初心者に向けてカヤックフィッシングの基本を紹介。今回は、購入に際しての基本知識と選び方、さらには、重要な運搬方法について解説しよう。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース関東版 APC・鵜殿順一)
カヤックの概要
これがなければ話にならない。カヤックとはカヌー(パドルをこいで進む小舟)の一種。カヌーとカヤックはあるが、両者の境界はハッキリしていない。近年では以下の点で区別されている。
カヌー
シングルパドル(こぐ面が1つだけ)で進むもの。甲板がなく、手こぎボートのように側面だけで構成されている。
カヤック
ダブルパドル(両方にこぐ面が付いている)で進むもので、甲板がある。
手こぎボートとは違い、どちらも前方を見ながら進む。釣りで使うのは「シット・オン・カヤック」という甲板の上に座って乗るタイプで、中空構造になっているのが特徴。
長距離ツアーで使われるツーリングカヤックや、激流下り用のスラロームカヤックでも釣りはできるが、専用に作られているシット・オン・カヤックにはロッドホルダーやドリンクホルダー、ハッチ、荷物を積めるスペースなどが座った状態から手が届くように設計されている。そのためカヤックフィッシング専用モデルを選択するほうがいいだろう。
ここ数年、多くの種類が販売されているので、自分のスタイルや好みの色、予算に合わせて探しだすことができる。
カヤックの素材
FRP、ポリエチレン、ABS樹脂など様々。多いのはFRPとポリエチレン。
FRP
プレジャーボートなどと同じで、ガラス繊維などを樹脂で固めたもの。硬いので落としたり岩にぶつかったりすると穴があいたり割れたりすることはあるが、比較的容易に補修できる。
ポリエチレン
素材自体に弾力はあるが、高温に弱い性質。ある程度なら落としても割れたりすることはなく、岩場や砂浜で擦って傷になってもドライヤーで熱を加えると傷直しができる。しかし、穴が開いたり割れたりすると接着できないので溶接するしかない。それなりの道具と経験がある人にやってもらう必要がある。
基本のパッケージ
カヤック本体、ダブルパドル、シートが基本パッケージされているので新規購入する場合はこれを選択するといい。
念のため、購入前にどこまでが含まれているのか確認しておくことを勧める。中古購入時も同じだ。個別に買うと案外と高くなる場合も。
最近のフィッシングカヤックは、シートを本体に直接置くタイプからパイプ椅子形状に変化している。これは波や飛沫がカヤック甲板に入って、その水でお尻が冷えないようにするため。
濡れた状態でずっと座っていると夏でも結構冷えるのだ。
カヤックの動力
パドル以外の移動手段として注目度が上がっている。値段は高くなるが釣りでは圧倒的に有利だ。
この種のカヤックにはラダー(舵)が付くので、想定外の大物が掛かったときや風・潮流にカヤックを立てながらポイント上に止まって釣るとき、不意に大波が来た際も魚とやり取りをしながら移動が可能。さらに天候が急変したときも腕の3倍近い筋肉量の脚でこぎ続けられる安心感がある。

このタイプにもパドルは必携で、パドルと足こぎユニットの2種を移動手段に持つ。ほか、セイル(帆)を取りつけられるタイプがあり、3種の移動手段があれば、どれかが沖で壊れても進むことが可能。安心感が増すと同時に楽しみ方が増える。
特に夏場は、朝は無風でも昼前から海風ということは多くなるので、風を背に受けて岸に向かうことができる。体力温存にもなり風を受けてヨット気分を楽しめる。
カヤックの搭載可能重量
重要なのが搭載可能重量。カヤックごとに設定されている搭載重量(キャパシティ)があり、私のカヤックでは12ftが125kgまで、10ftが102kgまで。
自分の体重、釣り具、クーラー(氷・水・釣れた魚の重さも考慮)、飲食物、場合によってはドーリーなどの重量を計算することが必要。
カヤックの保管と運搬
購入前にもう一つ考えなければならないのは、保管と運搬手段。自家用車に積んで移動するというのが基本だが、車がないという場合はインフレータブル(空気で膨らます)カヤックがお勧め。
また、カヤックをマリーナに預けておくという手段がある。
車載の際の注意点
車載の際の注意点について。
道交法の規定
車両の長さ+10%以下の物であれば可。
軽自動車
車体長3.4m以下。車載可能な長さは3.74m以下。よって12.2ft(約3.72m)のカヤックまでならOK。

小型自動車
車体長4.7m以下。5.17m以下で、17ft(約5.18m)はギリギリアウトだ。16ft7inch(約5.05m)ならOK。実際には車種ごとに登録長さが違うので必ず車検証で確認を。私の車は軽のワンボックスなので12ftと10ftのカヤックを使っている。
車載の際に必要な小物
カヤックは専用の道具を使って車に固定する。
ルーフキャリア
車体短辺方向で前後に1本ずつ。これに車体長手方向へのクロスバーを付けるとカヤックを載せやすい。車体の屋根に傷は付きにくくなり、ルーフキャリアがしっかりと固定されるので安心。さらにノンスリップパッドがあると、積んだカヤックが走行中に横滑りしないか心配しなくて済む。
カヤックの車からの下ろし方
車体から下す方法を説明する。まず、ラッシングベルト・ロープを外し、回転させる。

次に滑らせて車体から下す。

カヤック裏に回り込んで持ち上げる。

裏返してひっくり返し、ゆっくり地面に下して完了。

ラッシングベルト
カヤックの固定に便利。前後滑りへの安全対策としては、積んだカヤックからロープを伸ばして車体に固定すれば、なお安心。急ブレーキで前方にズレるという心配がなくなる。

陸上移動補助
駐車場からカヤックを水際まで運ぶためのドーリーがあると、車から降ろしたカヤックに装備品や釣り具・クーラーなどをセットした状態のまま運べるのでとても便利。何度も車と水打ち際を往復しなくて済む。

折りたたみ式、分解式、差し込み式などがある。バルーンタイヤ、ノーパンクタイヤ、普通のタイヤなどいろいろ。水際までカヤックを運んで下ろしたら、その後どうするかを考えて選択するといいだろう。
私は折り畳み式の普通タイヤを使っている。安価で軽量、場合によってはカヤックに積んで沖に出られるというメリットがある。
軟らかい砂浜や小砂利の浜ではタイヤが沈み込むので苦戦し、砂に沈み込み難いバルーンタイヤが欲しくなる。しかし、重くなりスペースが必要になるので選択次第だ。
スパンカーとシーアンカー
釣り船の後方にスパンカーという帆が張られているのを見たことがあるだろう。風を正面からまっすぐ後ろへ受け流し船を風に立てるための物で、カヤックにも工夫次第で付けられる。
私はクーラーに受け筒を取り付けて、そこに刺して左右からのロープでコントロールできるようにしている。足こぎユニットの駆動とスパンカーの効果でしっかり風に立てて止まっていられるので便利。
スパンカーは上手く使えば強い横風・追い風の日などにはセイルのような働きもしてくれる。

<週刊つりニュース関東版 APC・鵜殿順一/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース関東版』2020年5月15日号に掲載された記事を再編集したものになります。