2025年度までに全180駅でホームドア設置を目指す東京メトロには、駅の環境に応じた様々なタイプのホームドアがあります。多くの私鉄などと直通運転するため自社以外の車両に対応しているほか、利用者の立場で進化したものもあります。
東京メトロは2025年度までに、全180駅にホームドアを設置する計画を掲げています。2020年8月末時点で設置済みは約8割の143駅です。運営する9路線のうち、すでに丸ノ内線や有楽町線、南北線など6路線は全駅に設置されています。
ホームドアはその設置目的から、高さ1.4mほどのドアが横にスライドするタイプが一般的です。しかしながら、多くの私鉄などと直通運転する東京メトロは、各路線に自社車両のほか様々な鉄道会社の車両が走ります。ホームドアも必然的に、ドア位置を合わせるなどそれら全ての車両に対応したものでなければなりません。東京メトロにはどのようなタイプのホームドアがあるのか、いくつかの路線を例に見ていきます。
東京メトロ丸ノ内線に設置されているホームドア(画像:Photock)。
東京メトロに初めてホームドアが設置されたのは南北線です。1991(平成3)年のことで、これは日本の地下鉄で最初でした。当時、駒込~赤羽岩淵間が先行開業し、あわせて整備されました。
南北線のホームドアは目黒駅(東京都品川区)を除き、ホームの床面から天井までを覆うタイプです。
ただしこのホームドアは2020年8月現在、東京メトロでは同線にしかありません。開業にあたり新しい試みのもと設置され、ATO(自動列車運転装置)を用いたワンマン運転などとともに導入されました。柱が多いといったドアの性質上、運転士の視界が制限されたり、設置工事費が高額になったりするといった点で、普及しているとは言えない状況です。
直通列車対応のほか利用者の立場で進化したホームドアも2004(平成16)年、丸ノ内線の中野坂上~方南町間に、東京メトロで2路線目となるホームドアが設置されました。その後、同線のほかの駅でも順次設置が進みますが、タイプは冒頭で述べた一般的なものです。

東京メトロ東西線に設置されている、大開口タイプのホームドア。可動部が二重になっている(画像:東京メトロ)。
2008(平成20)年に開業した副都心線は、西武線や東武線、また将来的に東急線とも直通運転を行うことを見越して、開口部が広いホームドアが設置されました。他社車両が乗り入れることによるドア位置の違いを克服するためです。
その後2016年に銀座線、2020年に日比谷線に設置されたホームドアは、可動部に合わせガラスを採用した透過タイプです。これにより軽量化が図られたほか、足元の視認性が向上しました。
通勤時間帯の混雑が特に激しい東西線は、緩和策として乗降口がほかの車両より50cm広いワイドドア車両を導入しています。同線のホームドアもこれに対応しており、二重に可動部がある大開口タイプが設置されています。
以上のように東京メトロには、例に挙げた6路線だけでも4種類のホームドアが設置されています。実際には非常脱出扉の開き方など細かい点で違いがありますが、今後も設置駅の環境に応じた様々なホームドアが整備されるでしょう。