トヨタの次世代タクシー車両「JPNタクシー」は、タクシー以外の用途でも使われているのでしょうか。法人の営業車や、個人での購入も可能ではあるものの、実際、導入するには大きな壁があるようです。
トヨタの次世代タクシー車両「JPNタクシー」は2017年に発売され、タクシー業界では2020年現在、従来車両からの置き換えが進んでいます。
背の高いハッチバック型の車両は、従来のセダン型車両と比べて室内空間が広く快適性は向上し、「乗りものニュース」が2020年5月に実施した読者アンケートでは、「マイカーとしても欲しいくらい」といった意見も聞かれました。
この車両は個人で購入することも可能で、インターネット上でも目撃例が散見されます。タクシーすなわち事業用車両としてではなく、個人のマイカー、あるいは法人の営業車などの自家用車両として導入されるケース、実際にはどれくらいあるのでしょうか。
「JPNタクシー」(2017年10月、乗りものニュース編集部撮影)。
販売店であるトヨタモビリティ東京によると、タクシー以外の用途での「JPNタクシー」の購入は、現在のところ「あるにはあるものの、ほんの数例」という程度だそうです。
「最大のネックになるのは、ガソリンではなくLPG(液化石油ガス)を燃料とする点です(動力はLPGと電気のハイブリッド)。まれに個人のお客様からのお問い合わせがあっても、この話をすると、たいてい断念されますね」(トヨタモビリティ東京)
タクシーが走っている地域であれば、LPGスタンドはたいてい存在するので、たとえばタクシードライバーを定年退職した人が、「乗り慣れたクルマに乗りたいし、LPGスタンドにも慣れている」ということで、「JPNタクシー」に限らずタクシー専用車を購入するケースは確かにあるそうです。しかし、個人への販売を行っているスタンドと、そうでないスタンドもあるといいます。
車両価格は330万円以上 割引は?加えて、「JPNタクシー」の車両価格は330万円以上と、同クラスの乗用車や商用車と比べて高く設定されています。法人による複数台購入などで割引があるのでは、と聞いたところ、タクシー事業者に対しては国の助成金があるものの、それが使えない一般企業へのメリットは小さい、とのこと。また、やはりLPG燃料である点もネックだそうです。
「もし法人で購入するケースがあるとすれば、自前でLPGの供給設備をお持ちの企業ではないでしょうか。このほかのメリットとしては、車いすを直接車内へ載せられる点がありますが、その用途であれば、豊富にラインアップされているウェルキャブ(福祉車両)から選ばれるでしょう」(トヨタモビリティ東京)
「JPNタクシー」の車両価格は、後部座席を温めるシートヒーターや独立空調、手元を照らす読書灯など、タクシーとして快適性を高める数々の機能も反映されています。前出のとおりタクシー以外の用途でも購入可能ではあるものの、やはり「タクシー専用車」と言えそうです。