国内106銀行「中小企業等・地方公共団体向け貸出金残高」調査


 中小企業向け貸出が大幅に伸び、過去最高を記録した。国内106銀行の2024年3月期の総貸出金残高は、3月期では集計を開始した2010年以降で最高の551兆6,874億円(前年比4.0%増)だった。
 このうち、中小企業等向け貸出は374兆1,134億円(同4.0%増)で、過去最高を記録した。

ただ、地方公共団体(以下、地公体)向け貸出は39兆1,401億円(同0.6%減)にとどまった。前年を下回るのは、2010年以降で初めて。企業の資金需要が活発になるなか、過剰債務を抱えた企業は多く、金融機関は企業支援への取り組みと事業性評価の見極め能力が問われている。

 銀行貸出は、大手行が前年比5.0%増、地方銀行が同3.3%増、第二地銀が同2.5%増と全業態で増えた。ただ、中小企業向け貸出は総貸出金残高の67.81%にとどまり、3月期では2010年以降で最低水準だった。また、地公体向けは7.09%(前年7.43%)で、2年ぶりに前年を下回った。地公体向け貸出は貸倒リスクが低い一方、低金利で経費負担も大きく、収益確保のために貸出を敬遠する銀行もあるようだ。

 負債1,000万円以上の企業倒産は、2024年8月に29カ月ぶりに前年同月を下回ったが、2024年の年間倒産は2013年以来、11年ぶりに1万件台に乗せる可能性がある。4月にゼロゼロ融資の返済が最後のピークを迎えたが、円安や物価高、人件費上昇、金融機関の貸出金利引き上げなど、企業の資金負担は増大している。また、過剰債務を抱えて新たな資金調達が難しい企業も多く、企業の経営再建・事業再生、廃業支援に銀行の存在価値を示す時期を迎えている。

※本調査は、国内銀行106行の2024年3月期決算の「地方公共団体向け」と「中小企業等向け」の貸出金残高を前年と比較、分析した(りそな銀行、沖縄銀行は信託勘定を含む)。「中小企業等」には、個人向け貸出を含む。

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中小企業等向け貸出 佐賀共栄銀行が貸出比率95.43%でトップ

 総貸出に占める中小企業等向け貸出比率は、佐賀共栄銀行が95.43%(前年94.41%)でトップだった。調査を開始した2010年以降、初めてトップになった。以下、神奈川銀行95.11%(同94.41%)、スルガ銀行93.98%(同94.71%)、南日本銀行93.68%(同93.76%)、静岡中央銀行92.18%(同94.03%)と第二地銀が多い。最低は東邦銀行の49.89%(同49.38%)で唯一、50%を下回った。
 中小企業向け貸出比率の上昇は、大手行7行では2行にとどまった。一方、地方銀行は62行のうち37行(構成比59.6%)、第二地銀が37行のうち22行(同59.4%)と半数を超えた。
 上場企業、大手企業への貸出が主体の大手行と、中小企業がメインの地方銀行・第二地銀で貸出比率に差が生じている。
 コロナ禍からの業績回復が遅れ、過剰債務の解消も後回しの中小企業は多い。経営の問題点を把握と対応について、金融機関と企業のコミュニケーションがより重要になっている。

2024年3月期「中小企業等向け貸出」 過去最高の374兆円、貸出比率 佐賀共栄銀行が95.43%でトップ
2024年3月期 中小企業等向け貸出金残高調査

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