クルマだと夏はノーマル、冬はスタッドレスと季節でタイヤを使い分けることが一般的ですが、飛行機は1年を通して同じ型を使っています。もちろん、安全には影響ありません。
冬、寒冷地ではクルマのタイヤをノーマルタイヤ(夏タイヤ)からスタッドレスタイヤ(冬タイヤ)へ履き替えるのが一般的ですが、実は飛行機は1年を通して同じ型のものを使います。
2019年現在、航空会社で就航している飛行機のタイヤは、クルマのオールシーズンタイヤのように、表面がデコボコしているわけではありません。縦方向に溝が走っていますが、クルマとくらべると、滑らかな表面をしています。なぜそれでも大丈夫なのでしょうか。
雪の中に駐機するANAボーイング747型機(画像:ANA)。
とある大手航空会社のパイロットに聞いたところ、着陸時には空気の流れをさまたげる(スポイルする)ことで減速する「スポイラー」とエンジンの噴射方向を変える「リバーサー(逆噴射装置)」で速度を落とすのが一般的で、ブレーキ以外に減速の手段があるため、タイヤを変えなくても問題はないそうです。また、クルマの何十倍もある飛行機の重さもグリップ力を高める助けになっていると話します。
また飛行機が高速走行するのが滑走路などまっすぐな場所であることも、タイヤの変更なく離着陸できる要因です。ちなみに縦に刻まれている溝は、高速走行時横にブレるのを抑えるためとのことです。また、タイヤだけでなく、滑走路も横に溝が刻まれており、これもブレを抑えるサポートをしています。
しかし誘導路などで横に曲がるときなどは、横滑りを起こす可能性はあるため、ほかの季節とくらべて飛行機は、速度を落として走ります。
加えて空港の除雪体制が整っているのも、タイヤを変えずに済む理由です。
豪雪地帯にある空港では、設備の雪対策も充実しています。たとえば新千歳空港は、数種類の除雪車があわせて80台以上あり、24時間体制で滑走路、誘導路、駐機場などを除雪しているそうです。これらの車両は原則、スタッドレスのタイヤを履いています。
なお滑走路はたとえ除雪が完了していても、路面の摩擦係数が所定の基準を満たさない場合や、横風が強い場合などは、離着陸することができません。

フライト前の機体に防徐雪氷液を散布している様子(画像:関東化学工業)。
ちなみに、冬の飛行機にとってタイヤの横滑りより厄介で危険なのが、翼についた氷によって翼の形状が変わってしまい、離陸に十分な揚力を得られないことです。これを避けるため、フライト直前の飛行機は、翼についた雪を除き新たな着氷を防ぐ防徐雪氷液が散布されます。直前に行われるのは、防徐雪氷液の効果があるうちに上空に出るためです。
飛行機用防徐雪氷液「キルフロスト」を、稚内空港(北海道)など国内半数以上の空港に提供している関東化学工業によると、製品による差はあるものの、防徐雪氷液の効果が持続する時間は、もっとも厳しい条件(マイナス25度以下、雪のコンディションが水っぽい場合)で30分から40分、緩い条件(マイナス3度以上、雪が硬い場合)で2時間から2時間半だそうです。