古今東西、海上自衛隊の自衛艦を含む各国軍の艦艇は、戦車や戦闘機などと違い、大量生産された艦型であっても個々に艦名が付けられます。自然や地域名、人名など多種多様ななかで、世界最短と世界最長の艦名に注目しました。

「まや」よりも「おおい」の方が短い理由

 2020年3月19日、海上自衛隊最新のイージス護衛艦「まや」が就役しました。「まや」は兵庫県にある摩耶山にちなんでおり、その艦名は旧日本海軍で使われた砲艦「摩耶」、重巡洋艦「摩耶」に続いて3代目になります

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旧日本海軍軽巡洋艦の「大井」。1921年10月に就役し、太平洋戦争中の1944年7月に沈んでいる(画像:アメリカ海軍)。

「摩耶」および「まや」の艦名は、日本語表記では2文字であり、ほかの艦艇などの名前と比べて短く感じます。しかし、「まや」と同じく旧日本海軍の軍艦や海上自衛隊の護衛艦に用いられた「大井」ならびに「おおい」のほうが、世界で最も短い艦名といわれています。

「まや」と比べると、日本語表記では「おおい」の方が1文字多くなりますが、アルファベット表記にすると一転、「Maya」に対し「Oi」となります。「おおい」が母音のみの表記だからこそですが、これが世界で最も短い艦名といわれるゆえんです。

 逆に、第2次世界大戦中の艦名で最長というと、イタリア海軍にありました。その長さはアルファベットの数で「おおい(Oi)」と比べると、実に15倍近くにもなります。

公文書でも略式名称が使われる軍艦とは

 第2次世界大戦中の艦名で、世界で最も長いといわれているのが、イタリアの軽巡洋艦「ルイージ・ディ・サヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ」です。

艦艇の名前長短 世界最短はアルファベット2文字の日本艦

イタリア海軍の軽巡洋艦「ルイージ・ディ・サヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ」。1937年に就役、1961年に除籍(画像:アメリカ海軍)。

 カタカナ表記でも中黒(なかぐろ)を除いて24字、母国語で表すと「Luigi di Savoia Duca degli Abruzzi」と、アルファベットで29字になります。さすがにイタリア海軍も長いと判断しているようで、公式文書やWEBサイトなどでは「ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ」と、後半部分のみの表記に留めています。

「ドゥーカ(Duca)」とは、英語で「Duke」、つまり公爵を意味し、「デッリ(degli)」は英語の「of the」にあたる言葉です。よって、「ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ」で「アブルッツィ公爵」となります。

 艦名の由来になったイタリアのアブルッツィ公ルイージは、登山家としても高名なイタリアの王族で、1933(昭和8)年3月18日に外遊中のソマリアで客死しました。そのことを悼み、同年12月28日に起工した新型の軽巡洋艦に名前が用いられました。

 ちなみに同艦は1番艦のため、クラス名としても「ルイージ・ディ・サヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ級軽巡洋艦」と表記されます。2番艦は「ジュゼッペ・ガリバルディ」という艦名で、1番艦と比べると半分以下の短さの名前です。

※一部修正しました(5月14日8時45分)。

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