投げ釣りで、チヌやマダイといった大物狙いの特効エサとなるのが「ユムシ」だ。今回はこのユムシについて、狙える魚、使い方、保管方法などを紹介する。

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投げ釣りの虫エサ

投げ釣りで使うエサはいわゆる『虫エサ』と呼ばれるものが多く、これはアオイソメやイシゴカイなどの多毛類である。他にはイワイソメ(関西ではマムシ)、ギボシイソメ(関西ではチロリ)なども多毛類に分類される。

しかし投げ釣りで大物を置きザオで狙う場合、エサ取りが多い時には、これらの虫エサ類は簡単にかすめ取られてしまう。そうするとエサの付いていない仕掛けを海中に放り込んだ状態が続いてしまうことになり、効率が悪い。そこで多用することになるのが、ユムシと呼ばれるエサだ。

ユムシの生態

ユムシ(学名:Urechis unicinctus)は、環形動物門ユムシ動物ユムシ綱ユムシ目ユムシ科の海産無脊椎動物である。干潟などの浅い砂泥の中にもぐって生息しており、生物の死骸や排泄物などをエサとして捕食している。体の両端に海水を吸入、排水する口のようなものが付いており、海水ごと体に取り入れて海水中のエサだけをろ過して体内に取り込み、海水だけを排出している。

釣りのエサとして使う時は、この口からハリを刺して、途中の胴体からハリを出すようにする。体の中にハリが埋もれてしまうと、アタリがあってもハリ掛かりする率が低くなってしまうためだ。

大型狙いの特効エサ『ユムシ』 自宅での保管方法から食味まで
セットの際は必ずハリ先を出す(提供:WEBライター・長谷川靖之)

韓国では食材になることも

ユムシは、韓国では広く食用として流通している。私も10年ほど前に学会で韓国の済州島に出張した時、市内のレストランでユムシが出てきて驚いたことを記憶している。内臓を出して短冊状に切ったものがウニョウニョ動いた状態で出される。醤油をつけて食したところ、歯ごたえは焼肉のホルモンに近いが、旨味は殆どなく触感を楽しむだけのようだ。

なお、ユムシによく似たコウジは、ユムシに比べてやや黄色味がかっており、体の皮もユムシに比べて硬い。

大型狙いのエサ

ユムシは釣りエサ店で購入すると1匹100円~250円と高価だが、エサ取りに強いことが最大の魅力である。一晩サオ4本で夜釣りをする場合、20個程度あれば十分である。またサイズの大きな個体は、ハサミでナナメにカットすることで使用する数を抑えることもできる。

釣れる魚種は、マダイ、クロダイ、スズキ、コロダイ、ニベなどで、シロギス釣りにはあまり向かないが、小粒のユムシに30cm近い大ギスがヒットすることもある。

また近年淡路島や神明間の秋のカレイ釣りではエサ取りが多く、マムシやアオイソメだけではエサが瞬殺されるような場面が多いので、ユムシを使用する人が増えている。ユムシに釣れるカレイは大型で、鳥羽の夜釣りでユムシに釣れるアイナメも大型であることが多い。

大型狙いの特効エサ『ユムシ』 自宅での保管方法から食味まで
ユムシにヒットしたマダイ(提供:WEBライター・長谷川靖之)

ユムシの保管方法

ユムシのもう一つの利点は、家庭の冷蔵庫内で比較的保存(飼育)がしやすいことだ。投げ釣りでもエサを買う量はいつも悩んでしまう。たくさん釣れている時にエサ切れで泣く泣くサオを仕舞うことは避けたいので、どうしてもちょっと多めに買ってしまうのが多くのアングラーではないだろうか?そして期待外れでエサを余らせてしまうこともまた多い。

多毛類の場合、冷蔵庫で次の釣行までの一週間を生き延びさせることは簡単ではないので、納竿時に海に捨ててしまう人もいると思うが、ユムシの場合はタッパに海水を入れて冷蔵庫に保管するだけで、2週間程度は元気な状態を維持することが可能だ。この時に注意するのは以下の4点である。

1.海水は1日1回程度入れかえる。この際できるだけユムシには触れないようにする方がいい。

2.入れかえる海水は、ペットボトルなどに入れて冷蔵庫内で冷やしておき、水かえで温度差が生じないようにする。

3.家族の了解を得ておくこと。ユムシを見て正気でいられる女性は稀だろう(笑)。

4.愛情が芽生えないように、飼育ではなくあくまでも保管と割り切る。毎日水がえの時にウニョウニョ動く姿は、段々かわいく見えてくるものだが、情が移ってしまうと釣りバリを体に通すなんて出来なくなってしまう(笑)。

<長谷川靖之/TSURINEWS・WEBライター>

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