飛行機の足回りは、水上機などの特殊機を除くとほぼ車輪方式で統一が図られているのに対し、ヘリコプターには車輪方式とスキッド(ソリ)方式の2種類あります。なぜ車輪に一本化されないのか、両者の長所と短所を比べてみます。

同じ飛行場で使用するヘリコプターでも着陸装置が違う

 空を飛ぶヘリコプターを下から見上げると、機体のキャビン部分に「着陸装置」、いわゆる脚がぶら下がっているのが見えます。旅客機では一般的に車輪式ですが、ヘリコプターの場合、車輪以外にスキッドとよばれる橇(そり)状のものである場合もあります。

 飛行場など同じ環境下で運用する場合でも、ヘリコプターでは機種により着陸装置がわかれます。ヘリコプターは飛行機のように離着陸時に滑走する必要がない、すなわち垂直離着陸できるからこそ、車輪でなくスキッドでも着陸装置になるのですが、ではスキッド方式と車輪方式、双方のメリット、デメリットはどうなのでしょう。

ヘリコプターのアシはどう決まる? 車輪とソリの2種類 その使...の画像はこちら >>

陸上自衛隊の多用途ヘリコプター2種。写真左はスキッド方式のUH-1J、右は車輪方式のUH-60JA(2019年6月、柘植優介撮影)。

 まずスキッド方式のメリットは構造が簡単、軽量でコストが良い、整備がしやすい、空気抵抗が比較的少ない、軟弱な地面でも着陸しやすいなどが挙げられます。

 一方、スキッド方式のデメリットは、そのままでは地上の移動がしにくく、スキッドに専用のタイヤを付けなくてはならない、そのため車輪方式のように飛行場の誘導路を自走することはできず、どんな短距離でも飛んでいく必要があります。ゆえに大型大重量のヘリでスキッド方式にすると移動しにくく、専用タイヤを付けるのもひと苦労というのがあります。

ヘリコプターにおける着陸装置の意味とは?

 車輪方式は、そのなかでも脚の配置や数により種類が分かれます。多用されているのは3脚(3輪)式および4脚(4輪)式ですが、3脚式なら前に1脚・後ろに2脚の「前輪式」と、前に2脚・後ろに1脚ある「後輪式」の2種類があり、4脚式と合わせて計3種類になります。さらに車輪式の場合は、固定式だけでなく格納式もあります。

ヘリコプターのアシはどう決まる? 車輪とソリの2種類 その使い分け

トーイングカーで牽引されるSH-60K哨戒ヘリコプター。車輪方式の場合は、そのまま動かすことが可能(画像:海上自衛隊)。

 車輪式のメリットとしては、地上での移動が容易、スキッド方式と比べて衝撃吸収能力に優れるため生存性が高い、凹凸のある場所でもショックアブソーバーにより着陸しやすい、機体を水平にする装置を装着可能などが挙げられます。

 一方、デメリットとしては、タイヤだけでなく、ブレーキやショックアブソーバーなど付随する装置が必要になるため構造が複雑になり重くなる、コストが高い、接地面が小さいので軟弱な地面に着地すると埋まってしまう可能性がある、空気抵抗が大きいなどです。なお最後の空気抵抗が大きくなるという対策から、車輪方式は引き込み式が多用されるのです。

ヘリの着陸装置に与えられた緩衝装置としての意味とは

 ヘリの場合、要はコストや機体サイズの観点から、開発時にスキッド方式と車輪方式のどちらの方が向いているかで判断しているといえるでしょう。

 実際、自衛隊や警察・消防などのヘリコプターでも、スキッド方式は小型から中型ヘリのみで、大型ヘリやスピード重視の新型ヘリは車輪方式が多いです。

ヘリコプターのアシはどう決まる? 車輪とソリの2種類 その使い分け

東京消防庁のEC225ヘリコプター。車輪方式のため、滑走路まで自走が可能(2019年9月、柘植優介撮影)。

 またヘリコプターの着陸装置には、飛行機と異なり、ヘリコプター特有の問題である「地上共振」を抑える役割が一部与えられています。地上共振とは、着陸状態のときに、ローターの回転によって激しく揺れを起こす現象で、これがひどくなると最悪の場合、機体の破壊につながります。それを防ぐために着陸装置には振動を防ぐダンパーが取り付けられている場合があります。

 これがスキッド方式の場合は必要なくなることがあります。スキッド方式は簡単な構造で地上共振を抑えることができるため、とくに小型ヘリでは多用されているといえるのかもしれません。

 ちなみに、ヘリコプターの着陸装置には、墜落が免れなくなった場合に接地時の衝撃を和らげるため、一定以上の衝撃で着地した瞬間に自ら壊れるようにできています。これにより乗員乗客の生存性を高めているのです。

編集部おすすめ