魚釣りではいろいろなジャンルでそれぞれに時合い、つまり魚がよく釣れる時間帯がある。今回は初夏から夏場に身近な波止で狙えるターゲットで時合いとなる要因を紹介してみたい。

(アイキャッチ画像撮影:TSURINWES関西編集部・松村計吾)

魚がよく釣れる『時合い(じあい)』の代表例4選 理解すれば釣...の画像はこちら >>

『時合い』とは

まず、魚にはその魚種やエリア、釣法によってよく釣れる時間とそうでない時間が存在する。釣れる時間帯のことを時合いというのだが、これは魚の補食スイッチが入った時間帯のことを指す。

たとえば、急な水温低下や雨による濁りなど、魚の活性が下がる状況に陥ったとしても、どこかで食物を食べなければ生命活動を維持することができなくなる。よって、悪条件と呼ばれる中でも、その食い気に高低はあるものの、エサを食う時間帯があるはずだ。それをしっかりと見極めることができれば、効率よく釣果を上げることにつながる。

時合いの要因

魚の補食スイッチが入る要因、つまり、時合いが訪れる原因は魚によっても、海の状況によっても大きくかわってくる。また、夜行性であったり、昼行性であったりという、魚の習性も関係してくる。夜行性の魚を日中に釣ろうと思えば並大抵のことでは釣れない……といった具合である。

多くはエサに起因

時合いが魚の補食スイッチが入った状態という前提で考えると、その要因の多くは魚が食べているエサに起因する。

極端な例は、ボイル。イワシなどの小魚が回遊してきて、青物の群れと出会うと青物の捕食スイッチが入り、いきなりベイトを襲い始める。逃げ場を失ったベイトの群れが水面へと浮くことで水面で青物がベイトを追い回すことによってボイルが起こる。これも時合いの一つで、追われているベイトとルアーを合わせる、または、そのベイトをエサに使うことで比較的簡単にターゲットを釣り上げることができる。

そこで、時合いがやってくるための要因をいくつか紹介してみたい。自分が狙おうとするターゲットがどの要因で食い気を起こすのかを知っておくと良いはず。

1.時間帯

朝マヅメ、夕マヅメといった言葉の通り、この早朝や夕刻の時間帯が時合いとなる魚は多い。この要因もいくつかに分かれる。

夜行性の魚

たとえば前述のように夜行性の魚であれば、明るくなった朝から夕刻までは住みかに潜んでジッとしていることが多く、ようやく日が傾いて夜行性魚類の行動時間帯に突入する。その際に真っ先に動く目的が食事だろう。なので、夜行性の魚にとっては、ブレックファーストが日暮れの動き始めの時間帯となる。代表的な魚がアナゴやウナギである。

魚がよく釣れる『時合い(じあい)』の代表例4選 理解すれば釣果アップ
日が暮れると活性が上がる魚も(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

昼行性の魚

逆に昼行性の魚の代表としてはベラ、カワハギなどが挙げられるが、これらの魚種は暗いウチはほとんど動かず、明るくなるとようやく動き始める。なので、夜間にはほとんどエサを食べることがなく夜釣りで釣れることは非常に希である。

光量の差に注目

単に明るい、暗いというだけではなく、早朝の光量が低い時間帯から、日が昇り徐々に海底に届く光量が増えてくる時間へと、刻々と変化するのだが、その途中で捕食スイッチが入る魚種もいる。つまり、「自分が活動しやすい光量」があるということだ。

魚がよく釣れる『時合い(じあい)』の代表例4選 理解すれば釣果アップ
日暮れは光量変化がもっとも大きい時(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

スルメイカやケンサキイカなどが光の量には特に敏感とされていて、夜釣りでいわゆる漁り火が明るければ明るいほどイカが寄ってくる訳ではない。釣りをする場合も、明るい光を点けているうちは浮ききらず、少し明かりを暗くする減灯をすると、一気に浮いてくることが多いのもそのためだ。

光量の変化が重要?

また、昼夜を問わず活動をする魚種でも、朝マヅメや夕マヅメなど光と闇の境目を「状況の変化」ととらえてエサを食べるものもいる。夜行性、昼行性という特殊な魚以外の場合はこの変化で捕食スイッチが入ることが多いので、やはり多くの魚で朝マヅメ、夕マヅメは重要な時間帯と覚えておきたい。

2.潮の流れ

釣りをしていて、それまでほとんどアタリもなかったのに、突然釣れ出して、入れ食いになるという経験をした人は数多くいるはず。そんな突然の変化でもっとも明確に分かるのが潮の動きだろう。

基本的に潮の動きは1日に2回やってくる干潮と満潮の潮位差により生まれる。ほかに、黒潮の影響を受けるエリアなどでは、黒潮の動きによっても潮の流れがかわるし、風や気圧配置などでも潮は動く。大阪湾内の波止などで、明確なのが潮の干満による潮の動き、つまり潮流である。

潮が動くと魚が釣れる?

ではなぜ、潮が動くと魚の補食スイッチが入るのだろう。これには多くの説があって、潮が動くとプランクトンなどの遊泳力が乏しく小魚のエサとなるものが、潮によって流れの陰(ヨレ)などに集まり、密集している部分では効率よくエサを食べることができる。

ほかに、潮が動けば生き物全体が動くことになり、動きが出れば食欲も出て、結果としてエサを食べる魚が多くなる……といったことなど。

その理由は諸説あるものの、止まっている状態から動き始める潮をしっかりと認識していれば、魚がよく釣れるであろう時間帯を予想することもできるし、その準備もできる。その参考となるのが潮汐表などである。

3.潮位

潮位は簡単にいえば、水面の高さのことである。一般的に満潮時が潮位が高く、干潮時に低くなるが、大潮や小潮といったいわゆる「潮の大きさ」で、同じ満潮時でも潮位はかわってくる。

また、1年の中でもそれぞれの潮位は大きくかわる。春に潮干狩りをするのは、初夏の産卵を控えてよく肥えたアサリが取れるのと、昼間の干潮時の潮位が非常に低くなる、つまり潮がよく引くからである。ちなみに潮位差が大きいほど水の流れも大きくなり、潮流も速く、強くなる。

潮間帯にはエサが豊富

潮位と魚の食い気に関しては他にも重要なファクターがある。満潮時には水面下、干潮時には干上がる部分を「潮間帯」と呼ぶが、ここにはイガイなどが付着しているのを始め、そのイガイの層にはカニやエビ、ゴカイなどの小さな生き物も多く潜む。

魚がよく釣れる『時合い(じあい)』の代表例4選 理解すれば釣果アップ
潮間帯には生物が多く潜む(撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)

干潮時には食べられないそのような場所のエサも、満潮に向かって潮位が上がってくれば水中へと沈み、それらを食べる魚にとってもエサ場が水中に現れることになるので捕食のスイッチとなる。

4.食物連鎖

自然界における魚のエサは、その魚によって様々だが、それらはほとんどが食物連鎖の中に入っている。底辺には植物プランクトンから動物プランクトン、それらを食べるイワシなどの小魚、そして小魚を食べる中型魚から大型魚といった具合だ。

食物連鎖の利用

なので、必然的に食物連鎖の下層の生き物が多く出てくれば、その上にいる生き物の補食スイッチが入る。極端な例が、前述のイワシに付く青物のボイルである。

イカナゴやシラスなど多くの魚のエサとなる小魚のシーズンなら、潮が流れることで遊泳力の乏しい、それらのエサが潮に流されるのだが、エサの流れが始まるとマダイなどイカナゴやシラスを食べる中型魚、大型魚の活性が上がり時合い到来となる。

問題は、海域にエサとなるイカナゴやシラスなどの小さな魚などがおらず、潮は流れているもののエサが流れていない時。これは「良い潮なのに食わないなあ」という状況であることが多い。

とにかく海の変化をよく見る

ここまでいろいろな時合いがやってくる要因を紹介したが、難しく考えることはないのである。実はこれらの捕食スイッチが入る要因を並べてみると、とにかく「海に変化があったとき」と考えておけば良いだろう。

ただし、その変化を見逃さない観察力が必要ではあるのだが……。

<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>

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