大阪湾には沖堤防、一文字と呼ばれる、渡船を利用して渡る釣り場が多数存在する。今回は、沖堤防での釣りが大好きな著者が「神戸・第8防波堤」を紹介しよう。

(アイキャッチ画像提供:WEBライター・伴野慶幸)

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大阪湾の沖堤防

関西、中でも大阪湾岸は、都市圏にありながら堤防釣りの環境に恵まれている地域。中でも沖堤防、沖防波堤、一文字などと呼ばれる陸地から離れた海上の防波堤は、全国から遠征に訪れる釣り人もいるほどの人気の釣り場だ。渡船と呼ばれる釣り人専門の渡し船でひとたび渡れば、湾内の護岸や航路の安全を守る目的で造られた巨大なコンクリートの塊は、回遊魚から根魚に至るまで、様々な釣魚の宝庫へと姿をかえる。

大阪湾の沖堤防を徹底解剖:神戸第8防波堤 サビキ釣りで中アジ好釣
沖波止の釣り風景(提供:WEBライター・伴野慶幸)

大阪湾岸は大阪府と兵庫県にまたがるが、釣り場となる主な沖堤防は、次のようなエリア分けができる。

・大阪府

北港、南港、堺港(夢洲、関電赤灯、新波止、セル石、宇部)
泉州、泉南(岸和田沖一文字・旧一文字、泉佐野一文字)

・兵庫県

武庫川周辺(武庫川一文字、尼崎フェニックス)
神戸港東(神戸第6、7、8防波堤、ポートアイランド沖一文字、ミニ波止)
神戸港西(和田防波堤、和田防波堤沖新波止、ポートアイランド赤灯波止)
須磨周辺(須磨一文字、須磨沖一文字)
垂水周辺(垂水一文字)

各エリアでは、沖堤防に釣り人を渡す渡船店と、釣魚に応じたエサや用品を販売する釣り具、エサ店が営業しており、その多くはホームページやフェイスブックなどの公式SNSを設けて、釣り場や釣果情報を毎日のように発信している。

神戸・第8防波堤

今回はその中から、神戸港東エリアの沖堤防・第8防波堤の実釣レポートを交えて紹介する。このエリアの沖堤防は略図のようになっており、渡船や釣り人の間での通称「沖の波止」(ポートアイランド沖一文字、ミニ波止)と「内湾の波止」(神戸第6、7、8防波堤)とに分けられる。

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6、7、8防波堤拡大図(作図:WEBライター・伴野慶幸)

沖の波止は文字通り沖の方に在していることから、潮通しが特によく、ブリ、サワラ、シーバス(スズキ)、タチウオなどの回遊魚のメッカとなっている。

ルアーマンに圧倒的人気の波止だが、秋にはノマセ釣りも盛んに行われる。

一方、内湾の波止は、潮通しこそ劣るものの、緩めの海流や、起伏に富む海底や波止の形状が利点となって、チヌ、小アジ、根魚、タコの居付きやすい釣り場として、中高年のベテランからファミリー層に至るまで、幅広い層の釣り人に親しまれている。フカセ釣り、エビ撒き釣り、ヘチ・落とし込み釣り、ズボ釣り、サビキ釣りなどが中心だが、タコジグ・タコエギでのタコ釣り、根魚狙いのメバリングやロックフィッシュジギング、また回遊魚の釣況によってはルアー釣り、ノマセ釣りも行われる。

安全面では、7防と6防の沖向きは海面との高低差が約6mもあり、幅も非常に狭いことから足場が悪く、また7防の内側は満潮時に潮がかぶるといった点が要注意ではあるものの、その他の波止は足場がよく、海面との高低差はさほど気にならない。

渡船店と近辺の主な釣り具・エサ店

神戸港東エリアの渡船店は、3店が常時営業している。営業時間、渡船ダイヤ、乗船場などは時期により変更があるので要注意。釣行前に各店のホームページで確認していただきたい。

松村渡船
神戸渡船
谷一渡船

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松村渡船の乗船場(提供:WEBライター・伴野慶幸)

各渡船店とも、店舗は構えておらず、乗船場で手続きを行う営業形態なので、エサや釣り具など釣りに必要なものは、事前に買って持ち込む必要がある。近辺の主な釣り具・エサ店は次のとおり。ただし、営業時間は渡船ダイヤと必ずしもリンクしていないので要注意。釣行前に各店のホームページで確認していただきたい。

フィッシングマックス(芦屋店、神戸ハーバー店)
ポイント摩耶海岸通り店

なお、渡船利用時には、救命胴衣の装着が義務付けられているほか、安全面やスムーズな乗降の点で、船長やスタッフの指示には必ず従ってほしい。また時節柄、新型コロナウイルス感染防止対策として、マスクの着用や釣り人同士のいわゆる三密行為の抑制を強く要請されていることにも理解が必要だ。

必要アイテム

タモ網の柄の長さは、4m台だと物足りない。海面との高低差が特に大きい7防と6防の沖向き狙いなら6m以上がほしい。8防も干潮時の対応として6mがベストだ。その他の波止は5mでいい。

その他の必要アイテムとしては、回遊魚をはじめ釣魚の鮮度保持のため、しめて血抜き・内臓処理に用いる釣り用ナイフが挙げられる。そして、魚をしめる際やサビキ釣りをする際は、手元や波止の表面が汚れるので、衛生面やエチケットの点からも、海水を汲むビニールバケツも持参してほしい。

また、最近の渡船ダイヤは深夜未明の時間帯を中心に設定されていることから、ヘッドライトや手元ライトなどの照明器具も必要となる。

ただし、ロックフィッシュゲームなど海面を照らすのを嫌う釣り人にも配慮して、照明器具は必要な個所をピンポイントで照らせるものをお勧めしたい。夜間に主要手回り品の置き場所を示す目印なら、ケミホタルなどの発光体の大型のものを使うのも一策だ。

最後に忘れてはならないのが、熱中症や脱水症状対策。アルコール類や甘味の強い飲料は避けて、薄めのスポーツドリンクやお茶系の飲料を十分に持参して、こまめな水分補給を心がけてほしい。暑さが特に苦手な人は、夏場は氷や瞬間冷却パックなどを持参するのもいいだろう。

実釣レポート

梅雨の晴れ間となった7月5日、神戸港東エリアの中から選んだ釣行先は第8防波堤。朝のうちはサビキで中アジを狙ってお土産を確保し、食い止んだら落とし込み釣りでのチヌ狙いに挑戦する二本立ての作戦を立てた。

利用したのは松村渡船。前日23時半ごろに乗船場に到着した時には、正に目の前で始発便が1時間半の前倒しで出船していた。前日の大雨も何のその、ルアーマンとタコ釣りの人たちが多く訪れていた。

現場指揮に操船に受付にと忙しい中でも、合間を見つけて的確な情報をくれる松村船長に寄せられる釣り客からの信頼は厚い。中アジ狙いの私には「8防北側から水道(8防と6防との間の航路)を狙ってみたら確率は高いのではないか」とアドバイスしてくれた。そうこうしている間に1時となり、私を含めて40人弱の釣り客を乗せて結果的に第2便となった船は出発した。

釣り場とタックル

今回釣行した神戸第8防波堤は、ポートアイランドの東側に位置する南北400mほどの防波堤。神戸港港湾計画による航路拡張のため、数年以内の完全撤去が決定しており、波止の南端の先には立ち入り禁止の柵が設置されているが、残存している部分でも十分な広さが感じられる。足場がよく、海面からの高さも4m余りと安全で、回遊魚、根魚、ヘチ・落とし込み釣りでのチヌと釣り物が豊富な好釣り場として、今なお多くの釣り人に親しまれている。

大阪湾の沖堤防を徹底解剖:神戸第8防波堤 サビキ釣りで中アジ好釣
釣り場風景(提供:WEBライター・伴野慶幸)

中アジ狙いのサビキ釣りは、サオ下狙いとウキサビキの2種類のタックルで挑んだ。サオ下狙いのほうは、磯ザオ5号5.4mに、ミチイト4号を巻いた両軸リールをセット。ウキサビキのタックルは、軟らかい投げ釣り用のサオにスピニングリール、ミチイト6号に遠投サビキ用の20号遊動ウキをセットしたものだ。

2種類のタックルに共通するのは、まきエサカゴはサビキの上下それぞれに付けるダブル方式で、上カゴとサビキの間にクッションゴムを介した点。上下からまきエサをサビキの周りにまとわせて連掛けを狙い、巻き上げの際にはテンションを極力少なくしてバラシを避けるという工夫を施している。

サビキは6号バリにハリス1.5号のサバ皮サビキをクッションゴムの下にセットするとともに、下カゴのテンビンの先にはハリス2.5号に煌き加工を施したホログラムバリの2本バリ仕掛けを接続した。さらに、良型のアジやサバも拾えればと、マイクロベイトに似せた最小サイズのワームをサビキバリ2か所とホログラムバリ1か所に刺し、アクセントとした。

大阪湾の沖堤防を徹底解剖:神戸第8防波堤 サビキ釣りで中アジ好釣
使用した仕掛け類(提供:WEBライター・伴野慶幸)

5時半ごろに1匹目の中アジがお目見え

船内のうち8防目当ての釣り人は10人近くいて、先客も合わせると最終的に8防の釣り人は30人余りにのぼったが、幸いにも私は船長からのアドバイスがあった波止の北端に釣り座を構えることができた。タックルの準備ができた後は、隣の釣り人とマスク越しにしばし言葉を交わしてから、しばしゴロ寝して夜明けを待った。

4時ごろからようやく本気を出してサビキ釣りをスタート。8防と6防との間の通称「水路」に、サオ下狙いのサオと、投点20m弱の近投でのウキサビキザオの2本を出して、アジの反応を待つ。周りを見ると、東向きにサオを出している釣り人が多い。すると周りでいくつもの声かあがった。しかしそれは残念ながら、あまり歓迎されない小サバの釣果だった。

5時半ごろにようやく、近くの人が先陣を切って中アジを釣り上げた。それに続いて、私のウキサビキのザオでもウキがズボっと沈んだ。魚の確かな手応えを感じながら慎重にリールを巻き上げると、カゴテンビンの先のホログラムバリに中アジが掛かっていた。慎重に抜き上げて1匹目の獲物を手にすることができた。去年の冬場に波止を賑わせたデカアジとまではいかないものの、20cmはゆうに超えている中アジには頬が緩む。大切な獲物はスカリに入れて活かしておくことにした。

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中アジをゲット(提供:WEBライター・伴野慶幸)

小サバの猛攻をかわしての中アジ拾い

引き続き追釣を狙うが、一方では海面がバシャバシャ波立つほど上層にわく小サバの群れには多くの釣り人が悩まされていた。中アジのタナは底だが、多くの人は一般的な軽量のプラスティック製のアミカゴを使っていたので、底のタナに辿り着く前に、上層の小サバにつかまってしまったようだ。その点、私の上下ダブルカゴ方式は、アミエビを詰めた下カゴがかなり重くなるので、小サバを比較的かわして底までサビキを沈めることができる。

中アジの群れは散発で、その利点はなかなか効果を発揮できなかったが、サオ下狙い、ウキサビキの2本のサオには、はっきりとした優劣はなく、群れが回ってくればどちらかのサオで辛うじて1匹は拾えるという展開になった。

周りで一番釣果を重ねていたのは、近くで東向きにサオを出していた人。「サビキは太めがええな」と話したように、その人はハリス4号の大アジ対応の太仕掛けのサビキを用い、テンビンカゴの先にも2本バリ仕掛けを接続していた。小サバの猛攻にボヤく一幕もあったが、粘り強くこまめに打ち返しながら、アジの群れが回ってくるルートを上手くとらえていたようで、中アジの二桁釣果を手にしていた。たかがサビキと言うなかれ、釣る人は何かが違うと改めて実感した。

カタクチイワシの群れが到来

依然として中アジの群れは散発だったが、6時半ごろから小サバの他にも、新たな難敵(?)が到来した。カタクチイワシの群れだ。上層の小サバはある程度回避できていた私だったが、底のタナで掛かってサオ先を震わせるカタクチイワシは避けようがない。

最初こそ釣れてもリリースしていたが、あまりにも掛かってくるので、唐揚げや煮付けにすると小サバよりもおいしく食べられる魚だと、頭を切りかえて海水バケツにキープすることにした。サビキ釣りは7時半ごろに終了。最終的には中アジ5匹、カタクチイワシ約20匹の釣果となった。

大阪湾の沖堤防を徹底解剖:神戸第8防波堤 サビキ釣りで中アジ好釣
カタクチイワシが連発(提供:WEBライター・伴野慶幸)

落とし込み釣りは不発

サビキ釣りの終了後は、チヌ狙いの落とし込み釣りに切りかえた。2時間余り、波止際の壁面を探り歩いたが、引き込みアタリを逃してエサのイガイを割られ、貴重なワンチャンスを逸してしまったのが運の尽き。チヌの釣果を上げることはできず、またのリベンジ釣行を誓って11時に納竿し、迎えの便に乗り込んだ。

乗船場に付くと、釣果に恵まれた釣り人たちが残って船長に報告。全体的にはルアーはダメだったが、中アジとタコは2ケタ釣果の人もいて、ポイントや釣り方で明暗が分かれたようだった。

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当日の釣果(提供:WEBライター・伴野慶幸)

帰宅後、夕食の食卓には、中アジの塩焼きとカタクチイワシの生姜煮がお惣菜として彩を添え、家族揃っておいしくいただいた。

<伴野慶幸/TSURINEWS・WEBライター>

▼この釣り場について
松村渡船