渋谷駅ハチ公前広場にたたずむ元東急旧5000系「青ガエル」。この車両は大館市への移設が新型コロナウイルスの影響で延期されていましたが、「大館」行きの表示が現れました。

「忠犬ハチ公」を通じ交流のある渋谷区と大館市

 東京の渋谷駅ハチ公前広場に置かれ、観光案内所として使われている「青ガエル」こと元東急の5001号車(デハ5001)。この車体に、「大館」という行き先が掲示されています。

 この「青ガエル」は渋谷区が所有し、渋谷区観光協会が観光案内所として運営しています。本来ならば2020年5月から6月にかけて、秋田県大館市の観光交流施設「秋田犬の里」に移設される予定でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、作業は延期されています。この「青ガエル」はなぜ渋谷駅前にあり、また、今回遠く離れた大館の地へ移設されることになったのでしょうか。

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渋谷駅ハチ公前広場の観光案内所「青ガエル」(2020年7月15日、乗りものニュース編集部撮影)。

 渋谷区と大館市は、「忠犬ハチ公」による縁があります。

 秋田県大館市生まれの秋田犬「ハチ」は1924(大正13)年1月、東京帝国大学(現・東京大学)農学部の上野英三郎博士のもとで飼われ始めます。上野博士は渋谷に住んでおり、ハチは通勤する博士を渋谷駅まで見送ったり、出迎えたりしました。博士の死後も駅前で主人の帰りを待ち続けたといいます。

 その後、この「忠犬ハチ公」のエピソードが知られるようになり、渋谷区と大館市にも交流が生まれ防災協定の締結などが実現。

2020年2月には両市区の親交の象徴として、「青ガエル」を大館市に移設し、同地での活用を目指すことが発表されました。

熊本電鉄で動態保存されている「青ガエル」

 東急の旧5000系電車は1954(昭和29)年にデビュー。丸みを帯びた下ぶくれの前面形状、緑色の塗装から「青ガエル」とも呼ばれ親しまれました。東急線からは1986(昭和61)年に引退しています。

 このうちトップナンバーである5001号車は上田交通に譲渡され、廃車後は東急で保存されていましたが、2006(平成18)年、東急の本社がある渋谷区に譲渡。そして台車などが取り払われて車体だけの姿になりましたが、渋谷駅の象徴的なモニュメントとして生まれ変わりました。

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熊本電鉄に譲渡された5000形「青ガエル」。2016年2月に営業運転を終了した(2017年5月、恵 知仁撮影)。

「青ガエル」は大館市に移設後、「忠犬ハチ公」を中心に渋谷と大館の歴史展示のある休憩場所として活用されます。渋谷駅前の跡地には、「新たな観光案内機能を誘導するべく」(渋谷区観光協会)関係機関と連携して計画策定が進められます。

 ところで、「青ガエル」の5000系は現在、熊本県でも見られます。東急線から引退後、一部の車両が熊本電鉄に譲渡され、2016年まで「熊本電鉄5000形電車」として使われていました。

2020年現在は北熊本車庫で動態保存されており、イベント時などに限って走る姿を見られます。

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