曲面形状の鋳造砲塔が特徴の74式戦車は、総生産数873両のなかで、ごくわずかしか作られなかったタイプがあります。74式戦車G型、通称「74式戦車(改)」と呼ばれるものです。

74式戦車に90式戦車のエッセンスを注入

 陸上自衛隊がこれまで保有してきた戦車で、最も多く導入されたのが74式戦車です。1974(昭和49)年度から合計で873両生産されましたが、そのなかでわずか4両という、1990年代初頭に原型から改修された極めて希少なタイプがあります。74式戦車G型、通称「74式戦車(改)」といい、一部、90式戦車と同等の装備も搭載していました。

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わずか4両しか存在しなかった74式戦車G型、通称74式戦車(改)。2019年3月にすべて退役している(柘植優介撮影)。

 74式戦車(改)は通常の74式戦車と比べ、外見はさほど変化していません。比較的違いがわかりやすいのは車体後部にある起動輪(駆動輪)でしょう。

「起動輪」とは、エンジン出力を履帯(いわゆるキャタピラ)に伝えこれを回すために、ギザギザの歯が付いた形状をしており、74式戦車(改)はその外側に履帯の脱落防止用リングを取り付けています。74式戦車は足回りの構造上、のちの90式戦車や10式戦車よりも履帯が外れやすい欠点があり、これを補うためのものです。

 次にわかりやすいのは、砲塔上面前方に設置されたレーザー検知装置でしょう。これは敵の戦車や対戦車ミサイルが、射撃する際に照射する照準用レーザーを検知するセンサーで、90式戦車に初めて搭載されたものです。検知した瞬間、車内で警報が鳴り、発煙弾を自動的に発射して自車の姿を隠します。


 履帯脱落防止リングとレーザー検知装置は原型にはないもののため、74式戦車(改)のわかりやすい識別ポイントです。

よく見ると細かく異なる74式戦車(改)

 このほかにも74式戦車(改)には、通常の74式戦車と外見上、違う点がいくつかあります。

 たとえば砲塔左前方、主砲脇に配置された箱状のものは、原型の74式戦車においては赤外線と白色光の切り替えが可能な大型投光器(サーチライト)でしたが、74式戦車(改)のものは90式戦車と同じく、熱を感知し可視化するパッシブ式赤外線暗視装置で、大きさや前面形状が異なっています。

陸自「74式戦車(改)」を知っているか わずか4両のレア戦車 90式戦車レベルの装備も

「74式戦車」(奥)と「74式戦車(改)」の比較。橙丸が履帯脱落防止リングの有無、赤丸が暗視装置の差異、青丸がサイドスカートの取付台座(柘植優介撮影)。

 また74式戦車(改)には、車体の左右側面に足回りを覆う「サイドスカート」を取り付けるための台座が増設されています。ただ、サイドスカートを実際に装着することはなかったようで、試作時の写真にその姿が見られる程度です。

 外見からわからない差異としては、射撃統制装置(FCS)が高性能な改良型になり、射撃時に目標との距離を測るためのレーザー測距儀(距離計)が、74式戦車(改)では90式戦車に準じた、より強力なものに更新されている点が挙げられます。

 このように、一部において90式戦車と同等の性能を持つ74式戦車(改)でしたが、量産改修は4両で終了します。1991(平成3)年にソ連が崩壊したことが影響したものと見られます。

 これにより改修された4両の74式戦車(改)はすべて、教育部隊のみで運用され、2019年3月末に退役しました。なお1両が、駒門駐屯地で保存展示されています。

 74式戦車(改)の性能は決して悪くなかったそうなので、数年早く開発と予算計上が行われていたら、より多くの車体が改修され、もう少し長く現役であり続けたかもしれません。

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