クルマに静電気が帯電するのと同様に、ヘリコプターなどの航空機も大量の静電気を帯びることがあります。どうして静電気を蓄えるのか、どうやって無害化しているのか紐解きます。

自ら静電気を発生させてしまうヘリコプターの構造

 毎年のように発生する豪雨災害ですが、万が一、避難が遅れてしまった場合、自衛隊や消防などのヘリコプターによる救助活動によって助けられることになるかもしれません。

 ヘリコプターによる救助には大きく分けて2種類あります。ひとつは着陸して機内へと誘導される方法。もうひとつが「ホイスト」と呼ばれるワイヤー装置によって吊り上げられて収容される方法です。

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海上自衛隊では救難機としてUH-60Jを保有しているが、哨戒機であるSH-60J/Kでも救助を行う(武若雅哉撮影)。

 避難先で救助のヘリコプターが来ると「助かる」という気持ちから安心してしまうかもしれませんが、実は隠れている危険も一緒に近づいて来ているのです。その危険とは「静電気」です。

 ヘリコプターなどの航空機には、完全ではないものの静電気を放出する仕組みが整っています。また我々、一般人が救助される際には、救助員が地上や建物に接地することによって機体の静電気が放電されるため、救助員に触れても問題ありません。

 そもそも、ヘリコプターや旅客機などは、なぜ大量の静電気をため込む性質があるのでしょう。それはおもに、給油時や飛行中に燃料がホース内を流れることによって、その摩擦から大量の静電気が発生するからです。

 機体の大きさにもよりますが、中型のヘリコプターでは200リットルほど、大型のヘリコプターともなれば4000リットル近い燃料を搭載することができます。

これだけ燃料が多いと、給油時に発生する燃料の流動にともなう静電気の発生量も必然的に多くなります。そのため、燃料搭載量の多い機体ほど、より多くの静電気を帯電させるといえるでしょう。

 ほかにも回転するエンジンブレードやローターが発生させる静電気もあります。こうした静電気と航空機の関係は切っても切れないもので、航空機が発達する歴史とともに静電気をうまく放電する仕組みもできてきました。

 しかし、常に回転する部位がある以上、ヘリコプターは機体に帯電する静電気を完全に除去できるわけではありません。

静電気帯びたまま降りてくるヘリ救助員が問題ないワケ

 救助のために降下する隊員は、ホイストワイヤーの先端に取り付けてあるフックと身体ハーネスを固定して地上へと降りてきます。しかし、救助されたい一心で隊員に触れたり、垂れ下がるフックやワイヤーに触れたりすると、前述の静電気によって感電してしまう恐れがあるのです。

いざ救助される際は要注意! 実は危険なヘリの「静電気」 なぜ帯電? どう対処?

海上自衛隊の哨戒ヘリコプターSH-60の尾翼に取り付けられた「放電索」(ヒゲのように伸びた部品)により、飛行中の静電気を放電する(武若雅哉撮影)。

 ただし災害派遣の救助中に、このフックによる感電事故は発生していません。なぜなら、救助員を吊り下げない状態でフックだけを降ろすことはほとんどないからです。また降下する隊員が着地すると、接地したところから放電されるため、しばらくは感電する恐れがなくなります。そのため、地上に降りた隊員が一時的にフックを外して活動し、再びフックを装着する時には、接地させずにフックをつかみ取っても問題ありません。

 しかし、これは訓練された隊員のみが行えることで、一般人はフックやワイヤーに安易に触れることはせず、救助員の指示に素直に従うのが一番安全といえるでしょう。

 ちなみに日頃、身近で感じる静電気のひとつに、乾燥した季節、クルマへ乗る際に指先で走る静電気があるでしょう。

 クルマの静電気は、給油や走行などによって発生しますが、タイヤに組み込まれた導電スリットによって放電され続けるため、クルマの帯電量はほとんどないといいます。そのため、乾燥した時期に「パチッ」と感じる嫌な静電気はクルマが原因ではなく、人体に帯電している静電気が原因といわれています。

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