自動車ローンの支払いが遅延すると、エンジンが停止しクルマが動かなくなるという新しい金融商品を、複数の銀行が導入しています。ローンが組めなかった人への融資を可能にしたこの仕組み、新型コロナが広がるなか、注目されています。
岐阜県の大垣共立銀行が2020年3月、「<頑張る人応援ローン>マイカーローンX(エックス)」と称する新しい自動車ローンの取り扱いを始めました。同行はこのローンについて、「真面目に働くために自動車が必要であるにも関わらず、これまで様々な理由から金融サービスを受けることができなかったお客さま」に向けたものとしており、これまで自動車ローンを組めなかった人にも融資ができるものといいます。
ただし、いくつかの条件があり、その最も大きなものが、「車両にエンジンの遠隔制御装置を取り付ける」というものです。毎月の返済を延滞するなどすると、遠隔でエンジンの起動停止措置がなされ、クルマが動かなくなります。支払われると、1、2営業日で解除されるとのことです。
支払いが滞るとエンジンがかからなくなるという自動車ローンの導入が広がっている。写真はイメージ(画像:Sergey Soldatov/123RF)。
これは、グローバルモビリティーサービス(東京都港区、以下GMS)が開発した「MCCS」と呼ばれる装置を活用したもので、同社はこの装置と金融サービスとを組み合わせた事業モデルを、まずフィリピンやインドネシアなど東南アジア で展開しました。日本ではこれまで広島銀行や、山口県の西京銀行などでも導入されています。GMSに同サービスについて聞きました。
――なぜこのような仕組みを開発したのでしょうか?
融資を受けたい人の「過去」ではなく、「いま」を評価する仕組みです。審査は金融機関によっても異なりますが、たとえば自己破産したり、シングルマザーになって世帯年収が低くなってしまったり、消費者金融で借りて履歴が残っていたりするような人たちは、一般的にローンを組めません。
――地方銀行のサービスとして多く採用されているのは、なぜでしょうか?
クルマの重要度が都市部とは違うからです。地方では電車やバスがなく、工場に勤めたいのにクルマがないから勤められない、という方もいらっしゃいます。
――踏み倒されるようなことはないのでしょうか?
99%の方がしっかりと返済されています。というのも、エンジンが停止しても、お金が払われればすぐにエンジンがかかる、という点がミソだと思っています。日本では余裕を持って「支払いから1、2営業日で起動停止解除」としていますが、フィリピンなどでは「MCCS」と決済システムが連携していて、支払いから数秒での解除も可能です。動かない期間が長くなるほど、返済のモチベーションも下がってくるのかな、と思っています。
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GMSでは銀行以外の機関とも連携し、全国の窓口を通じて「MCCS」を使ったローンの仲介をしていますが、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、問い合わせが増えているといいます。それまでの仕事が継続困難になり、「ウーバーイーツ」や「アマゾンフレックス」といったサービスの配送スタッフに登録したり、個人事業主として宅配業を新たに始めたりする人が増えているからだそうです。
「実績のない個人事業主でも自動車ローンを組めます。四輪車だけでなく二輪車、原付などでも可能です」(GMS)
フィリピンやインドネシアでは、いわゆるライドシェア(相乗り)サービスを始める人にも多く利用されているといいます。
なおこのサービスは、業務や通勤などでクルマを必要とする人が対象で、クルマのおもな用途が余暇やレジャーという人は利用できないとのこと。