも「平和維持活動をする際は、そういう(白塗装にする)決まりになっていますが、明確な理由が記載された資料はありません」という答えでした。

 少なくとも日本の自衛隊が参加するようになった1992(平成4)年には、参加した隊員の服装は自国の軍服にブルーのベレー帽かブルーのヘルメットを装着し、車両は白色に塗装されることが、すでに通例になっていたそうです。理由は「やはり目立つからでは?」と担当者は話していました。

 国内でPKOに関わっている機関にも明確な資料がないことは意外でしたが、誤って襲撃されることを防ぐために、あえて目立つために白色塗装にしていることは、ほぼ確かなようです。おもな任務が紛争の調停や人道支援にあるとはいえ、危険な地域で活動するのには、色々と準備や配慮が必要なんですね。

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