陸上自衛隊の現用戦車3種のなかでも、いちばん古い74式戦車しか装備していない部品があります。車体後部にある巨大メガネレンチのような装備品、いったい何のためにあり、どのように使うのでしょう。

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 陸上自衛隊の戦車を間近で見てみると、実に様々な装具を車体の各所に取り付けていることがわかります。武器以外にも、整備工具や灯火類、収納ボックスのようなものまでありますが、なかには一見するといったい何に使うものなのかわからないものも。

 たとえば、74式戦車の車体後部には手錠のような部品がぶら下がっています。しかもコレ、調べてみると74式戦車よりも新しい90式戦車や10式戦車にはないものです。

戦車の後ろについている手錠みたいなのってナニ? 車種によって...の画像はこちら >>

74式戦車の車体後部にある砲身固定具(乗りものニュース編集部撮影)。

 自衛隊に詳しい人物に聞いてみたところ、これは「砲身固定具」というものだといいます。

 砲身固定具は、その名のとおり戦車砲の砲身を固定するための治具(機械の位置合わせのためのガイド)で、戦車を輸送するときなどに、砲身が上下に揺れないよう、これでロックするそうです。

 砲身自体、重さがあるため、振動がひどいと砲身の支持軸、専門用語で「砲耳(ほうじ)」というもののベアリングが破損してしまう可能性を含んでいるそうです。

砲身がより長く重い自走砲のものは固定具も巨大

 同様のものは戦後初の国産戦車である61式戦車や、自衛隊が発足当初にアメリカから供与されたM4「シャーマン」戦車にもあったとのこと。ただし設置場所は、61式戦車が74式戦車と同じく車体後部なのに対し、M4「シャーマン」戦車は車体前部のため、前2車が砲塔を回して砲身が後ろに向いた状態でロックするのに対し、後者は砲塔を回さずに砲身は前向きのままロックします。

 しかし90式戦車や10式戦車では砲身固定具を装備しなくなったため、74式戦車の退役とともに自衛隊の戦車から姿を消す装備のひとつになるようです。

戦車の後ろについている手錠みたいなのってナニ? 車種によっては前に付くことも

M4「シャーマン」戦車の砲身固定具は車体前部にある(乗りものニュース編集部撮影)。

 なお国産自走砲である99式自走155mmりゅう弾砲なども砲身固定具を装備しています。しかし、同車の砲身は戦車砲よりも長く大口径で重いため、しっかり固定できるよう、装備する砲身固定具はかなり大型で頑丈なものです。

 また砲身固定具そのものも重い大型部品であるため、作動は機械式で、砲への着脱は車内操作で行えるようになっています。

※一部修正しました(9月9日19時40分)。

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