長く使われるということは、その航空機の信頼性が高いことの証明でもあります。ただ、いくら何でも長く使いすぎだろうという機体もいくつか存在します。

そのなかでも特に目立って長寿な機をピックアップしました。

様々な事情で長年配備されている機体たち

 愛着のあるものを長年使い続けるということは誰でもあるかと思いますが、これが公共機関となると話が違います。常に新しいものに刷新していかないと業務に支障をきたします。

 ところが軍隊ではたまに、代わるものがない、あるいはコストパフォーマンス上の理由などから、何十年も配備され続ける装備品があります。そのような、長持ちすぎる軍用機を5つ挙げていきます。

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An-2輸送機。NATOコードネームは「コルト(小馬)」(画像:アメリカ空軍)。

当時の基準から考えても古めかしい作りだった「アントノフ An-2」

 1947(昭和22)年にソ連のアントノフ設計局が開発したAn-2は、複葉機に星形レシプロ(ピストン)エンジンという、当時の基準から考えても古めかしいデザインの輸送機でした。しかし堅実な設計ということで故障も少なく、レーダーに映りにくい断面を持つという特徴から重宝され、2020年現在もロシアで空挺降下の訓練などに使用されるほか、北朝鮮ではまだ実戦部隊に配備されているとの噂もあります。

 民間向けの、農作業や地質調査に使用されている機体も多く、現在ウクライナで航空機の製造を行っている、アントノフ設計局を前身とするO・K・アントーノウ記念航空科学技術複合体の原点ともいえる機体です。設計を担当したオレグ・アントノフ自身も「私の最大の成功」との言葉を残しています。

ついに親子3代で乗る機体になってしまった「B-52」

 旅客機でも知られるボーイングが設計し、1955(昭和30)年に運用を開始したB-52戦略爆撃機は「成層圏の要塞(ストラトフォートレス)」の異名と共に、冷戦期アメリカの攻撃力を象徴する機体でした。

長持ちすぎる軍用機5選 2020年に現役のレシプロ複葉機や日本仕様「ファントムII」ほか

B-52「ストラトフォートレス」戦略爆撃機(画像:アメリカ空軍)。

 元々はソ連及びその衛星国家を、開戦と同時に核攻撃するための戦略爆撃機でしたが、その役目をミサイルに譲ったあとも、圧倒的な搭載量や堅実な設計を強みに、通常爆弾の搭載量増加や、巡航ミサイルの発射機能を備えるなど、複数回の改修を経て時代の変化にも高い適応性を発揮しています。

 アメリカ空軍は2045年まで同機を運用する予定で、すでに親子3代でB-52乗りという人もいるようです。

長い運用歴の割に初陣は最近の「Tu-95」

 旧東側陣営でB-52に相当するのが、ソ連のツポレフ設計局によって開発されたTu-95戦略爆撃機です。1956(昭和31)年運用開始で、二重反転プロペラのターボプロップエンジンが特徴です。西側では「ベア」のコードネームで知られ、たびたび日本周辺にも姿を現し、配備から60年以上経過した現在でも、スクランブルで上がった航空自衛隊機に写真を撮影されています。

長持ちすぎる軍用機5選 2020年に現役のレシプロ複葉機や日本仕様「ファントムII」ほか

Tu-95戦略爆撃機。NATOコードネームは「ベア(熊)」(画像:統合幕僚監部)。

 ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争と様々な戦場を経験したB-52と違い、Tu-95が初めて戦場に投入されたのは、意外なことに2015(平成27)年と、わりと最近のことです。シリア内戦でアサド政権軍を支援するため、巡航ミサイル攻撃を行いました。

 なお、ロシア政府および当時の旧ソ連政府が公表していないだけで、1980年代のアフガニスタン紛争や1990年代のチェチェン紛争にも投入されていたという噂もあります。

日本で長く運用された機体といえばこれ「F-4EJ改 ファントムII」

 日本の自衛隊にも長持ちな機体があります。

とはいっても2020年度に退役予定ですので、正確には「ありました」が適切でしょうか。F-4EJ改「ファントムII」の原型は、1966(昭和41)年にF-86Fの後継機種として導入された、F-4Eの日本向けモデルF-4EJです。

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F-4EJ改「ファントムII」戦闘機 特別塗装機(画像:航空自衛隊百里基地)。

 なお、同機の元であるF-4Eを運用していたアメリカ軍では、1990年代には現役を退いていて、日米の共同訓練では「まだ飛んでいるのか」と驚くパイロットもいたそうです。

 最後の配備部隊となった百里基地の第301飛行隊は、2020年4月15日、最後の記念塗装機になるF-4EJ改を公開しましたが、新型コロナウィルス感染対策の観点から、事態が収束するまでは公式の投稿画像で楽しんで欲しいと呼びかけています。

A-10の前にA-10なくA-10のあとにA-10なし というわけで働き続ける「A-10」

 対地攻撃機の長寿機として知られるのが、アメリカ軍のA-10「サンダーボルトII」です。1977(昭和52)年の配備以来、様々な戦場へ対地攻撃のために姿を現しています。

長持ちすぎる軍用機5選 2020年に現役のレシプロ複葉機や日本仕様「ファントムII」ほか

A-10「サンダーボルトII」攻撃機(画像:アメリカ空軍)。

 運用コストの高さから、たびたび後継機の話や退役の話も出ており、ついに2015(平成27)年には退役が決まりかけましたが、機首の30mm機関砲や翼下のハードポイントに多種多様な対地兵器を積めるその攻撃力と、生存性の高い設計はほかに代わるものがないということで、結局、退役は無期限延期になりました。

 一応、エンブラエルA-29などの代替機案や、F-16やF-35に対地任務を任せる案などが現在でもアメリカ軍にはありますが、現状は2030年代までA-10を使う予定のようです。

 ここに挙げた5機種のほかにも、MiG-21やミラージュIIIなどが長持ちの機体としては有名でしょうか。1機の生産コストが高い関係なのか、航空機はわりと長く使われる機体が多い気がしますね。

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